更新日: 2021.10.13 その他資産運用
テーマ型投資信託ってどうなの?
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
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証券会社がテーマ型投資信託を勧める理由
投資信託が資産形成のツールとして身近な存在になりつつあります。ですが選択肢が多すぎて、どの商品を選ぶのかは悩みのタネです。証券会社に相談すると、テーマ型投資信託を勧められることがあります。
そもそも投資信託は複数の証券を1つにまとめパッケージにしたものです。国内外の債券や株式を組み入れたバランス型投資信託を、iDeCoやつみたてNISAに利用した方もいらっしゃるのではないでしょうか。テーマ型投資信託とは、1つのテーマを決めて関連する企業を組み入れた商品です。
先日、サイバーセキュリティー関連の投資信託のセミナーを受講する機会がありました。コロナ禍によりリモート端末へのサイバー攻撃が急増しているとのことです。
実際、日本経済新聞(2021年9月9日付)に、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)攻撃の被害が半年間で3倍になったという記事が掲載されていました(※)。被害にあった約4割は、システムの復旧などに1000万円以上を要したそうです。
筆者もたびたび怪しげなメールがきますので、サイバーセキュリティー関連は日頃から関心を持っていた分野です。コロナが収束したとしても、社会のデジタル化は進んでいくことが予想されますので、セキュリティーの分野も成長すると考えられます。
サイバーセキュリティー関連というテーマは一例ではありますが、テーマ型投資信託として売り出されているものは、現在多くの人が関心を持っていて、業績がよく今後も期待できそうな企業で組成されています。
販売側も説明しやすいメリットがありますので、お勧めされる機会が増えるのかもしれません。
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専門家の意見が分かれる理由
専門家の中には、テーマ型はお勧めしないという方もいらっしゃいます。確かに「投資に失敗した」「今は塩漬けになっている」という相談者さまにその内容を聞くと、テーマ型投資信託が含まれているケースが見受けられます。
“お勧めしない”とされる理由は、以下の3つ考えられます。
(1) テーマ型投資信託を思わず買ってしまうのは“今どきの時流に乗ったトレンド商品”だからです。
先の例にあったサイバーセキュリティーやAI、SDGsなど、ちまたで目にすることの多い単語が商品のサブタイトルについていると、何だか今後期待できそうな印象を受けるのかもしれません。トレンド商品ならば流行が一過性であることも多いので見極めが必要です。
(2) 投資信託の商品を新たに販売するためには、組成などに時間がかかります。商品が出来上がった時に組み入れ企業の株価がすでに高値になっていることが考えられます。割高な商品を買うことになるリスクがあります。
(3) 商品を買う時、一般的には似たような商品と比較検討すると思います。投資信託の場合も過去の実績や他の商品と比べてどうか、といった比較は必要です。投資判断する実績材料が乏しいので判断しにくいという点にも注意が必要です。
テーマ型投資信託との付き合い方
海外株式型の投資信託を選択する方もいらっしゃるでしょう。以下は一例ですが、海外株式型投資信託の1年間リターンランキングのトップ5は図表のとおりとなっています。
1位は三菱UFJ国際投信が運用する「eMAXIS Neo バーチャルリアリティー」です。これは仮想現実がテーマの投資信託で、設定は2018年12月です。基準価額は2021年8月31日時点3万6031円で1年前の約2.5倍になっています。
2位はナノテクノロジー、5位は自動運転をテーマにしたこのシリーズがランキングしています。
(注意:こちらの情報は、2021年8月31日時点のものです)
仮にこのような恩恵を受けることができれば、テーマ型投資信託も決して悪くないと筆者は思います。しかし、投資に「絶対」はありません。慎重に検討する必要があることに変わりはありません。
では、テーマ型投資信託とうまく付き合うのにはどうすれば良いのかを考えます。
もしテーマに関心を持ったり、リターンに魅力を感じたりしただけで、購入を検討するのは危険です。そのテーマ型投資信託に組み入れられているのはどのような銘柄か、またどのような基準で組み入れ銘柄を決めているかなどの確認は必要です。
最近はESGやSDGsをテーマにした投資信託が存在しますが、当然のことながら内容はそれぞれ違っています。テーマに興味が持てても内容に違和感があるものは買うべきではありません。
また一部の専門家が危惧するように、そのテーマが一過性のこともあります。購入後しばらく運用成績が良いと、安心して放置してしまうことがあるかもしれません。気が付いたら、大きな損失になり、やがて塩漬け状態に。
買いっぱなしではなく、売却のタイミングをうかがうことも重要です。株式全体のインデックス型ではありませんで、中長期で保有するものとは違う扱いを心がけることが賢明です。
出典
(※)日本経済新聞「ランサムウエア被害、半年で3倍に」(2021年9月9日)
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士