父に銀行から「特別なお客様にだけご案内する金融商品です」と電話が! 父は乗り気ですが、正直うさんくさいと感じてしまいます。「大手の銀行」なら大丈夫なのでしょうか…?

配信日: 2025.01.23

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父に銀行から「特別なお客様にだけご案内する金融商品です」と電話が! 父は乗り気ですが、正直うさんくさいと感じてしまいます。「大手の銀行」なら大丈夫なのでしょうか…?
取引のある大手銀行からとはいえ、「特別なお客さまだけに案内する金融商品」と言われると、確かに少しうさん臭く感じてしまうかもしれません。
 
その感覚は実は大事で、実際に大手金融機関などの担当者が、こういった類いのうたい文句で巨額の詐欺事件を起こした事例があります。
 
銀行、保険会社、証券会社等さまざまな金融機関で起こっています。ある程度の資産を所有している高齢者が狙われやすい傾向にあり、まわりの家族も気をつける必要があります。
 
また、商品自体が存在しない「詐欺」に限らず、実在するものの内容に問題のある金融商品が存在し、実際に金融庁から注意喚起された例もあります。
 
本記事では、実際の詐欺事例や問題があると指摘された金融商品の事例を振り返りながら、信頼できる金融商品の見分け方、留意点を解説します。
玉上信明

執筆者:玉上信明(たまがみ のぶあき)

社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

大手金融機関でも職員の詐欺事件は発生している

2020年から2021年に次のような事件が発生しています。


・大手信託銀行 支店管理職が顧客に「架空のキャンペーン案内」で有利な金利条件等を提示して、現金を着服。着服の被害者22名、被害額約3億7000万円。

・大手生命保険会社 勤続55年で特別調査役という高位の職員が、「架空の金融取引があたかも存在するかのような話」を持ち掛けて現金を着服。被害者24名、被害額約19億5000万円。

2024年に発覚した事件の一例は次の通りです。


・大手生命保険会社 投資運用名目で顧客から金銭を預かる。被害者は34人、被害額は約7億5000万円。

・大手損害保険会社 保険証書を偽造して約8000万円を不正受領。

・大手生命保険会社 投資運用名目で金銭を預かり、その後、大部分が返済されず。被害者は10人、被害額は約1億7000万円。

・地方銀行 行員が顧客に「新紙幣への両替の目標がある。無料で受け付ける」と虚偽の説明をして、16人から約5500万円を詐取。

・大手証券会社 金融商品の購入手続きを装って約300万円を詐取。

 

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金融機関職員による詐欺への対応は一般の投資詐欺と同様

金融庁等からは詐欺的な投資勧誘に関して注意喚起が行われています。「実在の金融機関や金融機関職員を名乗る詐欺事件」といった注意も行われています。
 
しかし実際には、前記の通り、正真正銘本物の金融機関職員自身が詐欺に手を染める事件も発生しているのです。こうした勧誘への対策は、一般の投資詐欺に対してのものと変わりません。
 
「未公開株」「私募債」「ファンド(組合など)」など耳慣れないもうけ話は、安易に信じないことです。「必ずもうかる」といった投資話をもちかけられても気軽に信じてはいけません。高齢者に限らず、自分だけで判断するのではなく、家族や公的機関に相談することをお勧めします。
 
詐欺を行う金融機関の職員は、もっともらしい話を持ち掛けていることが多いのです。前記した、大手生命保険会社の特別調査役による事件では、


「私には長年勤めたご褒美の枠がある。私もその枠に預けている」「社内に特別な人だけが利用できる枠がある。金利は3割である。社内のことだから税金もかからない」

こういった内部の人間だからこそ言える内容を織り交ぜ、信じ込ませていったようです。なお、「特別調査役」は、同社においてトップセールスとして実績を上げてきた詐欺犯人本人だけの肩書であり、特別枠というのも、もっともらしく聞こえたのでしょう。
 
前記の大手銀行職員による事件では、


「高い金利がつくキャンペーンがある」と架空の金融商品を提案、「普通預金から出金し、キャンペーン中の好条件で定期預金を作りましょう」

などのうたい文句で説得したようです。定期預金の金利キャンペーンという、いかにも実在する商品らしい説明なので、真に受けた顧客も多かったと思われます。
 
この大手銀行では、その後、被害防止のため、キャンペーンは現在のもの過去のものを問わずすべてホームページに掲載し、顧客が本当に実在するキャンペーンであるかを自分で把握できるようにしています。
 
つい最近、筆者の知人がこの銀行から有利なキャンペーンを勧められたので、ホームページで実在のキャンペーンか確認するようアドバイスしました。確かにホームページに掲載されていたので、知人も筆者も安心できました。
 

実在の金融商品でもハイリスクなものがある

ここまでは架空の金融商品詐欺について説明してきました。しかし、実際に存在する金融商品でもリスクの高いものはいろいろとあります。
 
金融庁では、代表的なリスク性金融商品について、顧客本位の業務運営になっているか分析を行っています。金融庁が金融機関に対して改善を求めた金融商品の事例をいくつか紹介します。
 

・外貨建一時払い保険

顧客から受け取る一時払い保険料を、ドルなどの外貨で運用する保険です。約2割の顧客で、知識・投資経験不足の懸念や投資方針との不一致の懸念がありました。投資信託と比べて運用パフォーマンスが劣後する傾向もあるとされています。
 
購入後4年間という短期間での解約が6割に上り、解約した顧客に再び同様の商品を販売して手数料を得ているケースが多発しているとして、金融庁が金融機関に改善を求めています。
 

・仕組預金

デリバティブ取引を組み込んだ預金商品です。為替相場によって払戻時の通貨が決まる商品や、銀行が預入日以降に満期日を選択できる権利を持つ商品などがあります。
 
顧客に対して、コストやリスクを十分に情報提供していない、といった問題があります。顧客が受け取った償還金のトータルリターン(年率換算)がマイナスの事例も多数見られます。
 

・仕組債

デリバティブ取引を組み込んだ債券です。あらかじめ定められた参照指標で利子や償還金が定められている場合、当該参照指標の変動次第で利子や償還額が減少するリスクがあります。
 
多くの銀行ではリスクを認識し個人向け販売を取り止めてきています。金融庁から業務改善命令が出された銀行もあります。
 

・外貨建債券

為替・金利等の影響を受けることから、円ベースでの元本が確保されないリスクのある商品です。 特に、新興国通貨建債券はリスクが高くなる傾向があります。
 

自分で理解できない商品には手を出さないのが無難

投資詐欺の事例ではありませんが、2024年には大手メガバンクの貸金庫担当管理職による収納物巨額窃盗事件も発生しました。金融機関職員の中にはモラルの欠如した人も少なからずいると考えざるをえません。
 
これまで長くお世話になった金融機関職員であっても、うまいもうけ話を持ちかけられたら、安易に信用しないほうがよさそうです。実在の投資商品かどうかを金融機関のホームページで確かめる、金融機関相談窓口に問い合わせるといったことは最低限行うべきです。
 
実在の投資商品であっても、「分かりにくい」と思えば慎重に考えるべきです。金融機関職員との打ち合わせの場に家族も同席し、目論見書(商品説明書)などの資料をもとに、職員の話をしっかり聞いてください。
 
金融商品である以上、リターンの高さとリスクの高さは見合っているはずです。「有利な商品ならば損失を被る可能性も高い」と考えて、リスクをしっかり見極めてください。
 
リスクが理解できないならば、担当者の説明をうのみにせず、投資しないのが一番無難な対応と思われます。
 

出典

金融庁 詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!
金融庁 リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果(概要版)2024(令和6)年7月5日
 
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

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