更新日: 2023.06.23 NISA

「年金の追納」と「つみたてNISA」どちらを優先するべきかFPが検討してみた

「年金の追納」と「つみたてNISA」どちらを優先するべきかFPが検討してみた
国民年金の追納とつみたてNISAのどちらを優先すべきか、老後について考え頭を悩ませている人もいるでしょう。両者ともに得られる効果が異なるため、安易に決めると後悔することになります。
 
そこで、FPの立場から、どちらを優先するべきなのか考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金制度への信頼性で決める

年金制度は、常に一定であるとは限りません。60歳からの支給が原則65歳からの支給となったり、年金支給額が毎年変動したりしていることなどから、年金制度は時勢に応じて変化しています。
 
令和5年度ベースで、国民年金は満額で年79万円ほど受け取ることができますが、10年後、20年後はこの支給金額が下がったり、支給開始年齢が70歳に後ろ倒しされたりするなどの可能性もゼロではありません。仮に、65歳から受け取れるはずの年金が、70歳となり5年後ろ倒しされると、受け取れる年金額は生涯で395万円ほど減ることになります。
 
今後、年金制度が自分にとって悪い方向に変化していくと考えるのであれば、つみたてNISA優先がいいでしょう。国民年金が公的制度であり、国の運営する信頼できる終身年金だという点を重視するのであれば追納を優先すべきです。
 

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就労期間で決める

厚生年金は、70歳まで加入することができます。厚生年金の保険料には、国民年金の保険料が含まれており、厚生年金加入中は、国民年金の第2号として国民年金に加入することができます。
 
何歳まで厚生年金に加入して保険料を納付しても、国民年金の年金額が増えるのは最大で40年分であることには変わりありません。それゆえ、60歳以降も働き続けるのであれば、年金の追納をしてもしなくとも、将来的に受け取る国民年金の金額が変わらない可能性も十分にあります。
 
現在では、多くの企業で65歳まで働ける環境が整っているどころか、国から企業へ、「70歳まで働ける環境づくり」について努力義務が課されているため、今後70歳まで働くことを選択する人が増える可能性は十分にあります。その時、70歳まで働く可能性を考えるのであれば、今無理に追納しなくてもいいという考え方もあります。
 

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流動性で決める

つみたてNISAは元本割れリスクがあるものの、いつでも現金化でき、資金の流動性は非常に高いです。
 
一方で、追納してしまうと、少なくともそのお金は60歳まで年金として受け取ることができません。まだ20代や30代と、年金受け取りまで時間のある方の場合は、年金を受け取るまでに何が起こるか分かりません。
 
万が一に備えて、流動性のあるお金を確保しておきたいという場合は、追納よりつみたてNISAがおすすめです。
 

リターンで決める

国民年金とつみたてNISAとでは、リターンが異なります。仮に令和5年度中に令和3年度・4年度の2年分の国民年金を追納する場合、保険料の総額は、39万8400円と、40万円近い金額になります。
 
それに対して、増える年金額は1年でおおよそ4万円です。元を取るには10年ほど年金を受け取り続けねばなりません。一方で、40万円のお金を投資信託などで30年、年利3%で運用すると、総額は97万1000円となります。これが40年運用するとあれば、130万5000円とさらに資産額は大きくなります。
 
税や手数料は考慮しない簡易な計算ですが、投資信託の運用を上回るリターンを追納で得るには、65歳から24年以上年金を受け取り続けなければならない計算になります。
 
また、つみたてNISAは2024年から新NISAに変わり、非課税期間が恒久となり、さらには年間360万円、累計1800万円までの投資から得られる利益が非課税となります。そのため、リターンを重視するなら、つみたてNISAがおすすめといえます。
 

国民年金の追納とつみたてNISA、どちらを優先すべきかは人によって異なる

国民年金への追納か、それともつみたてNISAでの資産運用か、どちらを優先すべきかは個別の事情によって異なります。未来のことは確定していない以上、この選択は慎重に行うべき必要があります。
 
もし、国民年金の追納とつみたてNISAとで悩んでしまったときは、両者の違いについて比較し、自身が一番納得して行えるほうを選ぶようにしてください。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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