更新日: 2024.10.10 貯金
お金を貯めたいと思うなら、マネーリテラシーを伸ばしましょう
金利には、短期金利と長期金利の2種類があります。景気が思うように回復せずデフレ経済が長引く中で、企業にとっても、家計にとっても運用環境が必ずしも良い状態が続いているとはいえません。
このような中、家計簿で余ったお金、つまり、純利益をどこに預ければいいかで、事実上、選択肢がないと思う方もいるかもしれません。ここで、「本当にそうなのか」と考えることが、マネーリテラシーを身につけるということです。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
普通預金と定期預金の金利の違い
普通預金の金利は、2020年3月時点で、大手都銀にしろ、地銀にしろ、大方、0.001%/年となっています。ネット銀行は0.005%/年、0.01%/年、0.02%/年と少し高い金利を設定している銀行もありますが、いずれにせよ、かなり低い水準といえます。
私たちのもっとも身近な金利が普通預金ですので、この適用金利を軸に貯蓄や運用について考えます。そして、普通預金の金利の低さに絶望し、他にもっと良い金利のものはないかと定期預金や積立定期などの金融商品を検討し始めます。
例えば、スーパー定期300万円未満の場合、2020年3月時点の金利は、5年物で、大手都銀や地銀の多くが0.01%/年となっています。ネット銀行では、0.02%/年、0.03%/年、0.2%/年、0.25%/年と少し高めに設定され、各銀行、預金者を増やそうと懸命に努力しているのが分かります。
これらを見るだけでも、普通預金より定期預金の金利が高いと分かりますが、このような違いは、おそらく、あまり一般的でないかもしれません。
本当は、金利が低い中でも、選ぶ金融機関によってはちゃんと預け先はあります。「他に預けるところがない」、「仕様がないからこのまま放っておこう」と思ってしまうのは、単純に、調べる努力をしていないからのように思います。
なぜ、金利が低いのか
もう1つ重要なのは、なぜ、こんなに金利が低いかです。理由を知ったところで自分の預金の金利が上がるわけではないので、無駄な知識かもしれません。しかし、金利が決まる仕組みを理解しておくと、日常生活のみならず、企業活動を行ううえでも損はありません。
金利は、企業にとっては資金調達をするうえでの指標です。企業が資金調達をする場合、その方法は大きく分けて2つあります。1つは市場から直接資金調達する方法、もう1つは銀行などの金融機関から借り入れる方法です。前者を直接金融、後者を間接金融といいます。
直接金融の代表的な例は、株式の発行です。企業が株式を発行し、投資家に売却することで、企業は投資家、つまり、マーケットから資金を調達します。
一方、間接金融では、銀行などの金融機関がマーケットを仲介して調達した資金を企業に貸し付けます。企業が銀行などの金融機関から借りる金利は、原則、間接金融の中で各銀行が決めていきます。このとき、銀行などの金融機関にとっては利ザヤが必要です。
企業にお金を貸しても利益が出ないなら、銀行はお金を貸そうとはしません。銀行が企業に貸し出す金利よりも、銀行が貸出資金を調達するときの金利の方が高くなければ、利益は生まれません。つまり、銀行は、貸付金利>調達金利の2つの金利を見ながら金融業務を行っています。
少し話が難しくなってきたので、身近な例で説明すると、銀行は住宅ローンなどの貸し出しを行う際、預金者に適用している金利よりも高い金利でお金を貸します。
預金者からお金を預かり、借り手にお金を貸す。銀行では、預金金利(調達金利)<貸付金利という関係が存在しているということです。金利が低い状況が続いているのは、銀行の設定する貸付金利が低いからですが、この理由は景気が悪いからです。
景気が悪いと企業はお金を借りようとしません。お金を借りる企業が少ないと、銀行としては困ってしまいます。お金を借りてもらおうと、銀行は金利を低く設定します。この結果、普通預金などの預金金利も下げざるを得なくなるという仕組みです。
金利については、もう少し深堀しなければ理解したとはいえませんが、表面的にはこのような理解でいいかもしれません。これを理解しているだけで、景気が悪くなると金利は下がり、景気が良くなると金利は上がると判断できるようになります。
まとめ
お金を預けようにも金利が低すぎる、なぜ金利が低いのかが分かりました。景気が悪いから金利が低く、金利が低いからお金を預けようにも預け先がないということです。
では、安全資産では、他にどのような預け先があるのでしょうか。これを知ることもマネーリテラシーを身につけるうえでとても重要です。
安全資産は、単純にリスクのない金融商品と考えてみてください。別の言葉でいうと、元本割れのしない金融商品です。代表的な例としては、普通預金や定期預金、積立定期などの預貯金が挙げられます。
他を探ると、例えば、子どもの進学資金を準備するための学資保険や老後の生活資金を準備するための個人年金保険がメジャーではないでしょうか。
また、貯蓄性のある保険も、ある意味、安全資産と呼べます。多少リスクはありますが、個人向け国債も比較的安全な資産に分類することができます。
厳密にいうと、それぞれの金融商品で元本割れしてしまうことはあるため、100%安全だとはいえませんが、これらは、おおよそ、安全資産に分類されます。ここまで知って始めて、それぞれの金融商品がどのような仕組みになっているのかを理解するステージに立つことができます。
世の中にはお金のことを簡単に知りたいという風潮がありますが、そもそも、金融システムが複雑化し、それにともない法律や制度が改変される中、簡単なわけがありません。お金を本当に貯めたいと思うなら、情報を集め、順序立てて理解し、リテラシーを育てていく努力をするようにしましょう。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)