「タンス預金」に否定的な声が多いのはなぜ?「100万円」くらいならしても大丈夫?
配信日: 2023.08.06 更新日: 2024.10.10
本記事では、タンス預金のメリットとデメリットを確認し、否定される理由を考えてみたいと思います。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
タンス預金は「悪」ではない
最初に言っておきますが、タンス預金は決して「悪」ではありません。タンス預金をしていることを人から否定される筋合いはないのです。タンス預金を100万円しようと1000万円しようと、それは個人の自由であり他人に責められる点はありません。
タンス預金のメリット・デメリット
タンス預金が否定される理由を考えるために、メリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット
タンス預金のメリットは人によってさまざまですが、主に次のようなものが考えられます。
●すぐに現金が使える
●金融機関が破綻しても影響がない
●口座凍結のリスクがない
●誰にも知られない現金が持てる
財布の中の現金だけでは足りないとき、多くの人は銀行に引き出しに行くと思いますが、タンス預金であればその手間がありません。またATMでの現金引出手数料などが発生することもありません。
現金を金融機関に預けておくと、万一、金融機関が破たんした際には1000万円を超える預金については保証されない可能性があります。また金融機関は口座名義人が死亡したことを知ると、口座内の財産が不正に流出することがないよう口座凍結を行います。家族であっても入出金ができなくなるのです。しかし、死亡直後は病院代や葬儀費用などの支払いがかさむため、遺族はまとまった現金が準備できず困るかもしれません。
最後に、タンス預金は誰にも記録されていない現金です。国や家族に知られることなく貯めることが可能です。
デメリット
次にデメリットです。
●火災や水害などで消失する
●盗難にあう
●相続税の申告漏れが発生する
●相続トラブルのきっかけになる
●利息がつかない
自宅に現金を置いているタンス預金は、災害で消失する可能性、泥棒に盗まれる可能性があります。万一の事態となった際には、タンス預金を根こそぎ失う可能性が高く、非常に大きな損失となります。
タンス預金は相続財産です。タンス預金の存在を誰も知らないまま持ち主が死亡した場合には、相続税の申告漏れが発生する可能性が高いでしょう。また、タンス預金を偶然発見した人が、誰も知らないからと持ち去ってしまうかもしれません。ほかの相続人にバレた場合には、相続トラブルが懸念されます。
そして、タンス預金には利息が1円もつきません。今、普通預金や定期預金の利息はタダ同然かもしれませんが、投資はどうでしょうか。タンス預金が余剰資金であるのなら、投資の機会を失っていることになります。
まとめ
タンス預金のメリットとデメリットを見比べてみるとどうでしょうか。デメリットの方がメリットより大きいと思う人が多いのではないでしょうか。メリットには基本的に「便利さ」、「都合のよさ」が並んでいるのに対して、デメリットには「財産を失う可能性」が並んでいるからです。それがタンス預金に否定的な声が多い理由でしょう。
出典
国税庁 No.4105 相続税がかかる財産
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士