更新日: 2024.02.06 融資

創業・開業資金に利用できるおすすめの借り入れ先は? 融資制度や借り入れ以外の融資も紹介

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

創業・開業資金に利用できるおすすめの借り入れ先は? 融資制度や借り入れ以外の融資も紹介
開業するためには初期費用や運転資金など、一定の自己資金が必要です。しかし自己資金のみでは経営後の資金繰りや運転資金が不足することも考えられるため、本当に資金が必要になった際に急いで借り入れることにならないよう、開業前に融資を受けることも検討しましょう。
 
特に、店舗を構える業種の場合は初期費用がかかりやすく、自己資金のみでは開業に至れないこともあります。
 
「融資制度」は国が提供するものから消費者金融のビジネスローンまでさまざまな種類がありますが、開業にあたって自己資金が足りない際は、国や自治体が提供する融資制度の利用をおすすめします。本記事では、開業資金が足りない際に利用できる「借り入れ先」を詳しく紹介いたします。
 
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創業・開業資金が足りない際は借り入れを利用しよう

これから開業する際に創業資金が足りない際は、あらかじめ国や自治体が提供する「公的融資」や銀行や消費者金融などの「民間融資」から資金を借り入れることをおすすめします。

初期費用が自己資金でまかなえても、いざ開業したのちに運転資金が足りず、借り入れが必要になることもあるでしょう。各制度の借り入れは開業後でも利用できますが、急に資金が必要になっても融資を受けられない可能性があるため、あらかじめ融資もスケジュールに組み込んで開業する方法がおすすめです。

ここからは開業時の借り入れ先におすすめな融資制度や借り入れ先を紹介いたします。

創業・開業資金に利用できる融資先1:日本政策金融公庫

「日本政策金融公庫」は、一般の金融機関がおこなう金融を補完することを目的とした政策金融機関です。主に、国民への支援や融資を行う国民生活事業から、中小企業向け事業や農林水産事業の金融を担っており、これから個人事業主や小規模事業者として開業する方は国民生活事業の融資制度が利用できます。

日本政策金融公庫の融資制度は金利が低いことが特徴で、条件に適合する方であればさらに金利が引き下がり、長期でも利用しやすい融資です。しかし融資の審査は申請書や収入の確認のみではなく、事業計画書を提出して面談を経ておこなわれるため、銀行や消費者金融のビジネスローンより手続きに時間がかかります。その分、審査に通ると希望の融資額を低い利率で借り入れられる点が大きなメリットです。

「個人事業」や「小規模企業」であればインターネットでの申し込みも24時間365日可能で、電子データによる申請も可能です。店舗に赴くまとまった時間が取れない方にも利用しやすい制度となっています。
ここからは日本政策金融公庫が提供する、開業時に利用しやすい借入制度を3種類紹介いたします。

日本政策金融公庫の融資制度1:新創業融資制度

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は制度名の通り、これから創業したい方の開業をサポートする融資制度です。対象者はこれから事業を始める方、もしくは事業開始後税務申告を2期終えていない方が当てはまります。

融資限度額は3000万円で、そのうち運転資金に利用できるのは1500万円までとなります。融資制度にはそれぞれに資金の利用先が定められており、日本政策金融公庫で融資を受ける際は融資した金額の使い道を明確にする必要があります。資金使途に記載されていない用途で資金を利用すると規約違反にあたり、全額の一括返金を命じられる可能性もあるため注意しましょう。

新創業融資制度の年利は2024年2月1日時点の基準利率である2.4%~3.6%が適用され、担保や保証人も原則不要であり、これから開業したい方なら誰にでも利用しやすい融資制度の1つです。

デメリットは自己資金の要件があることで、これから事業を始める場合、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が確認できる方に限られます。ただし、これから始める事業と同じ業種で働いたことのある方や創業塾や創業セミナーを受けた方は、自己資金の要件を満たすことになり、自己資金が捻出できなくても問題なく利用できる融資制度です。

日本政策金融公庫の融資制度2:新規開業資金

「新規開業資金」は、これから創業する方や事業開始後からおおむね7年以内の方が利用できる融資制度です。新創業融資制度と異なり自己資金の要件はなく、幅広い方が対象になる融資制度です。

融資限度額は7200万円と高額で、うち4800万円が運転資金となります。設備資金として利用する際は返済期間が20年、運転資金は7年と返済期間も長いため、無理のない返済を目指せる融資といえるでしょう。

年利は創業融資制度と同じく2024年2月1日時点の基準利率が適用されますが、創業塾や創業セミナーを受けている方や、地域おこし協力隊の任期を終了したのち当該地域で事業を始める方など特定の要件に当てはまる方はさらに金利が引き下がります。

新創業融資制度や担保を不要とする融資制度と併用することも可能であり、さらに高額な融資を希望する場合でも申し込み自体は可能です。

日本政策金融公庫の融資制度3:新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)

新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)は、上記の新規開業資金内の融資制度であり、女性や35歳未満もしくは55歳以上の男性がさらに低金利で利用できる特別枠です。融資金額は新規開業資金と同じく7200万円で、返済期間も設備資金が20年、運転資金が7年と同様です。

女性や35歳未満、55歳以上の男性であれば、一般的に年利は日本政策金融公庫が定める2024年2月1日時点の特別利率Aである1.7%~2.9%が適用されます。技術・ノウハウ等に新規性がみられる方はさらに利率が引き下げられることもあり、事業や申し込み者の属性により年利は異なります。

担保や保証人の有無に決まりはなく、個人ごとの面談で判断されるため、保証人がいない方でもまずは相談してみることをおすすめします。

創業・開業資金に利用できる融資先2:制度融資

「制度融資」とは、地方自治体と金融機関、そして各地方の信用保証協会が連携する融資制度です。融資制度には信用保証協会と金融機関が連携した「信用保証付き融資」もありますが、制度融資は信用保証付き融資に地方自治体が加わったイメージの融資です。

制度融資では地方自治体が融資を受けたい方のあっせん窓口となり、信用保証協会に支払うべき保証金や利子を補助します。制度融資の申し込み後に自治体の許可を得たら、金融機関へ融資の申し込みや信用保証の審査に移り、融資が受けられる流れになります。

個人が直接銀行に行って融資を受けようとするよりも、自治体の承認や信用保証協会の保証を得て金融機関に申し込めるため、審査に通りやすくなる点が大きなメリットです。個人事業の開業から中小企業の資金調達まで幅広く利用される方法の1つです。

制度融資の手続きの流れは各自治体により異なるため、まずは開業する地域で制度融資が用意されているかチェックしてみましょう。

制度融資で融資を受けるメリット

制度融資のメリットは、公的融資であるため日本政策金融公庫や各自治体の融資と同じように低金利かつ長期間の借り入れに対応している点です。融資上限額や融資期間は実施する自治体により大きく異なりますが、1年程度の借り入れプランもあれば、5年から15年程度の借り入れも用意されており、融資の目的により差があります。

たとえば新宿区中小企業向け制度融資では、区内に本店があり1年以上営業していることが条件で、小規模企業資金や経営応援資金の融資が受けられます。利率がいずれも固定金利1.8%以下と低い中、さらに区で金利を全額保証し、信用保証料も全額補助するプランもあるなど、金銭面では非常に利用しやすい制度融資といえるでしょう。

信用保証協会と提携しているため個人が銀行で融資を受けるより審査も通りやすく、自己資金が少ないという方でも利用しやすい制度です。

また、原則担保や保証人が不要である制度融資も多くあります。保証人がおらず審査が不安という方は、信用保証協会を利用した借り入れがおすすめといえるでしょう。

制度融資で融資を受けるデメリット

制度融資は地方自治体と金融機関、信用保証協会が三位一体となり手続きを進めるため、日本政策金融公庫や民間融資よりも手続きに時間がかかることがデメリットです。

信用保証協会に保証を依頼することから、日本政策金融公庫の融資制度と比較して保証料がプラスされることも懸念点ですが、保証料や金利は自治体の補助が加わるため、銀行と信用保証協会のみの信用保証付き融資よりも金銭面では優遇されています。実質制度融資の大きなデメリットは、面談が多いことや手続きに時間がかかることのみといえるでしょう。

創業・開業資金に利用できる融資先3:銀行や消費者金融などの民間企業

都市銀行や地方銀行、消費者金融などの民間企業が提供する融資制度は「民間融資」と呼ばれています。銀行など金融機関や民間の金融機関で融資を受ける場合は「プロパー融資」と、信用保証協会の保証を得る「保証付き融資」が主な2種類です。

プロパー融資は個人それぞれに必要な融資額を借り入れられて、金利も低く利用しやすいですが、創業したての企業やこれから創業する方は審査に通りにくい点が特徴です。保証付き融資は制度融資のように信用保証協会の保証のもと融資を受けられるため、審査自体はプロパー融資よりも通りやすいです。しかし銀行のみでなく保証協会との面談も必要なケースがあったり、保証料が追加でかかったりなど、手続きの手間と金銭的な負担がデメリットです。

銀行の融資や保証付き融資を利用する場合は事業計画書や個人のこれまでの経歴などの情報が必要ですが、銀行や消費者金融のビジネスローンは複雑な書類作成の手間なく手軽に融資を受けられるなど、借入先やプランそれぞれに特徴があります。まずは利用したい金融機関のメリットやデメリットをチェックしてみましょう。

民間企業から融資を受けるメリット

民間企業の融資は企業それぞれの基準で審査されるため、審査基準は明かされていないものの審査が厳しい企業から比較的やさしめな企業までさまざまです。審査に自信がない方は、プロパー融資や保証付き融資よりも手軽に申し込める消費者金融や銀行のビジネスローンも検討しましょう。

ビジネスローンであれば審査に面談が必要ない企業も多く、これから開業したい方や小規模事業者であれば決算書や事業計画書の提出も不要で審査を受けられます。ビジネスローンではなくカードローンであればさらに手続きもスピーディーであり、急ぎで資金調達が必要な方にはおすすめの方法といえます。

公的融資であれば事前に資金の使い道を面談で詳しく説明することもありますが、民間企業の融資は限度額以内で、資金使途に適した目的であればどのような物品に使用しても問題ない自由さも大きなメリットです。融資の審査申し込みに事業計画書が必要ない場合は、審査内容も開業後の経営の見通しより個人の収入や滞納歴を重視するため、個人の属性に傷が付いていなければ審査にも通りやすくなるでしょう。

1番早くて即日融資可能である民間企業もあるため、手続きのスムーズさや審査が厳しくないことを重視するのであれば民間企業の融資がおすすめです。

民間企業から融資を受けるデメリット

民間企業の融資は手続きがスムーズである一方、日本政策金融公庫や各自治体の融資と比較して、全体的に金利が高い傾向にあります。

日本政策金融公庫では2024年2月1日時点の新創業融資制度における基準利率は2.4%~3.6%が適用ですが、たとえばメガバンクの三菱UFJ銀行が提供する資金調達サービス「Biz LENDING」では金利は15%未満と定められており、金利の差が大きく目立ちます。

一方で申し込みから入金まで最短で2営業日という手続きのスムーズさは公的融資では実現できない早さであり、急を要する出費があれば非常に心強いサービスといえるでしょう。

銀行のプロパー融資や保証付き融資は民間企業の中でも比較的金利が低めであり、金銭面では利用しやすい制度であるため、民間企業の融資を受ける場合はまず金利の低さで銀行を選ぶこともおすすめの方法です。

借り入れ以外で創業・開業資金の融資を受ける方法

資金を借り入れる以外の方法で創業資金の融資を調達する方法は、自治体の補助金制度を利用したり、クラウドファンディングによる募集などが挙げられます。

知人や家族に資金を借りるのも利息がかからずよい方法ですが、創業資金はまとまった金額であるためなかなか借り入れの相談ができないという方も多いでしょう。ここからは補助金制度やクラウドファンディングについて詳しく紹介いたします。

借り入れ以外で創業・開業資金の融資を受ける方法1:国や自治体による返済義務のない補助金

補助金とは借り入れと異なり、返済義務のない融資です。国や都道府県のみでなく、各市区町村が補助金制度に取り組んでおり、さまざまな分野で活動する個人や中小企業の経営者を応援します。

たとえば国の補助金制度である「IT導入補助金」は、業務のデジタル化やセキュリティ対策強化のためにIT化を目指す企業に補助金が出る内容となっています。業務のデジタル化の場合は通常枠として、5万円以上450万円以下が補助される制度があります。補助率は2分の1で、高額なソフトウェアを購入する際には重宝する制度の1つです。

東京都中小企業振興公社がおこなう「創業助成金」では、これから都内で創業予定の方や創業5年未満の方を対象に、100万円~300万円が支給されます。助成対象には広告費や人件費、賃借料などさまざまな経費が含まれており、「対象となった経費の3分の2」が助成されます。

自治体によって内容が大きく異なるため、まずは開業する地域の自治体に補助金制度があるか確認してみましょう。

借り入れ以外で創業・開業資金の融資を受ける方法2:クラウドファンディングによる資金繰り

「クラウドファンディング」とは、インターネット上で出資者を募りアイディアを実現させるサービスを指します。出資が集まり実現できた暁には返金の必要がない代わりに、出資者には何かしらのリターンが必要となる制度です。

たとえば開業して商品開発のプロジェクトを実施したいのであれば、出資が集まり商品開発に成功し次第、一般販売前に出資者限定で商品を発送するなどが一般的な「購入型クラウドファンディング」に挙げられます。

一方で「寄付型クラウドファンディング」もあり、出資が集まった際にはプロジェクトの起案者が出資者にお礼のメッセージや活動報告を送るといった、物品で返さない内容となっています。

開業に際しクラウドファンディングで出資を募る場合は、寄付型よりも購入型のほうが出資が集まりやすいといえるでしょう。魅力的なアイディアを出すことで出資者の興味を惹き、目的額よりも高額な資金が集まる可能性もあるサービスです。

創業・開業資金が足りない状態で融資を受ける際の注意点

自己資金がない状態で開業資金の融資を受ける際には、次の点に気をつけましょう。

●一定の自己資金は用意する

●滞納履歴の確認

●開業する業種で勤めた経験の有無

3点について詳しく説明していきます。

創業・開業資金が足りない状態で融資を受ける際の注意点1:一定の自己資金は用意する

創業時に自己資金が足りない際、融資制度は心強いサポートとなりますが、すべて融資頼りで、自己資金が0円の場合、審査に通りにくくなります。

たとえば、日本政策金融公庫の新創業融資制度では創業資金の10分の1以上の自己資金があることが申し込み条件の1つです。その他の日本政策金融公庫を利用して融資を受ける際は、創業資金の10分の1以上の自己資金を目安にするとよいでしょう。

民間などの金融機関で融資を受ける際にも、なるべく自己資金のある状態で申し込むことで信用力が上がります。まだ資金が足りないという方は、ある程度、自己資金を貯めてから申し込むことをおすすめします。

創業・開業資金が足りない状態で融資を受ける際の注意点2:滞納履歴の確認

公的融資や民間融資を問わず、審査は過去の滞納歴や現在の支払い遅延などが大きく影響します。たとえば個人情報やクレジットカードの使用履歴が記録されている「CIC」では、クレジットカードの滞納は5年間保有されます。

過去の滞納歴は時間経過でのみ消えるため待つしか方法がありませんが、現在の滞納や税金の未納がない状態にしてから融資を申し込みましょう。

創業・開業資金が足りない状態で融資を受ける際の注意点3:開業する業種で勤めた経験の有無

日本政策金融公庫や自治体の融資で開業する場合、これまでに開業する業種と同じ業種で勤めた経験があるか問われることがあります。

経験や知識が備わっているか否かも審査対象になるため、これから独立して同業種で開業したい方は、退職せずにもう少し長く経験を積むことも選択肢の1つです。

創業・開業資金に利用できる融資先まとめ

開業資金の借入方法は、年利の低い日本政策金融公庫や各自治体の融資、返済義務のない補助金制度を利用する方法がおすすめです。公的融資は審査や手続きに時間がかかるため、余裕を持ったスケジュール管理を徹底して申し込みましょう。

どうしてもすぐに融資を受けたい場合は、銀行や消費者金融のビジネスローンも選択肢の1つです。年利は高くなりますが、最短で即日融資も可能な民間融資も多いため、自身のスケジュールや予算に適した借り入れ先を選ぶことが重要なポイントです。

出典

日本政策金融公庫 新創業融資制度
日本政策金融公庫 新規開業資金
日本政策金融公庫 新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)/ 女性、若者/シニア起業家支援資金
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執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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