更新日: 2024.10.10 働き方
上司のパワハラが原因で会社を辞めた場合も、「自己都合退職」となって退職金は通常より少なくなってしまうの?
今パワハラを受けていて会社を辞めたいと思っているけれど、自己都合退職扱いになって退職金の支給額が減ってしまわないか不安で、辞められないという方もいるようです。
そこで、パワハラで退職すると自己都合退職扱いとなるのか考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
パワハラでの退職は原則会社都合となる
退職には自己都合退職と会社都合退職とがあります。その名のとおり、自己都合退職とは、自分の都合で退職することです。一方で会社都合退職とは、会社が原因で行った退職です。例えば、解雇など自分ではどうしようもない会社の都合で退職に至る場合です。
上司からのパワハラもいわゆる会社都合退職になります。そのため、パワハラを原因として退職するのであれば、自分から会社を辞めたとしても、基本的に退職金が自己都合退職扱いで減額されることはないでしょう。
ただし、辞職の際にパワハラが原因であることを会社に伝えずに退職すると、それは自己都合退職として扱われてしまう可能性があるので要注意です。
参考までに、厚生労働省の「令和3年賃金事情等総合調査」によれば、自己都合扱いの退職となった場合、支給される退職金の総額は、25歳で入社3年目、大学卒の総合職相当の方で、平均32万3000円となっています。
これが会社都合退職となると平均69万円と、30万円以上の差がつきます。さらに、勤続10年の32歳となると、自己都合退職の場合は平均179万9000円となるのに対し、会社都合退職は平均310万2000円と、100万円以上の差になります。
パワハラを理由とする会社都合退職が、自己都合退職とされないためには?
パワハラによる会社都合退職を自己都合退職とされないようにするためには、準備が必要です。
まず、退職の段階で、パワハラを原因とする退職であると伝えることが必要です。会社の担当者がパワハラの事実を知らない場合、自己都合退職で処理されてしまう可能性があるからです。退職届には、パワハラが原因であることを明記しておくべきです。
また、退職前は事前にしっかりとパワハラの証拠を収集しておくことも大切です。会社が事実を認めていなかったとしても、証拠を出せばそれを認めることもあるからです。パワハラの証拠としては、下記のものがあります。
・パワハラをされている場面の録画データや録音データ
・メールやSNS上の文面から、それが分かる部分
・けがや精神的な傷を負った場合は医師の診断書など
外部の力を借りるのも手
パワハラを受けているにもかかわらず、会社が事実を認めず自己都合退職扱いにしようとする事例は少なくありません。そういった場合、外部の力を借りると話がスムーズに進む場合があります。
例えば、勤務先の所在地を管轄している労働基準監督署や社労士、労働問題を得意としている弁護士に相談するなどです。最近では退職サポートを行っている事業者もいるため、そういった事業者に相談するというのも有効でしょう。
いずれにせよ、自分一人では難しい、勇気が出ないというような場合は、外部の専門家の力を借りるべきです。
パワハラを理由とした退職では退職金は減少しない
パワハラを理由に退職すると、それは原則として会社都合の退職となります。退職金の額も基本的には減少しないでしょう。しかし、パワハラが理由であることを告げないと、自己都合退職となり退職金が減額される恐れもあります。
パワハラを理由に退職する場合、会社がそれを認めなければ外部の力を借りるなどして、できる限り会社都合で退職できるよう手配することをおすすめします。
出典
厚生労働省 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準
e-Stat 令和3年賃金事情等総合調査
執筆者:柘植輝
行政書士