更新日: 2024.10.10 ライフプラン
「年金よりも投資した方がまし。」若者が年金よりも投資を好む理由とは?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
若者が年金に不信感を抱く理由
若者が、年金よりも投資の方が……と考えてしまうのには理由があります。その理由の一つが年金制度への不信感でしょう。
年金制度は近年、受給開始年齢が65歳へ後ろ倒しとなったり、繰下げ受給の上限が75歳まで引き上げられたりするなど、大きな制度変更がありました。雇用の面でも、65歳までの雇用確保が義務付けられ社会的には定年が65歳となった上、70歳までの雇用確保が努力義務となるなど、国は少しでも長く国民を働かせようと画策しているようにも感じられます。
そういった国の動きから、自分たちが年金をもらえるのは70歳以降になるのではないか、そもそももらえないのではないか、と若者が年金に不信感を抱いてもおかしくはありません。
年金の財政状況も良好とはいえない
年金について、国はしきりに崩壊していない、今後も維持されていくとはいっているものの、日本は確実に少子高齢化が進んでおり、年金の支え手である若者が減る一方で年金を受ける老人は増え続けています。
また、年金の給付額は物価や税などの上昇に追い付いておらず、今や年金だけでは生活できないともいわれています。さらに追い打ちをかけるように、2019年の財政検証では、所得代替率(受け取る年金額が現役世代の手取り収入額に対してどれくらいの割合となるのかを示すもの)が今後50%を切る可能性も示唆されています。
年金自体は決して悪い制度ではないものの、若者の目に留まりやすい上記の状況などから、近年における年金財政は良好ではないように感じられます。それゆえ、将来年金をもらえない場合の備えとして、もしくは少ない場合に年金に頼らず生活していくための自助努力として、若者の目は投資に向いているのだと考えられます。
なぜ投資なのか
ここで、なぜ投資を選ぶのかという点について考えてみます。学生時代、学生納付特例制度によって年金保険料の支払い猶予を受けていた方でも、保険料の追納をするのではなく、その分を投資信託などでの資産運用に充てられる方は少なくありません。
そのようになる一つの理由として、仕事を早い段階で退職して株や投資信託による配当収入や資産の切り崩しで自由な生活を送るライフスタイル、FIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指す方が増えてきていることが挙げられます。年金を追納するくらいなら投資に回して、少しでも早くFIREを目指すという考えです。
それに加え、これまでの資本主義社会の成長の歴史を踏まえると、長期的な観点で米国含む全世界へ投資することで、投資信託によって年利3%から5%前後の利益を得られる可能性が十分あることも挙げられます。仮にFIREを実現できずとも、将来が不透明な年金より、ある程度利益を予測できる投資に目がいっているとも考えられます。
また、つみたてNISAといった現金化が比較的容易な非課税制度や、iDeCoのように節税効果の高い制度も存在していることから、公的年金よりもそれらの制度を通じた投資を選んでいるというケースもあります。
実際のところ、本当に投資の方が良いのか
若者が投資を好む理由がある程度理解できたところで、本当に年金より投資の方が良いのか、簡単に試算してみます。仮に、平成24年と25年の2年度分、全額免除されていた年金保険料を令和4年度に追納したとすると、支払う保険料は36万4920円となります。
図表
出典:日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
増える年金額は年間でおおよそ3万8890円です。仮に20年間受け取ったとすると、トータルで増える金額は77万7800円です。
一方、36万4920円のお金を30歳から65歳まで35年間、インデックス投資にて平均年利5%で運用すると201万3000円となり、それを20年間にわたって受け取り続けると年間10万650円受け取ることができます。
実際の額は、運用しながら受け取りを続けた場合や税の関係などでも変わってくるかと思いますが、シミュレーションし、改めて数値として見てみると投資の方が良いという意見があるのもうなずけます。
若者が見落としている点もある
しかし、年金より投資の方が全てにおいて優れているかというと、そういうわけでもありません。年金より投資を好む若者が見落としがちな点には、下記のようなものがあります。
●年金は生きている限り受け取り続けることができる
●投資による利益は常に上がるとは限らない
●投資には損失を抱えるリスクもある
これらのことを加味して年金よりも投資を優先するのであればともかく、この点を深く考えない、もしくはよく知らないまま選択している若者も少なくないようです。
投資と年金、一概にどちらがいいとは言い切れない
若い方の中には、年金に不信感を抱き、自己責任での投資の方がましだと考える方もいらっしゃいますが、その考えが必ずしも正解とはいえません。
年金と投資のどちらにも、それぞれ長所と短所が存在しています。今回ご紹介した年金や投資に対する若者の考えも取り入れて、改めてご自身で考えていくことで、将来のライフプランをより良いものに変えていくことができるのではないでしょうか。
出典
SBI証券 NYダウ
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
野村証券 マネーシミュレーター「みらい電卓」~運用編
執筆者:柘植輝
行政書士