〈柴沼投資塾〉時事ネタ編③フランス大統領選挙も無難に終わり、世界経済は拡大基調
配信日: 2017.05.30 更新日: 2019.08.19
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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目次
ポジティブ・サプライズの最大の要因は、欧州の選挙を無事乗り切ったこと
まずどうしてこれほどまで上昇しているのかというところを振り返ります。最大の理由は欧州(フランス)の選挙が昨年のブレクジットと違って無難にこなしたということです。このことからいわゆるリスクオフではなくリスクオンの流れが主流になっています。
次に、トランプ大統領の政治手腕というところですが、確かにオバマケアの代替案が否決されたことで不安視されました(それ以降、下院は何とか通過しました)。ですがそれ以上に欧米先進国の経済状況が好調であるところにスポットが当たっています。その最たるものが日本の連休中2017年5月5日に発表された4月の米国雇用統計でした。前月比21.1万人増と、前月の9.8万人増から大きく増加し、6月の利上げが確実視されています。この流れで金利差拡大から円安ドル高のトレンドがほぼ確定となりました。また欧州の景気も好調で、金融緩和についての出口戦力についての議論がスタートしています。
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短期的な調整は想定の範囲内であることをチャートから確認
前述のことから、好調すぎる値動きにむしろ不安の声すら聞こえてきます。どこかで価格調整(下げ)が起こるのではないかということです。こういった調整があるかないかを判断するのに有効なのは、チャートです。
もともと株価をはじめとする金融資産の値動きをみるにあたって、歴史的に、チャートの動きをみて判断するという考え方があります。これに対して、個別の要因や経済数値、その値動きの原因となった商品や経済環境をみる考え方をファンダメンタルズ分析といいますが、この2つはなぜか相反する考え方と目されてきているように思います。すなわち、ファンダメンタルズを重視して判断するアナリストは、「チャートを見て値動きを判断できるほど単純ではない」という根拠をもっていますし、一方、チャーチストの立場からは、「あらゆる投資家の思惑が凝縮されているのがチャートなので、チャートの動きを読むことは値動きのトレンドを非常に正直に集約している」という考え方を堅持しています。
ただ、「短期的な調整」「相場が過熱しているかどうか」といった流れを確認するには、チャートは有効です。短期的な移動平均線(25日)からの乖離を確認しましょう。チャートの見方の詳細については別の機会に譲るとして、相場が上昇しすぎているかどうかというのは、これまでの値動きを平均化した移動平均線から大きく上放れしているかどうかで判断します。
将来的な下げの可能性については、恐怖指数が不安を払拭
今後、トレンドとして大きく下げるかもしれないということを示唆するのによく用いられるのが、恐怖(VIX)指数です。詳細についてはここでは触れませんが、VIX指数のボーダーラインは20と言われており、これを上回ると(投資家がこれから大きく乱高下するのではないかと考え、大きく下げるということが過去の事例からも証明されています。最近では、2015年半ばの中国の人民元切り下げや中国株の急落時の際に20を上回りました。これに対して、昨年のブレクジットや今年のフランス大統領選挙については15前後を示しています。投資家があくまでも局所的な政治イベント止まりで、世界景気を大きく揺るがすものではないという判断をしていることが読み取れます。
政治的なイベントは局所要因
以前から再三お伝えしていますが、政治イベントはかく乱要因ではありますが、そんな時こそ、実体経済の動きを確認することが大切です。2017年のグローバル経済で注目したい動きの1つに新興国の堅調さがあります。新興国(メキシコ、ブラジル、中国)での輸出が経済成長を支えていますが、では輸出はどこ向けかというと、欧米向けです。
トランプ大統領が掲げている「保護主義」よりも実体経済が好調であるがゆえに世界の経済が拡大基調にあることを認識する必要があります。欧米の景気が好調であることが、新興国やひいては本邦の経済成長をも支えています。事実日本企業全般の2018年3月期に向けた業績は10%増益を予想されています。
これらを考え合わせれば、目先、2万円に乗せるのは非現実的ではないという結論を導かざるをえませんね。