更新日: 2019.06.18 NISA
つみたてNISAの盛り上がりがイマイチな理由
つみたてNISAがスタートして、1年1ヶ月が経ちましたが、盛り上がりにイマイチ、欠けるような気がするのは筆者だけでしょうか?
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
目次
3種類あるNISAの現状
金融庁のサイトを見ると、NISAの利用の状況について、3ヶ月ごとに発表されています。最新の情報は昨年の9月末です。
NISA・つみたてNISA・(未成年者対象)ジュニアNISAの3つを併せて、口座数は1256万4710口座です。この口座というのは、「1人一口座」原則ですから、口座数を、そのまま利用者数と考えても差し支えないでしょう。
日本の総人口は2018年9月1日時点で、1億2641万7000人ですから、ざっくり1割弱の方が、何らかのNISAを利用していることになりますね。
読者の皆さまや、身近な方の中には、「NISAを利用している」という方がいらっしゃるのではないでしょうか?
ところが、つみたてNISAに絞ってみると、その口座数は87万5658口座です。
先述の「3つのNISAを併せた」口座数の約7%に過ぎませんし、同じく、総人口との比較では0.7%です。
ちなみに、NISAの口座数は1113万8558ですから、「3つのNISA」の利用者のほとんどがNISAに集中していることが分かります。
制度も歴史も、全く異なりますから、単純な比較はできませんが、ご参考までに「つみたてNISAに割と似ている(?)」と筆者が考えている確定拠出年金の加入者数を見てみましょう。「企業型」で684万6000人、iDeCoと称される「個人型」で103万8772人です(いずれの数値も2018年9月のもの)。
企業型と個人型を問わず、確定拠出型年金は現役世代の方(=厳密には国民年金の被保険者)に限られます。しかし、つみたてNISAは「20歳以上の居住者」なら、だれでも利用することができますので、もっと利用者数が増えても良いと思うのですが…。
いずれにせよ、「つみたてNISAは盛り上がりに欠ける」という、筆者の感覚はあながち間違っていないようですね。
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筆者が考える、つみたてNISAの盛り上がりがイマイチな理由
つみたてNISAの盛り上がりがイマイチな理由は、いろいろあろうかと思います。そもそも制度が難しいとか、非課税の期間が長過ぎる、とか。
また、つみたてNISAの投資可能期間は2018年から2037年の間ですが、最後の年の2037年に積み立てた分の非課税期間は2056年までです。2056年には筆者は84歳になっていますが、読者の皆さまは、おいくつですか?
つみたてNISAには、年齢の上限は無いのですが、非課税の期間をフルに活かすことを考えると、やはり30歳代半ばが限界かと思います。
筆者が考える、つみたてNISAの盛り上がりがイマイチな理由として、最も声を大にしたいのは、販売する銀行や証券会社のモチベーションだと思います。
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筆者が考える、つみたてNISAへのモチベーションが低いのは?
なんせ、販売する担当者がお客さまに対し情熱を込めて、つみたてNISAをプレゼンし、愛情を込めて商品をご案内しても、販売する銀行や証券会社が受け取る「購入時手数料」はゼロです。
成約した喜びはカタチにならないばかりか、販売に要した初期費用の回収もできません。
「低く抑えられているとはいえ、信託報酬がありますよね?」という声が聞こえてきそうです。確かに、信託報酬はございます。
信託報酬は年率で表示されます。年率で表示された信託報酬は日割り計算され、毎日(お客さまが)保有している投資信託から控除されます。
そして、この信託報酬は「販売会社(銀行や証券会社)」や「運用会社(アセット会社)」、
それに「信託銀行」の3者(社)が、2対2対1の割合で分け合います。
そもそも、つみたてNISAは「積立」投資しかできません。つみたてNISAは、お客さまの保有する投資信託が「積立」投資によって積み上がっていくにしたがって、信託報酬も増えていくイメージです。
そして、つみたてNISAは、年間40万円まで投資できますが、毎月の積立が原則なので、毎月の投資額の上限は3万3000円です。
仮に、信託報酬率0.3132%(消費税込み)の投資信託を、毎月3万3000円ずつ1年間投資したとすると、信託報酬は年間で624円になります。この624円を先述の3者(社)で、2対2対1の割合で受け取ることになります。
どうでしょう。販売に要した初期費用と共に、ランニングコストの回収もままならないような気がします。
投資信託のコスト(=購入時手数料や信託報酬)に対する批判を背景に登場したのが、つみたてNISA?
投資信託の手数料について、「取り過ぎなのでは」と批判が多いことは重々、承知しています。というよりも、「手数料を取っているのにパフォーマンスが出ていない」というお叱りが多いのも、筆者はまた重々、承知しています。
確かに、過去に販売された投資信託の多くが、パフォーマンスがイマイチらしいです。ある新聞の見出しには「6割に含み損」とあります。
「コストを取るのなら、パフォーマンスで返してよ」。当然の叫びです。
しかし、コストが低いのは、投資家にとっては有利です。なので、つみたてNISAの実行は検討に値するのではないでしょうか。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役