人事として働いている友人が「若手の早期退職」を嘆いていました。「給料が原因かなあ」と言っていたのですが、実際のところどのような退職理由が多いのでしょうか?
配信日: 2024.12.21
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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若手社員が早期退職をする割合
厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」によると、新規学卒者が就職後3年以内に離職した割合は、高校が38.4%、短大卒が44.6%、大学が34.9%という結果でした。3割以上が3年以内に離職しています。
離職率の産業を産業別に見てみると、高校と大学では「宿泊業、飲食サービス業」が最も高く、6割近くが辞めています。その他は「生活関連サービス業、娯楽業」「教育、学習支援業」「小売業」「医療、福祉」などが多いようです。
若手社員の退職理由
せっかく入社した会社であっても、入社後に仕事の内容や待遇、人間関係などさまざまな要因により早期退職を選択しています。
独立行政法人の労働政策研究・研修機構が調査した「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ」で、「初めての正社員勤務先を離職した理由」のアンケートで2割以上が挙げたのは「肉体的・精神的に健康を損ねた」「賃金の条件が良くなかった」「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」でした。
主な原因は、入社前と入社後のミスマッチが原因であるといえます。一方、「希望する条件により合った仕事が他に見つかった」「キャリアアップするため」といった前向きな考えから転職をする若手社員も多いようです。
若手社員の給与が原因で退職する?
新入社員が会社で働き始めてから給料に対する現実と期待の差で不満を抱えるケースが多く、退職を検討するきっかけになるともいわれています。
「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ」の調査結果でも、入社1年未満の男性は「賃金の条件が良くなかったため」と回答した人は22.6%でしたが、1年超3年以内で28.5%、3年超5年未満で31.2%、5年超で32.4%へと増加しています。
実際に離職した人と勤続している人の給与比較を、表1にまとめました。
表1
男性 | 女性 | |||
---|---|---|---|---|
離職者 | 勤続者 | 離職者 | 勤続者 | |
1年以内 | 19万1000円 | 21万円 | 18万7000円 | 19万4000円 |
1年超~3年 | 22万3000円 | 22万3000円 | 20万1000円 | 20万4000円 |
3年超~5年 | 23万7000円 | 24万3000円 | 21万1000円 | 21万5000円 |
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ」をもとに筆者作成
離職した人は平均給与が低く、特に男性の場合は1年未満では差が大きいため、若手社員の意欲低下をより引き起こしてしまうのかもしれません。
若手社員の離職を防ぐ職場づくり
「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ」で行ったヒアリング調査によると、職場の問題も浮き彫りになりました。まず、採用担当者が伝えた内容と現場にはズレがあり、入社後にミスマッチが生じるケースが少なくありません。
全て現場任せの風潮やコミュニケーション不足、人材配置の不備、業務過多など、若手社員の採用や育成に会社の能力が備わっていないことも理由として挙げられました。
また、ライフワークバランスを重視する若手社員が増えてきているため、柔軟な働き方を取り入れることも求められます。
そこで、採用段階から配属後まで人事と現場が協働し、若手とベテラン、人事と現場など、定期的に面談を行うなど、コミュニケーションの活性化が不可欠です。人材配置や業務分担の適正化、成果主義の改善など労働条件や待遇の見直しも定期的に実施してください。
加えて、若手・ベテラン問わず、ルールやコンプライアンス研修を行い、上司自身のマネジメントスキルを伸ばすなど、若手社員が働き続けたいと思える職場づくりが求められています。
若手社員が辞める原因は給与だけではない
給与が低過ぎることが辞める原因にもなりますが、それよりもミスマッチや職場環境など会社の体制が離職に大きな影響があります。会社として、若者が定着する組織づくりを進めていきましょう。
出典
厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 調査シリーズ No.191 若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ(第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 資料シリーズ No.221 若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ(第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査 ヒアリング調査)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー