改めて知りたい幼児教育無償化とは?
配信日: 2018.05.25 更新日: 2024.10.10
具体的には何がどう決まっているのでしょうか?日米で公認会計士の資格を持つ森井じゅんさんに詳しくお聞きしました。
執筆者:マネラボ(まねらぼ)
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目次
幼児教育に関する現在の制度というのは?
実際、幼児教育に関する費用については、現在様々な変更の過渡期であり、非常に複雑です。2012年8月に子ども・子育て関連3法が成立し、2015年4月から「子ども・子育て支援新制度」が全国的にスタートしています。
こうした制度により、これまでの保育所や幼稚園といった教育・保育施設に加え、小規模保育や事業所内保育といった地域型の施設も新設されました。
そもそも、幼児教育とひとことで言っても、その施設は、私立幼稚園、私立認定こども園、公立幼稚園、認可保育園、認可外保育園、自宅保育など様々です。
そうした多様な施設が認められる一方、既存の施設も変わりつつあります。幼稚園の制度や料金体系の変更や保育料の引き下げ等様々な変更があり、自治体によっても対応が様々です。
自治体によっては現行制度の私立幼稚園に通う児童のいる家庭に補助金を出していたり、独自に段階的な無償化を進めていたりするところもあります。
いずれにしても、幼児教育や保育にかかる費用は、子どもを預ける施設の種類、家庭の所得、保育が必要か否か、子供の数、また、お住まいの自治体により大きく変わってきます。
詳しくは、現在子どもが通園している園やご興味のある園がどういった施設に該当するのか、自治体の補助金はどうなっているのかしっかり確認してください。
話題の「幼児教育無償化」とは?
幼児教育無償化は、先の衆院選での自民党・公明党の政権公約であり、その名のとおり、幼児教育を無償に!という政策です。具体的には、就学時前児童の教育・および保育の無償化、または、負担軽減を中心とした制度です。
2019年10月に予定している消費税率10%への引き上げによる増収分を財源にすると考えられており、基本的には2020年4月実施予定です。
幼児教育、保育に関しては、3~5歳児は親の所得を問わず原則無償化する、としています。5歳児の無償化については、2019年4月から先行実施の予定です。
一方、0~2歳児は住民税非課税世帯を対象に無償化する予定です。住民税非課税世帯とは、年収250万未満の世帯が目安です。
子どもの生まれた年によって対象になる期間が変わるのでしょうか?
上でお話したように、幼児教育無償化は2020年4月からのスタートを目指しています。
つまり、2020年4月に3歳児、いわゆる年少さんになる子どもは、この制度を3歳から5歳の3年間最大限利用できます。言い換えれば、2016年4月から2017年3月までに生まれた、2016年度生まれの子どもから、3年間の幼稚園・保育園が無償となる予定です。
2015年度生まれの子どもは、年中さん・年長さんの2年間無償、2014年度生まれ・2013年度生まれはともに年長さんの1年が無償になります。
実質どれくらいお得になるのでしょうか?
3歳から5歳が無償、と言っても、すべてが無償になるわけではありません。
例えば、私立幼稚園では授業料に大きな開きがあります。そこで、3歳から5歳の私立幼稚園に通う子どもを持つ家庭には、公定価格である月額2万5700円を上限に補助金が支給されます。
つまり、無償化になっても、幼稚園の利用者負担額によっては自己負担額が変わってくることになります。
例えば、私立幼稚園に園児が一人通っているケースで、これまでと幼稚園の授業料等が変わらないと想定した場合、どれくらい支給されるのか考えてみましょう。
園児一人当たり、月に2万5700円、一年で30万8400円、年少から年長まで3年間で92万5200円です。子育て世代にとっては小さくない支給額になりそうです。
幼児教育無償化に関して注意すべきポイントはありますか?
まずは、幼児教育無償化の対象になるかどうかをしっかり確認する必要があります。ざっくり言えば、無償化の対象は、0~2歳児までの低所得世帯と3~5歳児の全世帯です。
認可保育園等であれば完全な費用軽減である一方、私立幼稚園では公定価格分の支給となります。
では、認可外保育園等はどうなるのでしょうか?認可保育園がいっぱいで入園できないケースでは、認可外保育園を利用することが多くなっている一方で、認可外保育施設の費用負担が重荷となっている家庭が多いのが現状です。
認可保育園を希望していて入園できず、無償化の恩恵も享受できないのは不公平という声もあり、認可外保育園の扱いについては議論が行われてきました。
認可外保育園は、他の施設と異なり、費用も様々です。認可園よりも長時間の保育があったり月10万円以上といった施設もあったりします。
またこうした幼児教育無償化について反対意見もあります。例えば、保育園・幼稚園が無償になることで、保育園に預けようと考える家庭が増加し、待機児童が増えてしまうのではないかという懸念です。
現在すでに人材不足が深刻となっている保育の分野に、どのように人材を増やしていくのかといった課題もあります。一度に受け皿を広げたところで、幼児教育や保育の質の確保といった問題点もあります。
そういった声に対し、政府は、幼児教育無償化の政策の中に保育環境の整備や人材確保を目指す施策も盛り込んでいますが、課題はまだまだクリアになったとは言えない状況です。
いずれにしても、幼児教育無償化自体に賛否両論あります。また、消費税の増税やその時期によっては財源の問題も出てきます。
今後どうなっていくかまだはっきりとは分かりませんが、今後の議論や政策方針をしっかり見守っていく必要があります。
TEXT:マネラボ お金と投資の知っトク研究所
森井じゅん(もりい じゅん)
公認会計士/米国ワシントン州公認会計士/税理士/FP。