更新日: 2019.06.13 不動産投資

Jリートのメリットが、実はJリートの弱点?

Jリートのメリットが、実はJリートの弱点?
Jリートの特徴として訴求されるのが分配金です。Jリートの分配金は、株式の配当金と同じようにインカムゲインです。インカムゲインとは、「保有期間中に得ることができる収入」のことです。Jリートや投資信託なら分配金、株式なら配当金、不動産なら家賃や地代です。
 
Jリートの分配金は、株式の配当金に無いルールがあり、Jリートの特徴として訴求されます。それは「利益の90%超を分配金に充てれば、法人税が掛からない」というものです。
 
法人税が掛からなければ、その分、配当に充てる原資が増えますからね。投資家にとっては、この上もなく有利です。ただ、筆者はこれをJリートの弱点とも考えています。
 
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

そもそも、Jリートの分配金とは?

そもそもJリートの分配金は、Jリートの利益です。もともとJリートは「大家さん業」ですから、家賃収入があります。非常に大雑把な説明になりますが、家賃収入から経費を差し引いたものが、Jリートの利益となるのです。
 

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Jリートは「大家さん業」。だけど、個人の不動産投資と、ここが違う!

先述の通り、Jリートは大家さん業であり、利益の源は(経費を引いた後の)家賃収入なのですが、個人の不動産投資とは異なる点があります。
 
Jリートの分配金は、Jリートの決算終了後に受け取ることができます。Jリートの多くは、「年に2回」決算を行います。なので、家賃収入を受け取ることができるのは、1年に2回ということになります。
 
「それじゃあ、家賃収入の感覚には、ほど遠いよ」というお声が聞こえてきそうですね。
 
ただ、Jリートの「決算月」の異なるものを6本、組み合わせて投資すると、家賃収入のそれに近くなると思います。上場している会社の決算は「3月」が割と多いと思いますが、Jリートの決算月はバラついていて、「4月と10月」や「6月と12月」という具合です。
 

Jリートの分配金は不動産所得ではありません

個人で不動産投資をした場合、家賃収入は「不動産所得」として、税金を計算します。もし、「不動産所得」が赤字だとすると、お給料(=給与所得)と通算できて、お給料に掛かる税金を減らすことができます。
 
しかし、Jリートの分配金は、株式の配当金と同じく配当所得です。なので、Jリートの分配金とお給料(=給与所得)とは通算することができません。せいぜい、Jリートの分配金は他のJリートの売却損や、株式の売却損と通算することができるくらいです。
 
しかも、株式の配当金や、株式投資信託の普通分配金では配当控除の適用が可能ですが、Jリートの分配金は配当控除がありません。
 

が、逆のことも言えます。

個人の不動産投資による家賃収入は不動産所得ですので、お給料(=給与所得)などと合算して税金を計算する、いわゆる総合課税です。なので、家賃収入が大きいと、それだけ高い税率の税金を払う可能性があります。
 
その点、Jリート分配金は配当所得ですから、どんなに高額な分配金を受け取ったとしても、その税率は一律20.315%です。
 
しかも、不動産所得は毎年の確定申告が必須ですが、Jリートの分配金は確定申告が不要です。さらに、NISAを利用してJリートに投資していれば、Jリートの分配金は非課税です!
 

内部留保がありませんから。外部から資金を調達することになります

Jリートの特徴である、「利益の90%超を分配金に充てる」は、つまり「内部留保が無い」ということです。内部留保が無い、つまり「利益から貯金に廻さない」というイメージです。
 
「利益から貯金に廻さない」ことの、なにが問題なのでしょうか?あるJリートが、Jリートそのものの価値を上げようと「所有する物件を増やす」ことを考えたとします。
 
例えば、「Jリートの投資口(=Jリートの株券)」を、新たに発行して資金を集めることにします。が、そんなことをしたら、すでにJリートを持っている人は怒ってしまいますね。Jリートの投資口が増える分、Jリートの値段が下がってしまいます。
 
ということで、Jリートが社債(=企業の社債と同じ)を発行して、資金を集めることになります。社債は借金と同じイメージですので、Jリートが借金を抱える、あるいは借金が増えることになります。
 
Jリートは、社債を買ってもらった人に利息を払わなくてはなりません。あるいは、Jリートが金融機関に融資してもらう、という方法もあろうかと思います。
 
社債を買う側や、お金を貸す金融機関の側に立つと、「内部留保が無いJリート」にお金を貸すのは、勇気と覚悟が必要だと思います。
 
もちろん、Jリートですから、物件は複数あります。ですが、その物件はJリートの投資家のお金をもとに購入した物件です。万が一、社債や借金を返すことができなくなってしまったら、物件を売って投資家に対して弁済することになります。…なかなか難しいことになってしまいそうです。
 
内部留保というのは、企業にとっては貴重な資金源だと、筆者は考えています。「社債を買ってくれる人」や「お金を貸してくれる金融機関」の顔色を窺う必要はありませんし、利息の支払いもありません。文字通り、自分の意志で自由にできるお金です。
 
その内部留保が無いのはどうなのでしょう。「利益の90%超を分配金に充てる」代わりに、法人税が非課税というのは、Jリートだけの大きなメリットです。が、同時にデメリットでもあると思うのは、筆者だけなのでしょうか?
 
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
 

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