更新日: 2023.10.16 貯金

満期から20年2ヶ月で郵便貯金の権利が消滅? 郵政民営化前の郵便貯金について解説

執筆者 : 高橋庸夫

満期から20年2ヶ月で郵便貯金の権利が消滅? 郵政民営化前の郵便貯金について解説
2005年10月に郵政民営化関連6法が成立し、2007年10月1日に日本郵政グループが発足し、郵政民営化が開始されました。それまで国または日本郵政公社が提供してきた郵政事業を民間に委ねることで、より自由で活力ある経済社会の実現に資するとの考え方により開始された改革です。
 
それから、はや16年ほどが経過し、既に満期を経過した郵便貯金について、年々増えつづける権利消滅額が話題となっています。この記事では、その概要と対応方法などについて確認してみたいと思います。
高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

権利消滅の対象となる郵便貯金

郵政民営化前(2007年9月30日以前)に預け入れた郵便貯金で、定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金等の定期性貯金が対象となります。これらの郵便貯金は、独立行政法人 郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構で管理されており、全て満期となっています。
 
例えば、定額郵便貯金については、預入の日から起算して10年経過後、定期郵便貯金については、預入期間の経過または自動継続扱いのものは、民営化後に到来する継続日に満期となっています。
 

満期を経過した郵便貯金の取り扱い

満期後10年間、払戻しの請求がない場合、10年経過の際に「満期後10年経過のお知らせ」が送付されます。さらに、満期の翌日から20年を経過しても、払戻しの請求がない場合、「権利消滅のご案内(催告書)」が送付されます。
 
そして、催告書の送付の日から2ヶ月以内に払戻しの請求がない場合、旧郵便貯金法の規定により、その郵便貯金の権利が消滅します。つまり、満期から20年2ヶ月を経過することで郵便貯金を払い戻す権利が消滅し、引き出せなくなります。
 
ただし、満期後に郵便貯金通帳または貯金証書の再交付請求、印章の変更の届出、氏名の変更または住所の移転の届出などの手続きを行い、その事実が確認された場合には支払いできることもあるため、20年2ヶ月経過にかかわらず、郵便局の窓口やゆうちょ銀行の店舗に問い合わせてみることが推奨されています。
 

これまでに権利消滅した郵便貯金はどれぐらいある?

郵便貯金が満期を経過し、その後20年を経過しても払戻しの請求がない場合、「権利消滅のご案内(催告書)」が送付され、さらに2ヶ月経っても請求されないとき、郵便貯金の権利が消滅します。この金額が表中の「権利消滅額」です。
 
「睡眠貯金残高」とは、定額郵便貯金等が満期となり、通常郵便貯金となった後10年間預入や払戻し等の取扱いがないため、貯金の預入または一部払戻しの取扱いをしないこととされた通常郵便貯金残高のことです。つまり、銀行等の場合の「休眠預金」に当たるものです。
 
【図表1】

図表1

独立行政法人 郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構
睡眠貯金残高・権利消滅額の推移より筆者作成
 
年間の権利消滅額は、2020年ぐらいから顕著に増加しており、2020年度から2022年度の3年間で1000億円を超えています。また、睡眠貯金についても権利消滅の予備軍となる金額を含んでおり、郵政民営化の開始から年数が経過するごとに権利消滅に移行する金額が増加することが想定されます。
 

権利消滅とならないために

郵便局の貯金窓口またはゆうちょ銀行の店舗で、払戻しの手続きが必要となります。その際には、郵便貯金通帳または貯金証書、お届け印、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなどの本人確認書類を持参します。ただし、貯金通帳や貯金証書が見当たらない場合でも郵便貯金の有無を現存調査することで払戻しの手続きができます。
 
また、名義人が認知症等で代理人の委任状を書くことができない場合でも、当該郵便貯金を名義人のゆうちょ銀行の通常貯金口座に、そのまま入金する場合の払戻しは可能となります。ただし、名義人が認知症等で意思表示できない場合は、財産保護のために名義人の口座の入出金は停止されることになります。
 

まとめ

例えば、バブル期の最後1991年に預け入れた定額貯金は、預入から10年で満期を迎え、それから約20年(2021年以降)に権利消滅となっています。その当時は利息が4~5%ほどついていた時代であったと記憶しています。
 
なお、この記事は現行制度を基に記載しておりますが、一部報道では総務大臣が権利消滅の運用を見直し、2024年1月からはより柔軟な対応ができるよう払戻し請求に応じるとのことです。いずれにしろ、少しでも心当たりのある方は早期に払戻し手続きをするようお勧めします。
 

出典

総務省 郵便貯金の権利消滅に関するお知らせ
独立行政法人 郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構 
郵便貯金の権利消滅等に関するQ&A

 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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