更新日: 2023.09.30 株・株式・FX投資
40歳、年収600万円です。老後資金のために勤務先の持株制度って使ったほうが良いですか?
執筆者:植田周司(うえだ しゅうじ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)
外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
お客様に「相談して良かった」と言っていただけるよう、日々努力しています。
持株制度とは
持株制度は企業の福利厚生制度の1つとして、社員の給料やボーナスの一部を自社株購入資金として持株会に拠出し、自社株を購入する制度です。
通常、株式を証券会社で購入する場合は、100株単位で購入する必要がありますが、持株制度では、持株会が社員の拠出した資金をまとめて自社株を購入し、社員はその拠出金額に比例した株数を所有することになります。小数点以下の株数でも所有できます。
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持株制度のメリット
持株制度は、毎月の給与とボーナスから一定額を積み立てて自社株に投資できます。そのため、株価の低い時は多くの株数が買え、高い時には少しの株数しか購入できないという「ドルコスト平均法」(注1)を活用した株式投資が可能です。
(注1)ドルコスト平均法:一定額の積み立て投資を長期間行う投資法で、トータルの平均購入価格を下げる効果があります。
ほとんどの採用企業は奨励金を出していて、その分を上乗せして株式を購入できます。2023年6月の東京証券取引所の発表資料によれば、持株制度を導入している企業の96.3%が奨励金を支給していて、平均支給額は拠出金1000円に対して91.71円です(※1)。
拠出金額は、規約で決められた上限内で社員が自由に決定できます。自身の家計の余裕を確認しながら、無理のない範囲で積み立て投資ができます。ただし、拠出金額を変更できるタイミングに制約がある場合もあります。詳細については自社の規約を確認してください。
持株制度の配当金は通常、自社株の購入に充てられますが、社員が受け取るなど企業の持株制度によって規定が異なります。持株の購入に充てる場合は、福利効果を利用して保有株数を増やすことができます。
持株会で保有している自己の持ち分は、一定の保留期間後いつでも引き出し売却できます。老後資金だけでなく、さまざまな目的に活用できます。現在40歳で、その会社で長く働く予定であれば、老後資金作りの効率的な手段といえるでしょう。
会社の業績が向上し株価が上昇すると、持株会で保有している社員の資産も増加します。そのため社員の働く意欲にもつながります。
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持株制度のデメリット
持株制度は、投資信託と異なり1つの会社に集中投資することから、比較的リスクの高い投資方法といえます。
会社の株価は、その収益に比例して大きく上下します。特に、会社の経営が悪化し株価が大きく下がった場合、「我慢して持株を継続できるか?」が問題です。株価が大きく下がった時に不安を感じ、投資をやめてしまう人もいるでしょう。積み立て投資は株価の上下に一喜一憂することなく、継続することが大切です。
ドルコスト平均法は株価が下がった時にも継続することで、その後の株価回復によって大きく資産を増やす可能性があります。
ただし、倒産するはずがないと思われる有名な企業でも、倒産する場合があります。持株会で保有していた資産(株)が、無価値となってしまう可能性が絶対にないとはいえないことには注意が必要です。
自社が株主優待を実施している場合でも、持株会の株式に対しては通常株主優待を受けることができません。
持株制度で購入した持ち分は通常、一定期間引き出すことができないため、短期で売買を繰り返すような運用は難しいでしょう。また売却する時には、持株会から自分自身の口座に引き出す必要があるため、通常の株式売却と比較して時間がかかります。
なお、持株制度は購入者が持株会となるため、NISA制度などの非課税制度は利用できません。
持株制度の課税
持株制度で取得した株式を売却した場合は、通常の株式の売買と同様に、利益に対して20.315%の税金が源泉徴収されます。損失の場合、税金はかかりません。計算のもとになる取得費は、持株会から引き出す時に自動的に登録されます(※2)。
持株制度の配当金に関しても同様に、20.315%が源泉徴収されます。通常は源泉徴収後の金額を持株会に再投資されますが、社員が受け取る場合は、源泉徴収された残りを受け取ります。
まとめ
2023年に発表された東京証券取引所の調査によれば、上場企業の約9割が持ち株会を採用しています。現在の会社で長期間働く予定であれば、持ち株制度は非常に優れた投資方法といえます。途中で売却も可能ですので、老後資金だけでなく、自宅の購入資金など他の用途にも活用できます。
持株制度は年齢や年収に関係なく、奨励金などを考慮すると、資産形成として優れた制度です。確定拠出年金やNISA制度と併せて、資産形成の手段としてバランスよく活用してください。
出典
(※1)東京証券取引所 2021年度従業員持株会状況調査結果の概要について
(※2)国税庁 従業員持株会を通じて取得した株式の取得費等
執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)