更新日: 2021.09.30 その他資産運用
ここのところ発行が増えている記念貨幣。もしも金貨が抽選で当選したら、もうかる?
今年・2021年は、11月から新500円硬貨(貨幣)の発行が始まりますが、記念貨幣も2つのイベントに計5種類が発行されます。近時は、記念貨幣発行ブームになっているようです。
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
記念貨幣の販売価格も“値上がり”
これまでに発行された記念貨幣は財務省のサイト(※1)などで確認ができ、近時はかなり多いことが実感されます。
今年は、「郵便制度150周年」と「近代通貨制度150周年」の2つの節目を記念して、それぞれで1万円金貨(以下、両方を「150周年金貨」と略称)が発行されます。いずれも販売価格は、特製ケース入り、消費税・送料込みで14万5000 円と高額です。
東京2020オリンピック記念(第一次)として2018年に発行された1万円金貨(以下、「オリンピック一次金貨」と略称)の販売価格は、同条件で12万円でした。
どちらも純金製で重量も同じ15.6グラムなのに、3年間で2割以上の値上がりです。その違いは、(1)原材料の金の値上がり、 (2)その他製造コストの値上がり、 (3)希少性(発行枚数)の差、 などが原因だと推定されますが、どうなのでしょうか。
まずは金の相場ですが、三菱マテリアルのデータ(※2)によれば、次のように変動しています。
◇オリンピック一次金貨 <2018年7月販売開始>
⇒ 同年同月の金の平均小売価格(税込み) 4850円
◇150周年金貨 <2021年4月「郵便制度」、6月「近代通貨制度」各販売開始>
⇒ 同年4・5・6月の金の小売価格(税込み)単純平均 約7080円
上記の各数値が直接の原材料コストそのものではないでしょうが、相場が5割近く値上がりとは驚きです。
製造コストは公表されていませんが、原材料以外ここ3年で大きな変動はなかったように推測されます。
最後に発行枚数は、海外販売用等として10%を限度に控除される分を含めて、オリンピック一次金貨4万枚、150周年金貨はそれぞれ2万枚。150周年金貨2種類をひとくくりで考えれば、オリンピック一次金貨と同数ともいえます。(150周年金貨「近代通貨制度」では、別に5000 円金貨も2万枚発行されますが)
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当初販売は抽選になる金貨
新500円貨幣も記念貨幣も、発行などは「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」で定められ、同法で貴金属を含む記念貨幣で製造費用が貨幣額面を超えるものは、造幣局が販売することになっています。
1万円金貨などを発行段階で手に入れるには、造幣局が募集する抽選販売に応募して当選する必要があるのです。造幣局公表で、オリンピック一次金貨の当選倍率は12.1倍、150周年金貨「郵便制度」では11.44倍でした。
3年前に販売済みのオリンピック一次金貨ですが、通販業者の近時のDM広告で21万7000 円あまり(税込み)の販売事例がありました。ネット検索してみると、コイン業者でさらに高額な販売事例も散見されます。
仮に22万円で実際に取引されたとすると、この金貨には次の3つの価格指標が存在するわけです。
額面1万円 < 当初販売価格12万円 < 取引事例価格22万円
貨幣を鋳つぶすことは法律違反ですが、「金塊としての価値」をあ えて計算すると、仮に現時点の金価格1グラム7000円(税込み)とすれば15.6グラムで10.9万円あまり。4つ目の価格指標ですが、当初販売価格には届きません。
まとめ
では、こうした高額な記念貨幣の金貨が抽選で手に入るともうかるのでしょうか。コイン業者などが販売しているのは、あくまでも「出口」価格です。「入口」つまり換金したい人から仕入れる価格は、それよりも相当低いことが想定されます。
また、ネットオークションを利用するにしてもそれなりのノウハウがいるでしょうし、意図する価格で売却できる保証もありません。もしも成約した場合には、オークション運営者に対する手数料負担も必要です。
つまり、(そんなことをする人はいませんが)額面のまま買い物や預金に使う場合を除いて、換金性(スムーズに相応価格で現金化できること)は決して高くないのです。
造幣局の販売要領には、「記念貨幣は多くの国民の皆様に末永く愛蔵していただきたいとの趣旨で発行・販売」とあり、明らかに転売を前提とした申込者には販売しないと明記されています。
購入した後に何らかの事情で手放すことまで禁じられないとしても、価格変動リスクや換金性などかなり難物です。記念貨幣の金貨を資産運用の対象にするのは、あまり向いていないかもしれません。
[出典]
(※1)財務省「記念貨幣一覧」
(※2)三菱マテリアル株式会社「金価格チャートライブラリー」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士