更新日: 2024.10.10 働き方
45時間以上の残業をしましたが、「事前に申請がない」と超えた分の残業代が払われませんでした…違法ではないのですか?
しかし、実際には月に45時間以上の残業をしたにも関わらず、「事前に残業の申請をしておかないと残業代は出ない」と言われ、結果的にタダ働きになる事例もあるようです。今回はこのケースが違法なのかどうかについて紹介していきます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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ポイント1:残業が申請制であるかどうか
このケースのポイントの1つ目は、「会社として残業を申請制にしているかどうか」です。会社によっては残業をあらかじめ申請制にしているところもあり、そうした会社では申請なしに残業をしても、原則的に残業代は支払われません。実際に仕事をしたのに残業代が支払われないのは違法ではないかと考える人もいるかもしれませんが、残業を申請制にすること自体は合法です。
残業を申請制にすることで、会社にとっては「残業代にかけるコストを把握しやすくなる」「従業員の作業効率向上につながる」といったメリットがあります。一方の従業員側にとっても「残業をした時間が明確になるので、残業代の未払いの防止や不当なサービス残業の抑止につながる」といった点はメリットです。
いずれにしても、申請制にしている企業で申請をしないで残業すると、合法的に残業代が支払われないことがあります。
ポイント2:残業の指示があったかどうか
ポイントの2つ目は、「残業の指示があったかどうか」です。上述のように、申請制の会社では、申請をしないで残業をしても、原則的に残業代は支払われません。
ただし、会社が実質的に強制力を持った残業の指示を出している場合は、申請をしていなくても残業代が支払われる場合があります。なぜなら、労働時間は労働基準法において「労働者が使用者(会社など)からの指揮命令下に置かれている時間」とされているからです。
例えば、申請制の会社で上司から「今日は残業しないで帰るように」と指示されたのに、自らの判断で残業を行った場合は、使用者からの指揮命令下に置かれている状態ではないとみなされ、原則的に残業代の支払い対象にはなりません。
一方で、上司から「今日中に終わらせるように」と言われた業務が明らかに所定の労働時間内で終わらないほど多い場合は、申請をしていなくても残業代の請求が認められる可能性があります。たとえ明確な指示がなくとも、「黙示的な指示」とみなされるからです。
残業代の請求をするなら証拠を残しておくことが重要
ここまで述べてきたように、会社が残業を申請制にしている場合に、申請しないで残業をしても原則的に残業の支払い対象にはなりません。ただし、会社が黙示的にでも残業を指示したと認められる場合には、例外として残業代を請求できる場合があります。
そうした状況で残業代を請求するときのポイントとなるのは、「残業時間を証明できる証拠を残しておくこと」で、たとえば、タイムカードや業務用パソコンのログアウト履歴などが挙げられます。
また、業務に関する指示書や日報などから、その日に行った業務が所定の労働時間の範囲では到底終わらなかったことを証明するのも重要です。
残業代の未払いは、一度会社が出さないと決めたらその後に何度請求しても同じことの繰り返しになる場合も珍しくありません。最終的には労働基準監督署や弁護士などへ相談しなければいけない状況も考えられるので、第三者が見て客観的に判断できる証拠を残しておくようにしましょう。
申請は出しておいたほうが無難
申請制の会社では、事前に申請を出していないと合法的に残業が認められないこともあります。会社が黙示的に残業を指示したとみなされる場合には、申請を出していなくても残業代の支払い対象となる場合もありますが、会社側がすぐに対応してくれるとは限りません。
従業員側の現実的な対応策としては、「申請できるなら忘れずに申請をしておくこと」が大切です。まずは、残業をする前に上司に確認を取ることから始めてみましょう。
出典
厚生労働省岡山労働局 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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