更新日: 2023.04.08 働き方

個人事業主に話題のマイクロ法人スキームってどんなもの?

執筆者 : 柘植輝

個人事業主に話題のマイクロ法人スキームってどんなもの?
個人事業主は税金が高くて社会保障も薄い。そんな悩みの解決の一助となるのがマイクロ法人という存在です。
 
個人事業主の中でも節税や資産形成の意識の高い方に利用されることの多いマイクロ法人スキームとはどういうものなのか、解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

マイクロ法人スキームの概要

マイクロ法人とは一般的に社長やその家族のみで事業拡大を目的としない非常に小規模な運営をされている法人を指して使われる言葉です。
 
法人に帰属する権利義務は個人事業主とは別になります。それを利用し、個人事業主が自分1人のみ、あるいは少数の家族を役員や従業員としたマイクロ法人を設立し、個人事業主としての事業をメインで大きく収入を得ながら、法人を利用して節税するというスキームがマイクロ法人スキームになります。
 
例えば、個人事業主として本業の飲食店経営でバリバリ稼ぎつつ副業として精密機器の修理事業をマイクロ法人で行い、節税のために最低限必要な法人の維持費だけ稼ぐという具合です。
 

マイクロ法人による節税で特に注目されているのは社会保険料

マイクロ法人スキームが個人事業主に注目されている最大の理由は社会保険料の存在です。つい最近国民健康保険料の上限引き上げについて知り、マイクロ法人の設立を検討し始めた個人事業主の方もいらっしゃるでしょう。
 
マイクロ法人を設立して社会保険の加入要件を満たすことでマイクロ法人の社会保険に加入します。本業が個人事業であっても、適用が優先されるのはマイクロ法人の社会保険になります。つまり、個人事業主でありながら健康保険と厚生年金に加入するということです。
 
このときの社会保険料はマイクロ法人から受け取る給与で決まります。個人事業主としての収入は関係ありません。
 
これを利用し、マイクロ法人からの給与を毎月4万500円と社会保険の算定において一番低くなる金額に設定したと仮定します。すると、個人事業主として1000万円稼いでいても、毎月の健康保険と厚生年金は会社負担分も含めて2万5000円で済んでしまいます。その上、国民年金や国民健康保険にはなかった社会保険の扶養も適用できるため家族の社会保険料を0にすることもできます。
 
このように、保険料が安くなるのに保障は健康保険と厚生年金とで厚くなるとマイクロ法人スキームが話題となっているのです。
 
さらに、4万5000円であれば給与所得控除の範囲内となるため年間で50万円以上のお金を実質非課税で給与として受け取ることができます。
 

マイクロ法人スキームの注意点

マイクロ法人スキームは万能ではありません。少なくとも個人事業主として行う業務と法人で行う業務は別である必要があります。
 
例えば個人事業主がWEB制作、マイクロ法人で輸入雑貨の販売といったように両者が別事業でなければなりません。個人事業主で飲食店経営、法人でも飲食店経営となると両社は同一の事業とみなされマイクロ法人スキームによる節税が否定されてしまいます。
 
節税目的でのマイクロ法人の設立は違法ではありません。法人としての活動実態がないことや、個人事業主と法人とでしっかりと線引きされていない法人での活動が問題とされるのです。
 

法人の運営の手間や諸費用の存在

マイクロ法人スキームの検討において忘れてはならないのが法人の設立や運営にかかる手間と諸費用です。
 
株式会社で設立すると自分で行っても20万円近いお金がかかります。さらに、毎年会社の決算(個人の確定申告のようなもの)も行わなければなりません。それに加えて、マイクロ法人に残ったお金には法人税もかかります。
 
マイクロ法人スキームにはメリットばかりだけではなく注意点もあることを知っておく必要があります。
 

個人事業主でマイクロ法人スキームで節税を検討中の方はよく考えるべき

個人事業主の間で節税を目的にマイクロ法人スキームが注目を集めています。
 
しかし、マイクロ法人スキームを正しく運用しようと思ったら、手間やお金もかかります。表面的な節税に目を奪われ実際に運用してみると割に合わないという方も出てくるはずです。
 
マイクロ法人スキームは安易に行うべき節税手法ではありません。マイクロ法人スキームに興味がある場合十分に検討し、法人を運営することになるという覚悟を持って取り組むことをおすすめします。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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