更新日: 2023.09.16 働き方

「新卒は勉強のために残業しろ」と言われています。残業代は出ないようなのですが、残業すべきでしょうか?

「新卒は勉強のために残業しろ」と言われています。残業代は出ないようなのですが、残業すべきでしょうか?
就職した企業によっては、残業したにもかかわらず残業代が支払われないところもあるようです。あるいは、「残業代は出ない」と事前に伝えられるケースもあるでしょう。「新卒は勉強のために残業をしろ」と、何かしらの理由をつけて残業を強要する企業へと就職してしまうと、働く意欲も失せかねません。
 
今回は、勉強のためだからという理由で残業代が出ない場合、時間外労働をしなければならないかを法律の観点から解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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法定労働時間と所定労働時間について

残業と残業代について理解するには、まず、労働時間に関する定義を押さえておく必要があります。労働時間には「法定労働時間」と「所定労働時間」の、主に2つがあります。
 
法定労働時間とは、法律で定められている労働時間です。労働基準法第32条では、使用者は労働者に1週間につき40時間を超えて労働させてはならないといった内容で、労働時間を定めています。同時に、1日に8時間を超えて労働させてはならないといった内容も記載されており、ここから、1日に8時間、1週間に40時間が法定労働時間であると解釈可能です。
 
所定労働時間とは、企業が独自で定めている労働時間を指します。就業規則や雇用契約書に記載されている、あらかじめ定められたその企業での労働時間がこれにあたります。しかし、所定労働時間は法定労働時間内でなければいけません。そのため、法定労働時間を所定労働時間として定めている企業が大半を占めています。
 
ちなみに、「労働時間」とは、過去の判例などに鑑み、労働者が使用者の指揮命令下におかれている状態とされています。
 

残業代を支払わないのは労働基準法違反

続いて、「残業」の定義も明確にしておきましょう。多くの会社員が受け取っている基本給は、所定労働時間に対して支払われる給与です。労働時間が所定労働時間を超えた場合、企業は従業員に対して残業代を支払わなければいけません。
 
労働基準法の第37条にも、所定労働時間を超えた場合は、割増賃金を支払わなければならないといった内容の記載があります。この割増賃金が、いわゆる残業代です。時間外労働をしたにもかかわらず残業代が支払われなければ、企業は労働基準法違反に該当する可能性が出てくるでしょう。
 

・新卒だからという理由でも違法

新卒者は、確かに就職後にはさまざまなことを学ばなければいけません。最初は、就職先の企業に貢献するのも難しいでしょう。「新卒は覚えることがたくさんあるから、残業してでも勉強しろ」というのは、指導の一環としてはあり得ます。
 
時間外労働協定が結ばれており、労働基準監督署へ届け出がされ、労働契約書や就業規則に残業についての記載があれば、時間外労働を命じることも可能です。
 
しかし、説明したように、所定労働時間を超えた場合、企業には必ず残業代を支払う義務が生じます。新卒だからとか勉強のためといった点は、残業代を支払わない理由にはなりません。もし、残業代が出ないと事前にわかっているのであれば、残業する必要はないでしょう。
 

残業代が出ない場合は労働基準監督署などに連絡を

残業代が出ないにもかかわらず、勉強のためと称して時間外労働を強要されるのであれば、残業できない意思を企業側へと明確に伝えましょう。
 
それが難しいようであれば、時間外労働に対して残業代が出ない証拠を、まずは集めます。タイムカードやオフィスの出入りの記録、システムへのログイン記録やメールのやり取り、上司との会話の録音などが該当するでしょう。
 
それら証拠をもとに、労働基準監督署などへ相談します。証拠があれば、その後の交渉もスムーズかつ有利に進めやすくなります。
 

残業代が支払われないのは理由に関係なく違法の可能性が高い

労働基準法では法定労働時間が定められており、企業はその範囲内で所定労働時間を定めなければいけません。もし、所定労働時間を超えた労働をさせた場合は、企業は労働者に対して残業代を支払う必要があります。
 
「新卒で勉強が必要だから」というのは残業代を支払わない理由にはならず、企業側は労働基準法違反に該当するでしょう。残業代なしで所定労働時間を超える労働を強いられた場合には、断っても問題はありません。
 

出典

e-Gov法令検索 労働基準法
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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