残業代は「年末調整の還付金」に影響するの?
配信日: 2022.11.18 更新日: 2024.10.10
そこで本記事では、残業代が年末調整に与える影響について解説していきます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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そもそも年末調整とは
「年末調整」とは、毎年1月1日から12月31日までに支払われた給与にかかる所得税を精算する手続きです。
給与からは毎月、「源泉所得税」が天引きされていますが、これは概算の金額になります。そのため、年末調整で各人の状況に応じた正式な所得税を計算し、源泉所得税の1年間の累計額との過不足を毎年12月に精算するのです。
年末調整は基本的に還付になる
年末調整は所得税の過不足を精算するものであり、追徴が発生する場合もありますが、ほとんどの人が還付になります。これは、源泉所得税の金額が高めに設定されているためです。
残業代は年末調整の還付金に影響しない
月々の給与から天引きされる源泉所得税は、その月の残業代を含んだ給与から社会保険料等の金額を控除した残額を基に、国税庁の源泉徴収税額表から算出されています。
例えば、社会保険料等控除後の給与額が25万円、扶養家族は0人である場合、次の表の「24万8000円以上25万1000円未満」、「扶養親族等の数0人」の欄にある「6530円」が源泉所得税の金額ということになります。
【図表1】
国税庁 令和4年分 源泉徴収税額表 より
つまり、残業代は月々に発生した都度、それを考慮した源泉所得税が給与から天引きされているということになるため、年末調整の還付金を減らす直接の原因にはなりません。
未払い残業代を受け取った場合には要注意
会社へ「未払い残業代」を請求し、受け取ることができた場合には、年末調整の還付金が減る可能性があるため注意しましょう。
未払い残業代は通常の残業代と同様に所得税の対象になります。4月の未払い残業代が10月の給与と一緒に支払われたなど、年末調整前に源泉所得税が天引きされて支払われた場合には問題ありませんが、12月の年末調整時に支払われる場合には、源泉所得税が天引きされていない分、還付金が減ることになります。
未払い残業代の金額によっては、源泉所得税の累計額を超える所得税となり、追徴になる可能性もあります。
残業し過ぎると手取りが減るのは社会保険の話
「4~6月に残業をし過ぎると手取りが減る」という話を聞いたことがあるでしょうか? これは「社会保険の算定基礎届」が関係しています。
算定基礎届とは、社会保険料を算定する際の基になる標準報酬月額を決定するために、会社が各従業員の毎年4~6月の給与を年金事務所に届け出る手続きのことです。つまり、4~6月に残業をして給与を増やしてしまうと、それを基に算出される「標準報酬月額」が残業代の分上がるため社会保険料が上がり、手取りが減ってしまう、という流れになります。
「残業をし過ぎると年末調整に影響する」という不安は、この話と混同されているのでしょう。
まとめ
源泉所得税は月々の残業代も考慮した上で天引きされていることから、「残業をし過ぎたから年末調整の還付金が減る」ということはありません。
ただし、未払い残業代の場合には、受け取るタイミングによって年末調整の還付金に影響する可能性があります。
出典
国税庁 給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)
国税庁 令和4年分 源泉徴収税額表
日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部