更新日: 2023.09.10 その他家計

収入と所得を混同していませんか? 間違えると困ったことになるかもしれない?

執筆者 : 北山茂治

収入と所得を混同していませんか? 間違えると困ったことになるかもしれない?
私たちは普段何気なく、「収入」と「所得」を同じように使っています。この2つの言葉は決定的に違います。これを意識せずに使っていると困ったことになります。
 
本記事で、「収入」と「所得」の違いや間違えたときに起こり得る、困ったことについて説明していきます。
北山茂治

執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)

高度年金・将来設計コンサルタント

1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。

人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。

HP: https://www.kitayamafpsr.com

収入と所得

「収入」とは、個人や家庭に入ってくるお金の総額を指します。これには給与、事業収入、資産からの利益、投資からの収益など、さまざまな資金源が含まれます。例えば、月給が30万円で、副業のコンサルティング委託契約で月に10万円の収入がある場合、その人の収入の合計は月額40万円です。
 
一方、「所得」は、所得税やその他の税金の計算基礎となる金額で、収入からさまざまな控除や経費を差し引いた金額です(所得税は、所得に対して課税される税金です)。
 

実際に計算してみよう

それでは、具体的な例を使って説明します。Aさんの1年間の収入は、以下のとおりです。

・給与収入:800万円
・不動産からの賃貸収入:100万円
・合計900万円

Aさんの所得は、収入から控除額を差し引いた金額なので、以下のとおりになります。

給与所得控除額:800万円×10%+110万円=190万円
給与所得:800万円-190万円=610万円
不動産必要経費を50万円とすると、不動産所得は100万円-50万円=50万円
 
所得合計:610万円+50万円=660万円

このように所得の計算方法は、一般的に、必要経費を控除しますが、必要経費の代わりに控除額速算表で算出する控除額を使用する場合もあります。

配当所得金額=配当収入金額-株式などを所得するための負債の利子
事業所得金額=事業収入金額-必要経費
不動産所得金額=不動産収入金額-必要経費
給与所得金額=給与収入-給与所得控除額
退職所得金額=(退職所得金額-退職所得控除額)×1/2
雑所得金額=雑収入金額-必要経費
(※公的年金等の雑所得=雑収入金額-公的年金等控除額)
山林所得金額=山林収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)
譲渡所得金額=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(最高50万円)
一時所得金額=一時収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)
(※総合課税するときに、一時所得金額の1/2が算入されます)
利子所得金額=利子収入金額 (※必要経費は認められていません)

 

「収入」と「所得」が混在するとどうなる?

収入と所得が混在すると、以下のような困ったことが起こる可能性があります。
 

<税金の誤計算>

収入と所得が混ざると、誤った結果額を基準にして税金の計算をしてしまう可能性があります。収入を所得として誤って計算してしまうと、税金を正しく納付できず、問題が生じる可能性があります。
 
例えば、所得控除の一つの「配偶者控除」は、納税者本人の合計所得金額が1000万円以下で、本人と生計を一にしている配偶者の合計所得金額が48万円以下の場合に、本人の合計所得金額に応じて最高38万円の控除を受けることができます。
 
ここでいう「合計所得金額」とは、給与所得なら、給与収入から給与所得控除を引いたものと、不動産所得や事業所得なら「必要経費」引いたものとの合計です。配偶者の合計所得金額の48万円とは、給与収入金額でいうと103万円です(※合計所得金額48万円=給与収入金額103万円-給与所得控除額55万円)。
 

<ファイナンシャルプラン作成時における誤り>

収入と所得が混在すると、個人のファイナンシャルプランニングにも影響が出る可能性があります。
 
例えば「キャッシュフロー表」作成する場合は、通常「収入」を使用する場合が多いのですが、 結果は税金や社会保障費などの基礎計算となるため、正確な結果の把握が重要です。誤って所得で見積もりや予測を行うと、将来の暫定計画や節税戦略の立案が困難になる可能性があります。くれぐれも、収入と所得が混在しないように注意する必要があります。
 

<誤解から生じる違法行為>

収入と所得の混同が原因で、誤解から生じる違法行為が起こることもあります。税務申告や財産申告などの手続きにおいて、収入と所得を混同し、誤った情報を提出してしまうと、法的な問題や罰則が生じる可能性があります。
 
以上のようなトラブルを避けるため、収入と所得について正しい知識を持つことが大切です。
 

出典

国税庁 No.1191 配偶者控除
 
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント

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