「最低時給1500円」でアルバイトやパート従業員の生活が楽になる? 楽観視できない理由とは
配信日: 2023.10.06 更新日: 2024.10.10
労働者からすれば、最低時給が1500円になれば自分の生活も楽になるはずと楽観視するかもしれないですが、ことはそう単純とはいえません。なぜ最低時給1500円が楽観視できないのか、本記事でその理由について迫っていきましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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最低時給1500円で生活が楽になる
最低時給が1500円になった場合、パートやアルバイトなど時給で働いている人にはメリットが多そうです。
全労連の「最低生計費資産調査」によると25歳の単身者が人間らしく暮らすためには、全国のどの地域で生活するにしても1500円(月150時間労働で時給換算)は必要となります。この調査では、地方も含めたほとんどの地域で最低生計費の試算が1500円を超えています。例えば、岩手県盛岡市の最低生活費(月150時間労働で時給換算)は1524円、岡山県の場合も1657円の時給が必要です。
地方でも最低賃金1500円以上が必要とされている理由は、都市部と最低生計費の差があまりないからです。一般的なイメージでは、地方は生活費があまりかからないので賃金が都市部よりも低くて暮らしていけると考えられているが、最低生活費の実態は異なります。というのも、地方は都市部よりも食費や家賃は安いですが、交通費や通信費ははるかに高くなるからです。
最低生計費資産調査では、東京都北区の交通費・通信費は1万2075円です。一方、地方の最低生計費を見ると山口県(4万417円)や静岡県(男性が4万3356円、女性が4万3167円)のように、都市部の3倍以上の費用がかかる地域が多くありました。そのため、都市部と地方とで最低生計費について大きな差は発生していないのが現状です。
また、最低賃金が1500円以上になると時間給以外の給与体系で働いている人にも給与アップのメリットがあります。決して高くない月給で働いている正社員や契約社員も含めた、労働者全体の賃金引き上げにもつながるでしょう。
最低賃金が1500円になるのはよいことばかりではない
最低賃金が1500円になった場合、雇用する側はこれまでよりも高い給与を支払わなければならなくなることをイメージできる人は多いでしょう。しかし、労働者側にも人件費の高騰による雇用の減少というデメリットがあるので注意が必要です。
例えば、アルバイトを10人雇う側の立場になって考えてみましょう。最低賃金が1000円であれば、アルバイト10人が月に70時間ずつ働いた場合に支払う人件費の合計は70万円で済みます。
しかし、最低賃金が1500円になると、同じ条件で雇用するとなると毎月の人件費は105万円に増加します。アルバイトを雇う側からすれば、最低賃金が1500円に上がっても業績が良くなるとは考えにくいでしょう。そうなると、10人いるアルバイトの何人かには辞めてもらうことになるかもしれません。それにより、アルバイトやパートといった非正規社員を中心に失業者が大きく増加する可能性があります。
加えて、アルバイトやパート間で少ない雇用を巡って争うことになるかもしれません。特に飲食店、旅館・ホテル、小売業といった非正規社員に頼らざるを得ない会社では大きな影響があります。
正社員についても例外ではなく、月給を時間給に直した際に1500円を下回ると法律違反となります。最低時給に近い給与で働いている人が多い企業では、失業者が増えるでしょう。
まとめ
アルバイトやパートにとって給与アップにつながるため、最低賃金引き上げを歓迎している人は多くいます。しかし、アルバイトやパートを雇用している側にとっては人件費が高騰するため、失業率の増加を招く恐れがあります。
最低賃金が1500円以上になった場合であっても重宝されるように、資格の取得や正社員への昇格を目指してみるのもよいでしょう。
出典
全国労働組合総連合 最低生計費試算調査・総括表
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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