いよいよNISAが恒久化される? その2
配信日: 2022.12.18
「その2」ではNISA制度が今後どのように改善されるのか、各界からの要望の内容に基づいて解説したいと思います。
NISAの恒久化が決定したとしても、制度設計自体はこれから行われ、通常は年末に発表される税制改正大綱でその概要が示されます。利用者にとっては、どのような制度設計がなされるかが重要となってきます。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
NISA改善要望の内容
2022年7月に発表された日本証券業協会による政府の「資産所得倍増プラン」への提言案では、NISA制度の改善について以下の要望が上げられています。
1. NISAの恒久化
2. NISAの非課税投資枠の引き上げ
このうち、NISAの恒久化については前回「その1」で解説しました。
NISAの恒久化とは、NISAの利用を現在の時限措置から恒久的にすることで、生涯どのタイミングでも非課税で投資ができる仕組みにすることです。それとともに重要なのは、NISAの非課税投資枠の引き上げですが、この点について以下で解説していきます。
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NISAの非課税投資枠の引き上げ
「その1」で述べたように、長期投資を前提としたつみたてNISAを最大限利用したとしても、総投資額は800万円にしかなりません。
投資額について生涯を通じた投資にふさわしい額に引き上げる必要がありますが、日本証券業協会の提言案では図表1のとおり、非課税投資枠の拡大案の例が示されています。
【図表1】
年間非課税投資枠 | 現状 | 今後 |
---|---|---|
一般NISA | 120万円 | 240万円 |
つみたてNISA | 40万円 | 60万円 |
計 | (併用不可) | 300万円 |
一般NISAとつみたてNISAの併用 | 不可 | 可 |
※筆者作成
提言案は、年間の非課税投資枠について一般NISAは現状の2倍、つみたてNISAは現状の1.5倍に増やし、かつ両方の併用を可能とする内容となっています。
そうなった場合は、NISA全体の年間非課税投資枠は300万円となりますが、これは英国ISAの年間非課税投資枠2万ポンド(約320万円。2022年7月20日時点の日本証券業協会ホームページの記載より)とほぼ同等になります。
年間の非課税投資枠が300万円ということは、例えば20歳から60歳まで継続的に投資を行えば、総額1億2000万円もの非課税投資ができることになります。上限枠の限度額まで投資を行うかは別として、個人が生涯にわたる投資を行う手段としては十分なものになると思います。
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恒久化や非課税投資枠のほかに改善してほしい点
上記以外にNISA制度で改善してほしい点としては、次の項目が挙げられます。
1. 制度が複雑で分かりにくい
「その1」でも解説した現行のNISA制度が複雑であるという点については、主に時限措置であることに起因していました。
制度が恒久化されれば、ロールオーバーをする必要もなくなり、制度自体はかなり分かりやすく、使いやすくなるものと思われます。
2. 投資対象銘柄のスイッチングを可能にする
現在のNISAでは、いったんある銘柄に投資を行い、途中で売却して別の銘柄に替えると、新たな非課税枠を消費することになり、株価変動に伴う「リバランス」がやりにくい仕組みになっています。
リバランスとは、複数の資産(証券や債券など)に分散投資をする場合、資産の価格変動により当初決定した資産配分比率が変わったときに、資産の購入・売却を通じて資産の再配分を行い、当初の資産配分比率に戻すことをいいます。
安定した分配投資を行うためには、リバランスが必要といわれていますが、保有していた銘柄を売却して別の銘柄に変えても、今までの非課税枠が使えれば非課税枠を消費することなく銘柄変更ができるので、投資内容の調整も容易にできるようになります。
まとめ
岸田首相のNISA恒久化の表明に伴い、NISA制度の問題点と改善すべき点について2回にわたって解説しました。
NISAの改善のためには恒久化とともに、年間の非課税投資枠の拡大が必須ですが、それは今後の制度設計次第です。
恒久化と投資枠の拡大に加え、一般NISAとつみたてNISAの併用を実現し、NISAを英国のISA並みの制度にすることができれば、日本の今後の資産所得と投資にとって大きな変化をもたらすものになるでしょう。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー