更新日: 2024.01.24 融資
中小企業におすすめの借入方法は?審査時間や利用方法、メリットも解説
「公的融資」は日本政策金融公庫や各自治体が提供している融資制度であり、金利が安く利用しやすい借入方法です。中小企業の経営者で各融資制度の申し込み対象であれば、低金利で、さらに制度によっては、無担保で融資を受けやすいことが特徴で、優先的に検討したい借入方法でもあります。
一方で、「民間融資」は、銀行や消費者金融が当てはまります。金利は公的融資よりも高めですが、最短即日融資可能な金融機関も多く、スピーディな手続きを求める方におすすめの借入方法です。
本記事では、中小企業におすすめの借入方法やそれぞれのメリットを詳しく紹介します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
- 1 中小企業の借入方法は公的融資と民間融資の2種類
- 2 中小企業の借入方法(1)国や自治体の公的融資
- 3 事業を始めたての中小企業なら「新創業融資制度」で借入
- 4 事業開始から約7年以内の中小企業なら「新規開業資金」で借入
- 5 廃業歴がある中小企業なら「再挑戦支援資金」で借入
- 6 金利の低さと審査の通りやすさで探している中小企業なら「一般貸付」で借入
- 7 中小企業の借入方法(2)銀行や消費者金融などの民間融資
- 8 銀行から直接融資を受けたい中小企業なら「プロパー融資」で借入
- 9 審査が心配な中小企業なら「保証付き融資」で借入
- 10 手続きのスムーズさを求める中小企業なら「ビジネスローン」で借入
- 11 「消費者金融カードローン」は金利が高め
- 12 中小企業の借入まとめ
中小企業の借入方法は公的融資と民間融資の2種類
中小企業が融資を受ける方法には公的融資と民間融資の2種類があります。公的融資は国や自治体などからの借入を指し、民間融資には銀行や消費者金融が借入先として挙げられます。
たとえば、公的融資の一つである「日本政策金融公庫」の融資制度は、中小企業以外にも国民生活事業や農林水産事業向けの借入などさまざまな分野の金融を担当しており、地域経済の活性化や中小企業のグローバル化を支援した取り組みをおこなっています。
民間融資でも、現在は都市銀行や地方銀行のみでなく「ノンバンク系のビジネスローン」も豊富で、中小企業向けの融資の選択肢が広がりました。
中小企業におすすめできる借入方法は企業それぞれの業績や必要な資金額によって異なるため、まずは主な借入方法の特徴をチェックしつつ、どの方法が適しているか1つずつ照らし合わせてみましょう。
中小企業の借入方法(1)国や自治体の公的融資
国や自治体の公的融資は、中小企業の経営を支援するためにさまざまな取り組みをおこなっています。
各地の自治体も地元で活躍する中小企業のために数多くの融資制度を提供していますが、日本政策金融公庫の提供する融資制度は全国の中小企業が利用できるため、借入を検討中の中小企業経営者は一度自身の業種が対象になるかチェックしてみましょう。
中小企業が公的融資で借り入れるメリット
公的融資は民間融資よりも金利が低い傾向にあり、無担保でも高額な融資を受けられる制度が多く用意されています。
特に、事業を立ち上げて間もないころは業歴もなく、銀行では希望額で融資を受けられないケースもありますが、公的融資であれば新しく事業を立ち上げる方向けの「新創業融資制度」や、事業開始から約7年以内であれば借りられる「新規開業資金」など創業してすぐにでも借りやすい制度が用意されています。
いずれも低金利、おおむね無担保で利用できることから、民間融資よりも費用をかけず利用できます。
中小企業が公的融資を利用する方法
公的融資を利用する方法は、各自治体や金融公庫が用意する融資制度によって異なります。
たとえば、中小企業が日本政策金融公庫で融資を受ける場合は、まず日本公庫各支店の窓口で融資相談をして、必要書類を提出したのちに審査に移ります。
申し込みの際には、「登記事項証明書」や「決算書」など複数の書類が必要ですが、相談のタイミングで融資の使い道や会社の業績が分かる書類を持ち込むと綿密な打ち合わせができ、必要な金額もスムーズにすり合わせができるでしょう。
審査により融資が決定してから貸付契約に移り、手続きの終了次第に指定口座へ送金となります。また、審査には日本政策金融公庫の職員や会社や事業計画予定地を確認に来ることもあります。
公的融資の審査時間
公的融資は、申し込む融資の種類や審査内容によって審査時間が大きく異なりますが、民間融資よりも審査期間が長く、3週間から1ヶ月程度かかるとされています。
民間融資であれば最短即日から1週間ほどで融資を受けられるケースが多いため、公的融資を利用する際は余裕をもって窓口へ相談しましょう。
事業を始めたての中小企業なら「新創業融資制度」で借入
「新創業融資制度」は、日本政策金融公庫が取り扱う中小企業向けの融資です。
新たに事業を始める方や、事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象であり、創業時において創業資金総額の10分の1以上を自己資金とする要件を満たした方が申し込みできます。
資金の使い道は「設備資金」や「運転資金」で、融資限度額は3000万円と高額の借入に対応した融資制度です。無担保かつ無保証人で申し込めて利率も1~3.5%と低いことから、資金繰りに迷ったらまずチェックしていただきたい融資制度でもあります。
また法人の場合代表者が連帯保証人となることで利率が0.1%低くなるため、より低い金利で融資を受けたい方にはおすすめです。
事業開始から約7年以内の中小企業なら「新規開業資金」で借入
「新規開業資金」はこれから事業を立ち上げる方と、事業開始から約7年以内の方が対象の融資制度です。
利率は日本政策金融公庫が定める基準利率ですが、女性の方や35歳未満、55歳以上の方が適用されるものや、地方で新たに事業を始める方など、申請者の属性や事業内容により利率が低くなることが大きな特徴です。
融資限度額は「7200万円」と高額で、使い道は新創業融資制度と同じく設備資金や運転資金に限られます。新創業融資制度よりも融資額が高額であり、制度対象の範囲が広いことから、設備の導入や事業拡大など多額な資金が必要になる際に利用しやすい借入方法の一つです。
また新規開業資金は上記の新創業融資制度との併用も可能で、より高額な融資を受けたい方には特におすすめの制度です。
廃業歴がある中小企業なら「再挑戦支援資金」で借入
「再挑戦支援資金」(再チャレンジ支援融資)とは、一度事業に失敗して廃業経歴のある中小企業経営者が受けられる融資で、これから事業を始める予定の方や事業を立ち上げて約7年以内の方が受けられます。
再挑戦支援資金も新規開業資金のように、女性や35歳未満、55歳以上の方は一定の融資金額まで基準利率より低めの特別利率が適用されます。融資限度額は直接貸付で「7億2000万円」と非常に高額な融資を受けられることが特徴です。
利用用途は設備資金や長期運転資金であり、建物更新にかかる一時的な施設賃借の費用にも利用できます。
設備資金は返済期間20年以内、運転資金は15年以内の返済であり、長期の貸し付けにも対応しています。
金利の低さと審査の通りやすさで探している中小企業なら「一般貸付」で借入
「一般貸付」はほとんどの中小企業が利用できる貸し付けであり、業種や内容によって左右される影響がほぼないことが特徴です。
運転資金と設備資金の融資限度額は4800万円、特定設備資金は7200万円であり、日本政策金融公庫が定める他の融資制度等を併用しない場合、基準利率が適用されます。
返済期間は運転資金であれば5年以内、設備資金は10年以内、特定設備資金は20年以内と、低い金利で長期間の貸し付けにも対応している点がメリットです。上記の新創業融資制度とも併用できて、「創業支援貸付利率特例制度」や「設備資金貸付利率特例制度」などを利用すると金利がさらに下がるため、利用できる制度はすべて活用しましょう。
また、飲食店やクリーニング業、旅館業などの方は「一般貸付(生活衛生貸付)」のほうが融資限度額も高く、業種によっては利率もさらに低くなるため、特定の業種の中小企業経営者はぜひご利用ください。
中小企業の借入方法(2)銀行や消費者金融などの民間融資
民間融資とは銀行や消費者金融など国・自治体以外の融資先を指します。
消費者金融は個人に貸し付けるイメージが強いですが、法人向けの事業融資を取り扱っている法人向けローンも多く、不動産担保や有価証券担保による高額な貸し付けも可能です。
従来銀行は中小企業の貸し付けに厳しく、事業計画を提出してもなかなか審査が通らず融資を受けられないといわれてきました。現在は都市銀行から地方銀行まで多くの金融機関が中小企業を受け入れるようになり、中小企業専用のローン商品も豊富に用意されています。
ノンバンク系の消費者金融でも個人事業主や中小企業向けのビジネスローンの種類が豊富で、手続きの迅速な対応から急いで融資を受けたい方から人気です。しかし民間融資は創業資金への利用が不可であることが多く、急な取り引きや給与支払いに際した融資を求めている方におすすめといえます。
銀行の中にもメガバンクや地方銀行など貸し付ける銀行により金利が大きく変動するため、希望の融資額や企業の規模を踏まえて契約する金融機関を検討しましょう。
中小企業が民間融資で借り入れるメリット
民間融資で借り入れるメリットは、公的融資よりも申し込みから審査、融資までのスピードが早い点です。
公的融資であれば申し込みから融資まで1ヶ月以上かかることも珍しくありませんが、民間融資の場合は1週間~3週間程度で融資を受けられて、早い企業だと「即日」で融資可能である消費者金融もあります。
振り込み手数料無料や無利息期間など独自のサービスを提供して差別化を図っている消費者金融も多く、数多くの提供先から選べて手続きがスムーズに進みやすい点は大きなメリットといえるでしょう。
しかし、銀行や消費者金融は金利が公的融資よりも高額であるため、日本政策金融公庫に自身が対象となる融資があればそちらの利用をおすすめします。
中小企業が民間融資を利用する方法
民間融資を利用するには、銀行であればインターネットから申し込むか直接店舗に赴き窓口で融資について相談します。店舗に行く場合は、事前に受けたい融資の商品名を控えて伝えることでスムーズに手続きが進みます。
インターネットで申し込む場合は24時間365日受け付けている民間融資も多く、なかなかまとまった時間が取れずに公的融資の窓口に行けない方にもおすすめです。
民間融資の審査時間
民間融資の審査時間は各金融機関によって大きく異なりますが、消費者金融であれば即日から3営業日程度、銀行であれば最短翌日で長くても1週間程度が目安の期間です。
カードローンやノンバンク系の消費者金融であれば即日審査を売り込んでいる金融機関も多く、スピーディーな手続きを求める場合はオンライン上で手続きが完結する融資をおすすめします。
銀行から直接融資を受けたい中小企業なら「プロパー融資」で借入
プロパー融資とは銀行から直接借入する方法です。
信用保証協会を通さないためシンプルな手続きで借入できることがメリットですが、保証がないことから銀行側が資金回収できないリスクが高まるため、審査では企業の信用力や成長性が問われます。
融資に限度額はなく、審査や面談において合理的な事業計画の提出や将来を見据えた経営の見通しが確認できれば、必要な額の融資を受けることが可能です。民間融資の中では金利も低めで信用保証料もかからず、公的融資のようになるべくコストを抑えられる融資制度といえるでしょう。
審査に通り融資を受けられたら、厳しいといわれているプロパー融資の審査が通った企業として信頼度も上がるため、事業計画や財務状況に問題ない場合は一度窓口で相談してみることをおすすめします。
審査が心配な中小企業なら「保証付き融資」で借入
保証付き融資とは、信用保証協会の保証を得て銀行から融資を受ける方法です。保証があるためプロパー融資よりも審査が通りやすい点がメリットですが、保証を受けるには信用保証料を支払う必要があり、費用がかかる点がデメリットです。
保証付き融資を受けるにはまず信用保証協会の審査を受ける必要があります。直接信用保証協会に申し込むことも可能ですが、金融機関の窓口で融資の申し込みとともに信用保証の申し込みもできます。
プロパー融資と保証付き融資のどちらを申し込んでよいか分からない場合は、普段利用している銀行の窓口に赴き一度相談してから決めることをおすすめします。
手続きのスムーズさを求める中小企業なら「ビジネスローン」で借入
ビジネスローンは、プロパー融資よりも手軽に銀行から融資を受けられるサービスです。条件を満たせば誰でも申し込み可能で手続きもスムーズですが、金利が高く設定されていることが特徴です。
現在は大手の銀行でも、個人事業主向けから中小企業向けまでさまざまな資金調達サービスを豊富に取り扱っています。たとえばメガバンクの一つである三菱UFJ銀行には、オンラインで資金が借入可能な「Biz LENDING」のサービスを提供しています。
すでに三菱UFJ銀行を利用している中小企業向けのサービスで、三菱UFJ銀行の入出金データを基に審査するため決算書の提出や面談も必要なく融資を受けられます。
法人口座を作成した金融機関でビジネスローンを取り扱っている場合は、入出金情報が審査において良好な状況であれば、低金利で融資を受けられる可能性もあります。
「消費者金融カードローン」は金利が高め
銀行が提供するカードローンは個人向けの商品が多い中、消費者金融では中小企業向けのカードローンも豊富に取り扱っています。
カードローンは限度額までの金額であればいつでもATMで借入できる点がメリットですが、一方で金利が高く長期的に利用すると費用がかかる点がデメリットです。
たとえば消費者金融でも大手のAGビジネスサポートが提供する「事業者向けビジネスローン」では、カードローンの金利が5~18%と高く、一見利用しにくい商品となっています。
しかし、保証料は必要なく、資金用途は事業資金の範囲内であれば自由かつ手続きはオンラインで完結するため、手続きは非常にスムーズで最短即日の融資も可能です。
中小企業の借入まとめ
中小企業が資金を借入する際は、日本政策金融公庫や各自治体が提供する公的融資と、銀行や消費者金融が提供する民間融資の2種類があります。
公的融資は申し込みから融資まで時間がかかりますが、原則保証人や担保も必要ないうえ金利も低いため、急を要する出費でない限りは民間融資よりもおすすめの方法です。
一方で、民間融資は金利は公的融資よりも高いものの、最短で即日融資が可能といった手続きのスムーズさは大きなメリットです。中小企業経営者の方はどの借入方法が一番事業に適しているか、1つずつ照らし合わせて検討してみてください。
出典
日本政策金融公庫 政策金融機関の業務の概要
日本政策金融公庫 中小企業の方
日本政策金融公庫 新創業融資制度
日本政策金融公庫 国民生活事業(主要利率一覧表)
日本政策金融公庫 新規開業資金
日本政策金融公庫 再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
日本政策金融公庫 一般貸付
三菱UFJ銀行 Biz LENDING
AGビジネスサポート 事業者向けビジネスローン
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー