キャリアウーマン VS 専業主婦 女性の働き方とお金の関係
配信日: 2018.01.24 更新日: 2024.10.10
ところが実際は、日本の就業者数は増え続けているそうです。その理由は、女性やシニアのおかげといえるようですが、結婚した女性にとっては、共働きをし続けるか、専業主婦になるかを悩む場面はきっと沢山あるでしょう。今回は、そんなときに役立つポイントをお教えしましょう。
Text:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
年収とともに子どもにかける費用の負担は膨れ上がる
子どもが生まれたとき、いったん専業主婦になることを考える人は多いでしょう。
その後、子どもの成長につれて、少しでも収入を増やそうと仕事を再開するときに、収入が上がると安易に考えると大変な目にあいます。国の教育ローンを取り扱っている、日本政策金融公庫がリリースしたニュースによると、高校入学から大学卒業までに必要な入在学費用は、子ども1人当たり975万円(前年調査899.4万円)。特に、世帯年収が上がるにつれて、子どもにかける費用も上がっていくのが特徴です。
例えば、国公立高校に通う子どもがいる世帯の平均年収は717.9万円。一方、私立高校に通う子どもがいる世帯の平均年収は898.7万円となっています。
共働きとなると、確かに世帯年収は上がりますが、それに伴う費用も当然上昇しているということです。収入の増加とともに支出をコントロールできなければ、年収の増加はしたものの、手元には、思ったよりもお金が残らないこともありえるのです。
2階建ての年金は長生きすると効いてくる
共働きか専業主婦かを考えるときに、将来の年金額が変わってくるということも覚えておくべきでしょう。
専業主婦でいる間は、年金制度では「第3号被保険者」となり、国民年金の保険料を支払わずに、国民年金の加入期間に算入されますから、まず専業主婦になってお得な「社会保険料を負担しなくてよい」という目先の利益をとる人も多いかと思います。平成29年度の1カ月当たりの国民年金保険料は1万6490円。子どもが生まれてから小学校卒業までを、専業主婦であることを想定すると、保険料の合計額は237万4560円。(注1)
一方、この間、妻が報酬26万円のフルタイム勤務としましょう。あくまでも試算ですが、年間20万5208円が国民年金額に加算されます。(注2)
65歳から老齢厚生年金が支給されるとして、12年ほど度長生きすると、節約できた国民年金保険料程度の年金額が増えている計算となります。子育てしている最中には、老後の資金は、子育てが一段落したら準備しようと考えている人も多いでしょうが、晩婚化や高齢出産の増加により、老後資金の準備が難しくなってきています。
「老後破産」という言葉も浸透してきているくらいです。2階建ての年金が受け取れると、「長生きすればするほど受取金額に効果がある」といえるでしょう。
注1:国民年金保険料は1万6490円だが、物価などによって毎年の保険料額は変更されるので、あくまでも平成29年度の年金額を12年に単純にかけた試算。
注2:老齢厚生年金の年金額の計算は、平均標準報酬額×5.481/1000×月数となるが、今回は平均でなく、その時点での12年加入した場合の簡易計算。
そのほかの違いで考えておくこと
専業主婦である妻がいる場合に、「家族手当」として手当がつく会社もあるでしょう。また、扶養している配偶者がいると、配偶者控除として38万円が控除できるなど、まだまだ日本の社会では、「夫と扶養される妻がいる家族」を想定している優遇制度があります。
ただ、平成30年分以後、控除を受ける本人の所得金額によってこの額が減る予定です。所得が950万円超1000万円以下であれば、この配偶者控除は13万円になるということですから、将来的には専業主婦であることのメリットが減っていくことも予想されます。
共働きで、どちらにも収入があると、それぞれ控除が使える可能性があります。前回の年末調整後の確定申告でもお話しましたが、例えば、税率が高い人の申告で医療費控除ができたり、それぞれで個人型確定拠出年金の保険料を控除できたり、生命保険にも夫婦で加入して保険料を払うことで、生命保険料控除の枠が利用できます。
税金面ではどうしても「払わずに済む方法」を考えがちですが、収入が2つあることで、「差し引けるものがある」と考えるような頭の切り替えも必要かもしれません。
専業主婦か共働きかで迷うとき、単純に「収入が増える」というわけではありません。世帯年収の増加によって、子どもの進学先、補助学習費、学校外の習い事が増えるというデータも多くありますし、FP相談をさせていただいたご家庭でも、年収の高さと貯蓄率には関連がないという実感があります。
女性が働くか専業主婦になるかということは、目の前の利益ばかりでなく、将来を見越したライフプランを考慮する必要があるのです。
Text:當舎 緑(とうしゃ・みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP