残業申請をしたら残業し放題というわけではない? 36協定を締結している企業での「残業」とは?
配信日: 2022.10.30 更新日: 2024.10.10
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
36協定とは
36協定とは、法律で定められた労働時間を超えて労働者を働かせる場合に、労使間での締結と所轄の労働基準監督署への届け出が必要となる労使協定です。
労働基準法では、原則として1日8時間、週40時間以内で法定労働時間が定められていますが、それを超えて時間外労働(残業)や休日労働をさせるためには36協定が必要とされています。
36協定が定める時間外労働には上限がある
36協定を結べば、企業は社員にいくらでも残業させていいというわけではありません。36協定では、時間外労働について月45時間、年間で360時間という上限(限度時間)が設けられているからです。
ただし、臨時的な特別の事情があり、労使間で合意する特別条項付きの36協定を届け出ている場合であれば、月45時間の上限を超えてもいいとされています。その場合でも、時間外労働は年間の合計で720時間以内とする必要があります。
さらに、月45時間を超える時間外労働は年間6ヶ月までが限度となり、休日労働を含めた合計では月100時間未満、2ヶ月から6ヶ月間での平均の残業時間を80時間以内とする必要があるなど、青天井で残業が認められているわけではありません。
社員は残業申請をすれば残業し放題ではない
前述したとおり、労使間で36協定を締結している場合でも、残業ができるのは原則、月45時間・年間360時間という上限の範囲内となり、働く側の社員が残業を希望したとしても、その点に変わりはありません。
また、36協定は労働者に自由に残業する権利を与えるものでもありません。企業は緊急性がない業務のための残業や、故意に進捗を遅らせて残業を行う、あるいは業務がないのにオフィスに居残るような、いわゆる生活残業について禁止することができます。
そのため、社員が残業の申請をしたとしても、企業が必要性はないと判断すれば、残業を認めてもらえない可能性があります。
36協定があれば残業代は発生しない?
36協定は、いわば企業と社員との間で時間外労働(残業)の存在を認める協定になります。それ故、「36協定があれば残業代は発生しない」と勘違いされるケースもありますが、それは間違いです。
労使間で36協定を結んでいても当然、残業代は発生します。36協定はあくまでも上限内で時間外労働をしてもいいという協定で、36協定で定めた時間内であれば残業代は発生しないというものではありません。
労働環境を適切なものとするため、労使ともに36協定について正しく理解を
36協定を結べば、企業は社員を好きなだけ残業させていいというわけではなく、時間外労働には原則月45時間、年360時間という上限があります。社員も同様に限度時間の規制がかかるため、申請すれば自由に残業できるわけではありません。
労働環境をよりよいものとするためにも、労使ともに残業と36協定について正しく理解しておくことが必要でしょう。
出典
厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説
執筆者:柘植輝
行政書士