つみたてNISAは投資初心者のために設けられた資産運用促進税制

配信日: 2020.12.09

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つみたてNISAは投資初心者のために設けられた資産運用促進税制
世の中にはいろいろな種類の所得税軽減制度がありますが、例えば、配偶者控除は結婚している夫婦を対象としていますし、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)はマイホームを購入した方を対象にしています。
 
そして、2018年1月からスタートしたつみたてNISAは積立投資を行う人向けの少額投資非課税制度です。
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

つみたてNISAの目的

つみたてNISAは、端的にいうと、個人で行う老後の資産形成を促すことを目的に創設されています。
 
非課税投資期間が最長20年間となっているため、必ずしも老後の資産形成だけを対象としているわけではありませんが、少子高齢化社会に伴う公的年金制度を補完することが想定され、今後さらに利用者数は増えていくことでしょう。
 

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つみたてNISAは投資初心者を想定している

つみたてNISAでもう1つ重要な目的は「資産運用を促進している」ことです。以前から国は「貯蓄から投資へ」のスローガンの下、幅広く多くの国民に投資を促すために税制改正を行ってきました。
 
しかしながら、投資を行う個人の裾野を思うように広げることができず、従来の証券税制といった発想からNISAという少額投資非課税制度を2014年1月にスタートさせ、「貯蓄から資産運用へ」とスローガンを変え、個人投資家の裾野を広げる取り組みに本腰を入れるようになりました。
 
しかし、一般NISAは、非課税投資額が年間120万円、非課税投資期間が最長5年間であるため、普段から投資を行っている人たちにとってはメリットが大きいものでしたが、これから投資を始めようという初心者にとっては、ある程度まとまったお金で投資をすれば非課税の恩恵が受けられるという内容であるため、そもそも投資のノウハウを身につけていなければ、やはりハードルが高い、自分とは別世界のものと受け止められたのかもしれません。
 
そこで出てきたのが2018年1月から始まった、つみたてNISAです。国としては、個人投資家の裾野を広げることが目的であるため、あるストーリーを打ち立てます。
 
それが「老後のための資産形成」という物語です。老後の生活資金を準備するための制度としてはすでに確定拠出年金制度がありましたが、これに加え、公的年金制度を補完するための選択肢の1つとして周知を呼びかけるようになりました。
 
そこで使われるようになったフレーズが「投資から資産形成へ」です。一般NISAの制度設計を幾分変更し、つみたてNISAでは長期投資を前提に初心者でも分かりやすい投資方法が提示されるようになり、損失を被る可能性のある資産運用という言葉を捨て、より安全な印象を与えやすい資産形成という言葉に衣替えするようになりました。
 
つみたてNISAの特徴は、「非課税投資額が年間40万円」であること、「非課税投資期間が最長20年間」であることです。
 
そして、これは「少ない金額で長く投資したら」一定の投資信託から得られる売却益や分配金に対して所得税をかけないという制度なので、初心者にとっては一般NISAのときに感じたハードルの高さが解消されたことでしょう。
 
そこで「積立投資」が推奨されるようになったわけですが、積立投資を補足するために使われた買付方法が「ドルコスト平均法」です。
 
ドルコスト平均法には投資信託を一定の金額で定期的に購入することで結果的に買付コストを平準化させる効果があります。つまり、長期間右肩上がりが続く相場ではその効果は大きいといえますが、逆に長い間右肩下がりが続く相場ではむしろ損失を拡大させ続けてしまうという危険性をはらんでいます。
 
こういった、日ごろから投資を行っている投資家にとって当たり前のことが初心者の耳には届かなくなっており、長所が大きくクローズアップされるようになりました。これで個人投資家の裾野を広げるための作業は完了です。自分でもできそうということで、今後も多くの個人投資家がつみたてNISAを通じて「資産形成」の世界に迷い込んでいくことでしょう。
 

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まとめ

つみたてNISAで絶対やってはいけないこととして、「途中でやめない」というのがまことしやかにいわれています。これは必ずしも間違いでありませんが、つみたてNISA自体、個人投資家の裾野を広げるための所得税制であるため、右も左も分からない初心者にとっては正しいアドバイスかもしれません。
 
なぜならば、投資初心者の場合、相場の状況を見ながら臨機応変にポジションを変えることができないからです。
 
投資経験の豊富な人は、途中でやめないようにしましょうといわれたら「何言ってんの?」と一瞬で喝破できると思いますが、つみたてNISAはあくまでも投資初心者を向いた制度であるため、ファンダメンタルズやテクニカルといった細かい運用ノウハウを説明したところで分からず、金融機関側からすれば、苦肉の策として、このようなアドバイスになっているのかもしれません。
 
時代は大きく変わりました。コロナショックからの回復を目的に、リーマンショックをはるかにしのぐ「超」が付くほどの大規模金融緩和政策が実施されています。ひょっとしたら相場はしばらくの間右肩上がりかもしれません。
 
そういう意味ではつみたてNISAは個人投資家にとっては非常に有効な資産形成をサポートしてくれる制度といえるでしょう。
 
ただ、長くて大きな上昇相場の後は深い調整に転じるのも相場です。本来なら、相場の状況を見ながら短期投資で臨機応変に売買ポジションを変え、それを継続していった結果が長期投資になるといえますが、この考え方は初心者にとっては難しいように思います。
 
投資は結局自己責任の世界です。何が重要かを自分で考え、それに基づき実践していかなければ、想定外の出来事に直面した場合、後悔することになります。つみたてNISAにおけるマネーリテラシーの磨き方は、国の思惑がどこに向かっているかを見つけ出すことです。
 
老後のために資産運用をやってみようというよりも、ここにポイントがあったということは実に面白いことのように思います。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)


 

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