更新日: 2024.10.10 その他暮らし

ひとり親の子育て、経済状況は改善?悪化?「全国ひとり親世帯調査」を見る

ひとり親の子育て、経済状況は改善?悪化?「全国ひとり親世帯調査」を見る
厚生労働省は平成29年12月15日、「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」の結果を公表しました。この調査は、おおむね5年に1度行われており、前回は、平成23年に行われました。現在の政府の政策により、失業率は大幅に改善され、子どもの貧困率も、12年時点の16.3%から15年時点で13.9%と、こちらも大幅に改善されています。ひとり親家庭の状況は前回調査に比べてどのくらい改善されているでしょうか。
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

平成28年度全国ひとり親世帯等調査の概要

平成28年度は、平成28年11月1日時点について調査し、4,450調査区のうち、3,293の母子世帯、653の父子世帯、60の養育者世帯を調査客体として実施し、2,060の母子世帯、405の父子世帯、45の養育者世帯から有効回答を得て集計したものです。
 
調査の結果、世帯数(推計値)は、母子家庭が123万2千世帯(123万8千世帯)、父子世帯が18万7千世帯(22万3千世帯)となっています。(  )内の値は、前回(平成23年度)の調査結果を表しています。以下、同様です。母子世帯になった理由は、「死別」が8.0%(7.5%)、離婚などの「生別」が91.1%(92.5%)です。父子世帯になった理由は、「死別」が19.0%(16.8%)、「生別」が80.0%(83.2%)となっています。
 
母子世帯の就業状況は81.8%(80.8%)、父子世帯では85.4%(91.3%)となっています。内訳をみると、母子世帯の44.2%(39.4%)が正規の職員・従業員、43.8%(47.4%)がパート・アルバイト等です。父子世帯では、68.2%(67.2%)が正規の職員・従業員、6.4%(8.0%)がパート・アルバイト等です。
 
母子世帯の母自身の平均年間収入は243万円(223万円)で、母自身の平均年間就労収入は200万円(181万円)、世帯の平均年間収入(同居親族を含む世帯全員の収入)は348万円(291万円)となっています。世帯の平均年間収入(348万円)は、国民生活基礎調査による児童のいる世帯の平均所得を100として比較すると、49.2(44.2)となります。
 
一方、父子世帯の父自身の平均年間収入は420万円(380万円)で、父自身の平均年間就労収入は398万円(360万円)、世帯の平均年間収入(同居親族を含む世帯全員の収入)は573万円(同455万円)となっています。世帯の平均年間収入(573万円)は、国民生活基礎調査による児童のいる世帯の平均所得を100として比較すると、81.0(69.1)となっています。
 


 
養育費の取決め状況に関して、母子世帯で42.9%(37.7%)、父子世帯で20.8%(17.7%)が取決めをしています。離婚した父親からの養育費の受給状況は、「現在も受けている」が24.3 %(19.7 %)で、平均月額(養育費の額が決まっている世帯)は 43,707 円となっています。一方、離婚した母親からは、「現在も受けている」が3.2 %( 4.1 %)で、平均月額(同)は 32,550 円となっています。
 
子どもの最終進学目標については、「大学・大学院」とする親は、母子世帯で 46.1 %(38.5 %)、父子世帯で41.4 %(35.5 %)となっています。
 

前回の調査と比較して

ひとり親世帯の大半が母子世帯ですので、母子世帯を中心にみていきます。前回の調査に比べ、母子世帯の就業状況が大きく改善されています。正規の職員・従業員の割合が増加し、年間就労収入も10%以上増加しています。それでも200万円にとどまっています。母子世帯の収入の柱である養育費については、取決め率、受給率とも増加しています。
 
経済状況の改善が、子どもの最終進学目標を「大学・大学院」とする母子世帯が38.5%から46.1%へと大幅に増えている理由ではないでしょうか。
 
このように現在の政府の政策が母子世帯の雇用環境を大きく改善しているといえます。ひとり世帯には、児童扶養手当や自立支援給付金、医療費助成などさまざまな福祉的な支援制度があります。この背景には、ひとり親は育児と仕事の両立が難しいため、正社員ではなくパートやアルバイトといった働き方を選択せざるをえず、低所得にならざるを得ないといった点があります。
 
この点は依然として大きくは改善されていません。また、男女の賃金格差もあるので、特に、母子世帯は経済的に厳しい状況にあります。
したがって、福祉的な支援は今後も必要ですが、限界があります。経済成長により、収入を押し上げるというマクロ政策も大切です。
 
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。
http://fp-trc.com/

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