いまだ続く「ウクライナ侵攻」が一般家庭の家計を圧迫しているその金額は?
配信日: 2023.04.02 更新日: 2024.10.10
では、ウクライナ侵攻によって、一般家庭の家計を圧迫している額は、いくらぐらいになるのでしょうか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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ウクライナ侵攻が一般家庭の家計を圧迫する理由
ロシアによるウクライナへの侵攻行為が、一部のエネルギー源と食料品の価格高騰を引き起こしました。平時には、ロシアとウクライナを含む世界各国において、輸出と輸入のバランスがそれなりに取れていたにもかかわらず、大規模な戦争が起きたことで、ロシアやウクライナからの輸出や供給が停止される物品が多発しているのです。
侵攻行為に抗議する国際的ペナルティーとして、西側諸国からロシアへの経済制裁が行われている状況は、さまざまな物品の供給不足を加速させています。
しかも、円安が続いていることも輸入品の価格高騰を招いています。円安はウクライナ侵攻が直接の原因で引き起こされたわけではなく、日本とアメリカの金利政策の違いによるものでしょう。ただ、食料品やエネルギー源の供給不足に加え、このタイミングで発生した円安傾向が、価格高騰に追い打ちをかけているといえます。
エネルギー価格の高騰による家計圧迫
ウクライナ侵攻によって、石油や天然ガスの価格が世界市場で軒並み高騰しています。ロシアは石油や天然ガスの産出と供給を主要産業としている国家だからです。1日あたりの産油量はロシアが世界第3位の規模で、天然ガス生産量が世界第2位です。
つまり、ロシアは国際的にも屈指のエネルギー輸出大国であることは間違いありません。たとえ西側諸国がその輸入を止めても、ロシアは友好国に原油や天然ガスを大量に輸出し、外貨を獲得しているとみられます。
石油や天然ガスは、日本にとって火力発電の主要なエネルギー源です。つまり、石油や天然ガスが高騰すれば、電気代も高騰するのはやむをえません(なお、新型コロナウイルスの流行による外出自粛に伴い、住宅の電力需要が急増したことも電気代高騰の原因とする説もあります)。
例えば、東京電力管内における平均的な家庭の1ヶ月あたりの電気料金は8505円で、前年同月比で1683円も上がっていることが分かっています。
さらに石油や天然ガスは、ほぼ全ての自動車を動かすための燃料となっています。つまり、人や物の輸送コストも上昇しますから、店で売られているあらゆる物品が値上がりする要因にもなるのです。電気自動車もエネルギー源である電気が高騰しており、例外ではありません。
食料品価格の高騰による家計圧迫
ウクライナは、ヒマワリ油の世界最大の輸出国でした。しかし、その輸出はロシアによる侵攻をきっかけに停止されています。ヒマワリ油は揚げ物に適しているので、日本においても外食やスーパーの総菜などの価格に影響が出ていると考えられます。
また、ロシアとウクライナを合わせれば、小麦輸出は世界シェアの3割、トウモロコシ輸出も世界シェアの2割を占めていました。その輸出もほぼ遮断されている事実は、穀物価格の高騰を引き起こしているでしょう。
ウクライナ侵攻により、国連食糧農業機関(FAO)の穀物価格指数は17%、植物油の指数も23%上昇しました。食料用穀物の消費量は、年間一人あたり約150kgにものぼります。
日本人はそのうち米で約50kgを消費しますが、パンや麺、スナック菓子など小麦やトウモロコシが原料の食料品も少なからず消費しているのです。2022年、小麦1kgは平均316円、トウモロコシ1kgは平均276円で取引されています。仮に半分ずつ消費するとして価格が17%高騰したならば、単純計算で年間5031円の出費増です。もちろん、他の食料品価格も軒並み高騰しています。
物価高騰の原因は、ウクライナ侵攻だけではない
このページでは、電気代と穀物価格の値上がり幅について推計しました。しかし、あくまでも目安であり、時期や地域によって価格の上昇幅は異なります。間接的にさまざまな物品の価格が高騰しているのも事実です。
また、物価高騰の原因はウクライナ侵攻だけではありません。経済政策の影響による円安ドル高、あるいは新型コロナウイルスの流行による社会変化などの要因も複合的に作用しているはずです。
出典
エネルギー白書2022 HTML版 │ 資源エネルギー庁 第1部 第3章 第2節 世界的なエネルギー価格の高騰とロシアのウクライナ侵略 │ 令和3年度エネルギーに関する年次報告
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部