更新日: 2023.05.22 働き方

結局、「扶養内で働く」のと「社会保険に加入して働く」のとでは、どちらがトクなの?

執筆者 : 中村将士

結局、「扶養内で働く」のと「社会保険に加入して働く」のとでは、どちらがトクなの?
「扶養内で働くのと社会保険に加入して働くのとでは、どちらが得なのか」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。ただ、この疑問に対する回答は人によって異なるため、「結局、どっちが得なの?」となってしまいがちです。
 
本記事は、扶養内で働く場合と、社会保険に加入して働く場合とで何が違ってくるのかを解説します。本記事を読んでいただければ、なぜ「人によって答えが異なるのか」をご理解いただけるはずです。また、本記事を読むことで、あなたなりの答えを出す一助となるのではないかと思います。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

関係する社会保険は、厚生年金保険、健康保険、介護保険、雇用保険

「社会保険」とは公的保険であり、(1)年金保険、(2)医療保険、(3)介護保険、(4)労働保険の総称です。社会保険の具体的な内容は、図表1のとおりです。
 
【図表1】
 

年金保険 国民年金、厚生年金保険
医療保険 健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度など
介護保険 介護保険
労働保険 労働者災害補償保険、雇用保険

 
※筆者作成
 
上記の保険のうち、一般に、会社員が加入している保険は「厚生年金保険(国民年金を含む)」「健康保険」「介護保険(40歳以上の場合)」「労働者災害補償保険」「雇用保険」です。
 
このうち、扶養(被扶養者)という考え方が関係するのは、「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」です。また、「雇用保険」については、雇用期間や労働時間が加入要件となるため、厚生年金保険などで被扶養者である場合、雇用保険には加入していないケースが多いと考えられます。
 
つまり、「扶養内で働くか、社会保険に加入して働くか」を考えるときには、厚生年金保険、健康保険、介護保険、雇用保険について考える必要があるということです。
 

扶養内で働く場合と社会保険に加入して働く場合の違い

扶養内で働く場合と社会保険に加入して働く場合では、保険における立場が異なります。
 
扶養内で働いている方を「被扶養者」、社会保険に加入している方を「被保険者」といいます。被扶養者と被保険者では、加入する保険、支払う保険料が異なります。
 

加入する保険の違い

被扶養者と被保険者の社会保険の内容を比較すると、図表2のとおりです。
 
【図表2】
 

被扶養者 被保険者
年金保険 国民年金 厚生年金保険
医療保険 健康保険 健康保険
介護保険 介護保険 介護保険
労働保険 労働者災害補償保険 労働者災害補償保険
雇用保険

 
※筆者作成
 
被扶養者と被保険者の加入する保険を比較すると、「年金保険」と「労働保険」に違いがあることが分かります。端的にいえば、厚生年金保険と雇用保険に加入するかしないかの違いなのです。
 
被扶養者から被保険者になった場合、厚生年金保険と雇用保険に加入することになります。つまり、「老齢」「障害」「死亡」「失業」に対する保険が増えるということです。
 

支払う保険料の違い

被扶養者は、社会保険料を支払う必要はありません。一方、被保険者は、社会保険料を支払う義務があります。社会保険料は、それぞれの保険料率によって算出されます。
 
厚生年金保険、健康保険、介護保険、雇用保険の保険料率(令和5年5月現在)は、図表3のとおりです。
 
【図表3】
 

保険 保険料率 備考
厚生年金保険 18.3%
(自己負担率9.15%)
健康保険 10%
(自己負担率5%)
「全国健康保険協会(東京都)」の保険料率
介護保険 1.82%
(自己負担率0.91%)
「全国健康保険協会」の保険料率
雇用保険 15.5/1000
(自己負担率6/1000)
「一般の事業」の保険料率

 
※筆者作成
 
被扶養者から被保険者になった場合、上の表のとおり自己負担分についての保険料が発生します。社会保険料は源泉徴収されますので、その分の手取り収入は減るということです。
 

まとめ


 
これまでみてきたことを整理すると、被扶養者と被保険者はどちらが得かという問題は、収入を得て保険(厚生年金保険、雇用保険)に加入するのか、収入を抑えて保険に加入しないのか、という問題となります。
 
考え方としては、「収入を多く得れば、それだけそれを失ったときの家計への影響が大きい。だから保険に加入しておきましょう」ということです。
 
したがって、保険に加入する必要があるほど多くの収入を得たいのであれば、扶養を外れ、社会保険に加入して働くのが得です。反対に、保険に加入するほど収入を得たいのでなければ、扶養内で働くのが得です。
 
「どちらが得」というのは、家計の状況や個人の価値観により異なります。ただ、「保険に入るメリットがないのに保険に加入することは損」だとはいえそうです。
 

出典

日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」

厚生労働省 従業員数500人以下の事業主のみなさまへ

厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護保険とは

厚生労働省 雇用保険制度 Q&A~事業主の皆様へ~

日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)

厚生労働省 令和5年度雇用保険料率のご案内

全国健康保険協会

全国健康保険協会 令和5年度都道府県単位保険料率
全国健康保険協会 協会けんぽの介護保険料率について
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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