更新日: 2024.10.10 働き方
未払残業代に税金はかかるの?
では、過去分まで一括して受け取った場合や、既に年末調整が済んでいる場合にはどうなるのでしょうか。
今回は、未払残業代にかかる税金について詳しく解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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未払残業代とは
従業員が労働基準法32条1項、2項に定められている法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超過して働いた場合には、会社は残業代を支払う義務があります。
しかし、「サービス残業」というワードが知られているように、残業しても残業代が支払われない会社も数多く存在しています。いわゆるブラック企業です。未払残業代とは、この支払われていない残業代のことをいいます。
未払残業代は過去2年分請求できる
残業代の受け取りは労働者に認められている権利であり、未払残業代がある場合には会社に支払いを請求することができます。
ただし、請求できるのは過去2年分です。2年を超えた分から時効になっていくため注意しましょう。
未払残業代は所得税と住民税の対象
残業代は給与と同様に労働の対価として支払われるお金であり、所得税と住民税がかかっています。
未払残業代は、残業代のうち未払となっていた金額について、単に後日支払いを受けたというだけのものです。よって、その性格は給与にほかならず、所得税と住民税の対象になります。
未払残業代への課税を受ける方法
会社員は基本的に年末調整があるため、納税に関してノータッチの人も多いでしょう。未払残業代は所得税と住民税の対象になることは分かりましたが、ではどのように課税を受けたらよいのでしょうか。
同一年中に受け取った場合は年末調整
年末調整は毎年1月1日~12月31日までの給与に対して行われます。よって、未払残業代の発生と受け取りが同一年中の場合には、年末調整で課税が完了することになります。
例えば、4月1日~6月30日までに発生した未払残業代を、同一年の12月に受け取った場合などです。
過去分を年をまたいで受け取った場合は確定申告
未払残業代は、本来であれば給与の各支給日において残業代として受け取るべきだったものです。よって、過去分を後日に一括で受け取った場合であっても、課税されるタイミングは本来の支給日になります。
例えば、令和3年分の未払残業代を令和4年中に受け取った場合には、令和4年分の年末調整に含めることはできません。しかし、令和3年分の年末調整は既に完了しているため、納税者は令和3年分の確定申告を行うことで課税を受けなければなりません。
和解金として受け取った場合は確定申告
未払残業代の請求をした場合、請求金額に相当する和解金が支払われる形で解決することがあります。和解金は労働の対価ではないため給与には該当しません。その代わり、一時所得として課税を受けなければなりません。
一時所得は年末調整に含めることはできないため、確定申告が必要です。ただし、一時所得には50万円の特別控除が設けられているため、和解金が50万円以下であれば所得税はかからないということであり、確定申告は不要です。
未払残業代の課税に関するポイント
最後に、未払残業代にかかる税金についてのポイントを解説します。
退職金として受け取っても一時所得で確定申告を
未払残業代の請求は退職時に行われることが多いため、会社は未払残業代を退職金として支払うことがあります。
労働者側としては、未払残業代を受け取ることができればそれで良いと考えるかもしれませんが、退職金は給与所得や一時所得よりも所得税が優遇されている点に注意しなければなりません。本来支払うべき所得税を支払っていないということになるのです。未払残業代が退職金の名目で支払われた場合には、一時所得として確定申告を行いましょう。
未払残業代と和解金・退職金では税負担が違う
未払残業代は給与であるため給与所得控除が適用されます。和解金や退職金の一時所得よりも税負担が軽くなっているため、和解金が特別控除50万円を超える場合には未払残業代として支払われた方が有利になります。
住民税に関しては何もしなくて良い
未払残業代には所得税と住民税がかかりますが、年末調整または確定申告をすることで、住民税に関しての対応も自動的に完了する仕組みになっています。別途、市区町村へ手続きを行う必要はありません。
まとめ
未払残業代には所得税と住民税がかかります。支払いを受けたタイミングによって、年末調整で済むのか、確定申告をしなければならないのかに分かれることになります。
また、支払の名目によっては、未払残業代として受け取るよりも税負担が大きくなる場合があります。会社から解決金や退職金として支払うと言われた場合には、弁護士や税理士への相談を検討しましょう。
出典
国税庁 過去に遡及して残業手当を支払った場合
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部