更新日: 2023.10.30 働き方

「年収130万円を超えそうなので調整したい」と会社に伝えると、「もっとよい方法がある」と言われました。もっと働いても大丈夫なのでしょうか?

執筆者 : 佐々木咲

「年収130万円を超えそうなので調整したい」と会社に伝えると、「もっとよい方法がある」と言われました。もっと働いても大丈夫なのでしょうか?
配偶者の扶養でいるために年収の壁を気にしながら働いている人は、そろそろ今年の年収を気にし出す頃なのではないでしょうか。12月の給与で年収130万円を超えてしまうと扶養から外れてしまうからですね。
 
あるパート労働者が会社に「勤務時間の調整をしたい」と申し出ると、「もっとよい方法がある」と言われました。どういう意味なのでしょうか。本記事で解説します。
佐々木咲

執筆者:佐々木咲(ささき さき)

2級FP技能士

社会保険の扶養に入れるのは年収130万円未満の人

多くのパート労働者が年収130万円を超えないように働く主な理由は、社会保険の扶養であり続けたいからです。配偶者の扶養であれば社会保険料の負担はなく、パートでの給与から天引きされるのは年間1万円程度の税金だけです。しかし、自身で社会保険料を負担するとなると年間20万円近く天引きされるようになります。
 
年収130万円未満なら、ほぼそのままの金額が手取り収入となるのに対して、年収130万円になると約110万円になるということです。社会保険は扶養であっても自身での加入であっても、受けられる社会保障は大きく変わらないので、「それなら収入をおさえて扶養のままで」と考える人が多いのでしょう。
 

「もっとよい方法」とは

会社から言われた「もっとよい方法がある」とは、2023年10月から始まった「年収の壁・支援強化パッケージ」のことでしょう。政府が「それなら収入をおさえて扶養のままで」と考える人を減らし、労働力不足を解消するために始めた施策です。
 
収入が一時的に上がったことで年収130万円の壁を超えたとしても、会社がその旨を証明することで引き続き扶養に入り続けることができるようになりました。会社が「もっとよい方法がある」とこの制度を提案するということは、「証明するので調整しないで働いてほしい」という意味なのではないでしょうか。
 
ただし、扶養に入り続けることができるのは連続2年間の限定である点には注意しましょう。年収130万円を超えてもずっと扶養のままでいられるわけではありません。
 
図表1

厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ
 

年収106万円に対する制度もある

社会保険の扶養といえば年収130万円の壁が有名ですが、2022年10月から従業員数101人以上の会社で働くパート労働者については年収106万円の壁が出現しています。ちなみに、2024年10月からは「51人以上の会社」が対象となります。
 
そして年収106万円の壁に対しても「年収の壁・支援強化パッケージ」に対応する制度があります。会社が社会保険料分に相当する手当などを支給して手取り収入を減らさない取り組みをした場合、会社に対してパート労働者1人当たり最大50万円の助成金が支給されるようになっている点も知っておきましょう。
 
図表2

厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ
 

まとめ

2023年10月より政府の「年収の壁・支援強化パッケージ」がスタートとしています。適用を受けるためには会社の協力が必要不可欠となりますが、すでに「もっとよい方法がある」と提案されている状態なので、証明してくれるということなのでしょう。
 
会社の証明があれば、年収130万円を超えても連続2年は扶養でい続けられるので、年末に向けて年収の調整をする必要はなくなります。まだ会社でそのような話が出ていないという人は、相談してみるとよいでしょう。
 

出典

全国健康保険協会 被扶養者とは?
厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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