不動産投資は「相続」に有利って本当? 現金で相続するよりもお得なの?

配信日: 2025.01.24

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不動産投資は「相続」に有利って本当? 現金で相続するよりもお得なの?
投資にはいくつかの種類がありますが、その中でも不動産投資は、それ以外の株式投資・債券投資・外貨投資などとはかなり内容が異なっています。後者が金銭の世界で完結するのに対し、不動産投資には、多くの場合「不動産」という現物資産が関与します。
 
不動産投資は「不動産価格の変動」というキャピタル・ゲイン&ロスと、「賃料」というインカム・ゲインの2つを考えてする必要があります。
 
そんな不動産投資のメリットの1つは、現金や株式などの金銭資産で相続した場合と比べ、相続税がかなり少なくなることです。そのため、不動産は相続税の節税の有効な手段として、特に富裕層の間で注目されてきました。
 
この記事では、不動産が相続においてどのくらい有利なのか、多くの方が気づきにくい点に着目して、具体的に解説したいと思います。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

不動産の相続税評価額は、どのように決まるか?

相続は誰しも避けて通ることができない問題です。どのような形で財産を残すか、節税をできるだけ有利に行うにはどうしたらよいかは、人生の最後における重要な課題ということができます。
 
それでは相続を行う際、現金・通常の土地付き建物・賃貸中の不動産で、それぞれの相続税の評価額はどう違ってくるのか、考えてみましょう。
 
表1は東京都内の中古ワンルーム・マンションを想定して、①その時価(実勢価格)、②自分で居住している場合(「自用」といいます)、③賃貸している場合について、①~③それぞれの相続税評価額の目安を比較したものです。
 
表1

1 不動産の時価
(=実勢価格)
2 自用の場合の
相続税評価額
3 賃貸中の場合の
相続税評価額
建物 2000万円 1200万円 840万円
土地(敷地権割合) 800万円 560万円 442万円
合計 2800万円 1760万円 1282万円
時価の合計額に占める比率(四捨五入) 100 63 46

筆者作成
 
表1を見ると、①ワンルーム・マンションの時価、②自用、③賃貸中の場合の3とおりを比較したとき、相続税評価額は右の列になるにつれて、だんだん下がっていることが分かります。なお、①の「不動産の時価(=実勢価格)」とは、実際に取引されている不動産の価格をいいます。
 
この表のとおりであれば、現金で相続するより、その現金で不動産を買って相続する方が相続税は少なくなります。さらに、その不動産を賃貸に出したまま相続すれば、さらに相続税が少なくなります。
 
なぜ、そのようなことが起きるのでしょうか?
 

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賃貸中の不動産は、自由度が低い分、評価額が下がりやすい

相続税評価額は、時価で評価するのが原則です。相続財産が現金の場合、その金額そのものが時価なので評価は簡単です。
 
一方、不動産は実際に売ってみないといくらで売れるか分かりません。一応上記のように、いわゆる「時価」である「実勢価格」があるものの、いつでも取引所で売買が可能な株式とは違い、事前に「時価」を確定させることは不可能です。
 
といっても、相続するたびに不動産を売るわけにはいきません。
 
したがって、不動産の相続税評価額を決める場合は、その性格に応じた評価額算出のルールが定められています。ここで、不動産の価格について整理してみましょう。
 
表2

不動産の価格 内容
実勢価格 実際に売買されている価格
公示地価 国土交通省が毎年3月に公示する標準地の価格
課税標準額 土地・建物に税率をかけて、固定資産税額を算出するもとになる金額。
評価額ともいう
自用の建物の相続税評価額 固定資産税評価額
自用の土地の相続税評価額 路線価(相続税路線価)
賃貸中の建物(貸家建物)の相続税評価額 固定資産税評価額に借家権割合、賃貸割合を考慮して計算される
賃貸中の土地(貸家建付地)の相続税評価額 路線価に借地権割合、借家権割合、賃貸割合を考慮して計算される

 
表2を見て分かるように、土地の場合は、路線価が相続税評価額になります。建物の場合は、固定資産税評価額が相続税評価額になります。
 
また、自宅として使っている土地・建物(自用の土地・建物)と賃貸に出している土地・建物とでは、所有者から見て自由度が異なります。自用の土地・建物であれば、所有者の好きなときに売却できますが、賃貸に出している土地・建物は、所有者の意向で売却時期を決めることができません。
 
それゆえ、賃貸に出している土地・建物は、それらの借地権割合、借家権割合、賃貸割合などを考慮した上で、自用の土地・建物と比べて相続税評価額が低く設定されています。それらが、「不動産で相続した方が、現金で相続するより有利である」という理由です。
 

まとめ

不動産を活用した相続は、現金よりも相続税評価額が低くなるため、節税効果が期待できます。特に賃貸中の不動産は評価額がさらに下がりやすく、相続税対策として有効です。
 
不動産の相続は、時価や路線価、固定資産税評価額などの評価方法を理解し、自用か賃貸かによる差を把握することが重要です。これらのポイントを踏まえ、将来に向けた計画的な資産形成を進めましょう。
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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