買い方と売り方の気持ちが拮抗しているローソク足「十字線」とは?
配信日: 2021.04.17
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
ローソク足の陽線・陰線についてのおさらい
ローソク足は、始値・高値・安値・終値といった4つの値で形作られています。ローソク足の基本的な形は「陽線」・「陰線」の2つですが、陽線は終値が始値を上回っている状態、陰線は終値が始値を下回っている状態を示します。
■ローソク足の「陽線」・「陰線」
※筆者作成
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陽線・陰線以外のローソク足「十字線」
ローソク足の形状が陽線と陰線だけなら、ローソク足の理解は簡単で分かりやすいですが、実際は他にもいくつかの形があります。そのうち、今回は「十字線」について確認していきましょう。
■十字線
※筆者作成
ローソク足としては少し極端な形状に見えるかもしれませんが、十字線の特徴は始値と終値が同じで、上ヒゲと下ヒゲも同じ長さになっていることです。
これは例えば、日足ならその日の始値と終値が同じだったわけですから、投資家の買い姿勢と売り姿勢が競り合っていたことを示しています。上ヒゲと下ヒゲについても同じで、高値と安値が同程度の動きを示したわけですから、買いの勢いも売りの勢いも一定レベルあり、投資家としては、結局、一日を通じて迷っていたという意味になります。
十字線は頻繁に現れるローソク足ではありませんが、似たようなローソク足としては次のような形状が考えられます。
■十字線の類似形
※筆者作成
十字線は原則、始値と終値が同じと定義づけられるため、ボックスの形は長方形ではなく一本の横線に見えるのが特徴ですが、似たような形としては、横長の長方形に上ヒゲと下ヒゲが伸びているものがあります。
これは、基本的には十字線の意味と同じように解釈できるため、売り買いが競り合っている状態です。つまり、投資家の心理としては、上に行くか、下に行くかを迷っている状態と捉えることができます。
トレンド転換と十字線
ローソク足は、例えば、その日の株価がどのように動いたか、つまり、買おうという気持ちと売ろうという気持ちがどのような勢いであったかを示していますが、特に重要なのが高値圏と安値圏でどのようなローソク足の形状が出来上がるかという点です。
十字線では、買い勢力と売り勢力が競り合っているわけですから、高値圏で出現するということは、それまで買い上がってきた株価が高値圏に到達して売り圧力にさらされ、買う勢いが売る勢いに押されたということになります。従って、十字線が高値圏で現れると、通常、上昇トレンドから下降トレンドへの転換サインと捉えられます。
逆に安値圏で現れるということは、それまで売り勢力に押されていた買い勢力が息を吹き返すという意味なので、通常、安値圏での十字線は下降トレンドから上昇トレンドへの転換の兆しありと判定されます。
ただ、ローソク足の場合、悩ましいのが必ずしもそうなるとは言い切れない点です。
上昇トレンドの途中で十字線が現れたり、下降トレンドの途中で十字線が現れたりすることも、ときとしてあるため、ローソク足だけでトレンドの転換を判断すると大けがをする場合があります。
このようなことから、ローソク足の他にいくつかのテクニカル指標を組み合わせて投資判断を下すことが求められますが、他のテクニカル分析ツールについては別の機会でお伝えしていければと思います。
まとめ
今回は、前回に続きローソク足についてお伝えしましたが、陽線・陰線以外の十字線というパターンについて見てきました。その意味は、買い方と売り方が競り合い、今後、上に行くべきか、下に行くべきか、迷っている状態を示しています。
次回は、この競り合っている状態が大きく崩れるパターンについて見ていきたいと思います。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)