更新日: 2024.10.10 働き方

「2025年までに有給休暇取得率を70%に」目標と現状の差は?どのような企業が有給休暇を取得できているのか?

「2025年までに有給休暇取得率を70%に」目標と現状の差は?どのような企業が有給休暇を取得できているのか?
現在、国が「2025年までに有給休暇の取得率を70%にする」という目標を掲げています。しかし、現状の有給休暇の取得率は、この目標達成を目指せるような水準にあるのでしょうか。
 
なかには「70%なんて無理! もしかして、自分の職場の取得率は、他社と比較して悪いのだろうか?」と、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、有給休暇の取得率が高い企業の傾向と、取得率が上がらない理由について、ご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

有給休暇取得率が高い企業の特徴は?

まずは、有給休暇の取得率が高い企業の特徴を、従業員規模と業種に分けて、確認していきましょう。実は、規模が大きい企業ほど、有給休暇を取得しやすい傾向にあります(※表1を参照)。
 
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、従業員が「99人以下」の企業の場合、有給休暇を半分以上取得できている人の割合は、4割以下にとどまります。
 
一方で「1000人以上」の企業では、有給休暇の半分以上を取得できている人は、5割以上に上ります。付与された分をすべて使いきることは難しいものの、実際に、休暇を取得しやすい傾向にあるといえます。
 
表1

企業規模 ~25%未満 25~50%未満 50~75%未満 75~100%
未満
100% 中央値
99人以下 24.8% 36.9% 27% 9.9% 1.4% 40%
100~299人 21.6% 36% 30.1% 11.6% 0.8% 43.8%
300~999人 17.2% 33.9% 38.9% 8.8% 1.3% 49.5%
1000人以上 10.5% 34.2% 41.4% 13.2% 0.7% 53.8%

※独立行政法人労働政策研究・研修機構「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(企業調査・労働者調査)」を基に筆者作成
 
次に、有給休暇の取得率が高い業種について、確認しましょう。中央値(データを並べたときに中央に位置する数値)と、50%以上の取得率を、それぞれでランキングにすると、表2のとおりです。
 
中央値と、50%以上取得できている人の割合では、ともに、情報通信業と金融業・保険業が、高い水準にあることが分かります。表2からも、有給休暇を取得しやすい企業は、規模の大きい情報通信業者・金融業者・保険業者といえるでしょう。
 
表2

中央値 50%以上を取得できている人の割合
1位 情報通信業
60%
情報通信業
65.5%
2位 金融業・保険業
59.9%
金融業・保険業
64.7%
3位 その他
49%
鉱業・採石業・砂利採取業
50%
4位 製造業
48.9%
その他
49.3%
5位 医療・福祉
46.5%
製造業
48.4%
6位 鉱業・採石業・砂利採取業
46.2%
医療・福祉
47.2%
7位 教育・学習支援業
44.7%
不動産・物品賃貸業
42.8%
8位 電気・ガス・水道・熱供給業/
学術研究・専門技術サービス業
42.8%
サービス業
40.4%
9位 学術研究、専門・技術サービス業
39.4%
10位 不動産・物品賃貸業
41.7%
電気・ガス・水道・熱供給業
37.8%

※黄色箇所は取得率が50%以上の業種
※独立行政法人労働政策研究・研修機構「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(企業調査・労働者調査)」を基に筆者作成
 

有給休暇取得率が上がらない理由

有給休暇の取得率が上がらないことには、「取得できない理由」と「取得しないでおく理由」の、双方が関係しています。取得できない理由の主なものは、以下の4点です。
 
こうした理由が背景にある場合に、有給休暇の取得率を改善するためには、職場環境を見直す必要があるでしょう。
 

<有給休暇を取得したくてもできない主な理由>

・人手が足りない
・部署の異動や業務の変更によって忙しくなった
・休みを取得した際の代替要員が確保されていない
・繁忙期に入った

 
また、有給休暇をあえて取得しないでおく理由としては、下記の点が挙げられます。就労環境が原因となっている場合もあるものの、なかには、周囲に気を使って休めないケースも見受けられます。
 
その場合は、管理職が有給休暇を取得しやすい雰囲気づくりに取り組み、休暇への認識を改善していく必要があるでしょう。
 

<有給休暇をあえて取得しない主な理由>

・急用や体調不良のときのために残しておきたい
・休むと、ほかの人の迷惑になってしまう
・休んでいる間の仕事を引き継いでくれる人がいない
・仕事が多すぎて休める状況にない
・周囲が有給休暇を取得しないため、取りにくい

 

有給休暇を取得しやすい環境づくりを進めよう

有給休暇は、従業員数の多い企業のほうが、取得率が高い傾向にあります。しかし、取得率の高い業界でも、国の掲げる「70%」には及ばない状況です。
 
企業が「国の掲げた目標を達成しよう」「人材の定着する企業を目指そう」と考えるならば、有給休暇の取得しやすい環境づくりを進める必要があります。業務量と従業員数のバランスと、現状の取得率や雰囲気などもチェックして、取得しやすい環境に整えていくことが大切です。
 

出典

独立行政法人労働政策研究・研修機構 調査シリーズNo.211「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(企業調査・労働者調査)」 第Ⅰ部 調査結果の概要
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集