更新日: 2024.10.10 働き方
扶養から外れて働いていましたが辞めることになりました。「扶養内」に戻るにはどうすればよいですか?
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
扶養に戻ることは可能だけれど……
まず、押さえておくべきことは、一度扶養から外れて働いていたとしても、再度扶養に戻ることは可能だということです。ただし、いつでも好きなタイミングで扶養に戻れるわけではありません。
その主な理由としては、扶養の場合、扶養控除という税額控除が利用できるため、その税額控除の範囲内でなければならないという決まりがあるからなのです。つまり、加入要件を満たしていなければ、扶養に戻ることはできないということなのです。
扶養にはどのような種類があるのかを知っておく
扶養に戻るメリットは、税金を払わなくて済んだり、社会保険料を支払わなくて済んだりするなどのメリットがあります。扶養の制度は、大きく分けて以下の2つに分類されます。
(1) 社会保険上の扶養:健康保険、介護保険、国民年金の保険料の控除
(2) 税法上の扶養:扶養家族の給与年収によって所得税や住民税を控除
これらは公的制度となるため、要件が明確に決まっています。
(1)社会保険上の扶養の適用要件は、下記のとおりです。
1. 労働時間・勤務日数が正社員の4分の3未満であること
2. 1年間の見込み年収が交通費、残業代および賞与を含んだ額が130万円未満であること
(ただし、年齢などによっては、年収180万円未満でも扶養の対象になる)
なお、2024年10月から、社会保険適用事業所の勤務先で従業員数が51人以上(現状101人以上)と変更となるため、今は、扶養の対象であっても、扶養から外れなければならないことがありますので注意してください。
1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
2. 月額賃金が8万8000円以上(年額106万円相当以上、残業代・賞与などは含まず)であること
3. 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること
4. 学生でないこと(休学中や夜間学生は加入対象)
5. 勤務先の従業員が101人以上(厚生年金の被保険者数)の企業である(2024年10月から51人以上)
(2)税法上の扶養の適用要件は、下記のとおりです。
(配偶者の年収が給与所得のみで1220万円以下の場合)
1. 配偶者控除の対象は、年収103万円以下であること
2. 配偶者特別控除の対象は、年収103万円超~201万6000円未満であること
このように(1)と(2)の扶養控除の適用範囲が変わってきます。できるだけ支出を抑えたいと考えているなら、いくらまで働くのか、どのような扶養控除の適用を受けたいのかを考えて働く必要があるでしょう。
また、(1)と(2)の扶養の適用要件から外れてしまっている年度については、いくら会社を辞めたとしても、扶養に戻ることはできません。
扶養に戻るための手続きを知っておく
扶養に戻るためには要件などがあり、何だか難しそうと思われるかもしれません。しかし、戻るため方法は意外とシンプルです。それは、配偶者の勤務先へ扶養の申請をするだけでよいのです。
もちろん、申請をしたときには、扶養になるための各種要件をクリアしているのかを確認して、扶養に戻れるか戻れないかを判断します。自分の場合はどうなるのか分からないなら、早めに配偶者の勤務先の担当者に相談しておくと安心です。
なお、扶養に戻るときには、配偶者の勤務先へ「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出することも必要です。忘れずに届け出るようにしましょう。
出典
国税庁 No.1180 扶養控除
日本年金機構 私は、パートタイマーとして勤務しています。社会保険に加入する義務はありますか。
厚生労働省 配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさまへ
国税庁 No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト