更新日: 2023.10.10 働き方

固定残業代をもらいながら定時退社していたら「給料泥棒」と言われました…。残業が「善」なのでしょうか?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

固定残業代をもらいながら定時退社していたら「給料泥棒」と言われました…。残業が「善」なのでしょうか?
固定残業(みなし残業)の制度を導入している企業の場合、定時退社については、しばしば問題になります。なかには、固定残業代分は残業しなければならないと誤解している方もおり、トラブルが生じるケースもあります。
 
今回は、固定残業代を受け取りながらも定時退社してよい根拠や、その是非について、解説します。
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固定残業代をもらっていても定時退社して問題ない?

みなし残業制度を導入している企業に勤めており、固定残業手当を受け取っている場合でも、定時退社して問題ありません。厚生労働省により公表されている「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」では、下記の留意事項が明記されています。
 

<36協定における留意事項>

1. 時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめてください。
2. 使用者は、36協定の範囲内であっても労働者に対する安全配慮義務を負います。また、労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まることに留意する必要があります。

 
つまり、必要性の高い内容でなければ、残業せずに、定時退社することが望ましいと解釈できます。
 

残業は善? それとも悪?

残業が善か悪かという点は、一概にはいえません。先ほどご紹介した指針の留意事項のとおり、労働時間が長くなるほど、過労死との関連性が高まることを踏まえれば、悪と考えられるでしょう。
 
仕事の効率低下を招いたり、残業して当たり前の意識が根付いたりすることもあり、残業は少ないほうがよいでしょう。しかし「残業は悪」とはいえないケースもあります。
 

<残業が悪とはいえない可能性があるケース>

・同じ仕事を担っている先輩・同僚・後輩などが残業をしていたため、手伝った
・自身の仕事を手伝ってくれている同僚が、まだ仕事を終えられなさそうなので手伝った
・基本給だけでは生活が苦しく、固定残業手当プラス超過分の残業代を頼りにしている

 
とくに今回のように、定時退社することで「給料泥棒」とまでいわれる場合は、周囲の人々は残業していることが多い状況と想定されます。周囲の人が「固定残業代が出ているから」と、残業するために余計に仕事をしているのでない限り、多少、協力する必要はあるでしょう。
 

仕事へのスタンスに応じて見極めも必要

今回のように、定時退社したい方の長時間労働が慢性化した職場は、勤務先としては望ましくないでしょう。
 
例えば、みなし残業代が1ヶ月に2万円だったとすると、東京都の最低賃金(2023年10月以降1113円)で換算すれば、およそ18時間分の時給に相当します。残業代は割増率25%以上となることを加味すれば、実質14時間ほどの時給に相当します。
 
一方で、みなし残業代として1ヶ月に6万円を受け取る場合は、同様に割増率25%で計算すると、43時間分程度の残業代となります。給料泥棒といわれないように、毎月それだけの残業をすると、36協定に定められた上限の「月45時間」に近い時間となり、心身の健康への悪影響が懸念されます。
 

固定残業代を受け取りつつ定時退社しても問題はないが、協力する姿勢も必要

固定残業代を受け取りながらでも、必要性がなければ、定時退社しても問題はありません。残業は必要最小限にとどめるように、労働者と使用者がともに努める必要があります。
 
ただし、仕事が終わらなくて残業している人を横目に、定時退社することにこだわれば、周囲の反感を買ってしまうおそれもあります。残業は、周囲の状況や自身のスタンスを踏まえたうえで、判断しましょう。
 

出典

厚生労働省 36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧 令和5年度地域別最低賃金改定状況
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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