更新日: 2024.10.10 働き方

手取り「19万円」の保育士です。1人で30人の子どもを見て、夜は持ち帰りの仕事でもう限界です。どうにかならないのでしょうか…?

手取り「19万円」の保育士です。1人で30人の子どもを見て、夜は持ち帰りの仕事でもう限界です。どうにかならないのでしょうか…?
保育園は、家庭に代わって小さな子どもを預かり保育する施設です。そこで働く保育士の労働環境は、「安いのに激務」と話題になることがあります。国は保育士1人が対応可能な子どもの数をもとに保育士の「配置基準」を定めていますが、実際の現場では配置基準以上の保育士が必要だといわれることも少なくありません。
 
本記事では保育士の配置基準や平均の手取り、労働環境について解説します。

保育士の平均手取りは約19万円

保育士の給与について、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」では、社会保険料や住民税、所得税などを控除する前の「きまって支給する現金給与額」は約26万円、「年間賞与その他特別給与額」は約69万円とされています。
 
一般的に手取りは額面の75%~80%といわれているため75%として計算すると、1ヶ月当たりの手取りは19万5000円になります。月の手取りが20万円を超えないとなると、決して給与が高いとはいえないでしょう。
 

保育士の配置基準

保育士の配置基準とは「子どもの人数に対して何人の保育士の配置が必要か」という基準で、国の法律で定められるものです。子どもたちの年齢によって保育士の配置人数は異なります。
 
「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」によると、子どもの人数に対する保育士1人の配置基準は図表1のとおりです。
 
図表1

「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」をもとに筆者作成
 
年齢が上がるごとに「手がかからない」と判断されるのか、より多くの子どもを1人の保育士で対応しなければなりません。
 
しかし、例えば4~5歳児30人を1人で対応するのは実際とても大変なことです。そのため、多くの保育士では配置基準以上の保育士を雇用しています。
 
国の補助金はこの配置基準をもとに支払われるので、配置基準を超えた人件費は保育園側が負担することになります。保育園の経営に負担がかかり、保育士の給与が上がりにくいという実態があるのでしょう。
 

保育士は持ち帰り仕事が多い?

保育士は持ち帰りの仕事が多いといわれています。大分県が2018年に行った調査によると、現役保育士の71%が「持ち帰り仕事があった」と回答しています。持ち帰りの仕事にかかった時間は「10時間以上」が52%と半数を超えており、持ち帰りの仕事にかかる負担の大きさがうかがえます。
 
同調査では持ち帰りの仕事の内容として、以下が挙げられました。

●行事の準備
●保育計画等の書類作成
●クラス便りの作成
●季節の掲示物の作成
●新年度の準備
●勤務表作成
●発表会の大道具、衣装づくり

日中の業務時間内は子どもの対応に追われ、事務作業や製作を業務時間内に終わらせることができず、自宅に持ち帰る人が多いことが推測されます。
 

保育士の労働環境の改善

国は保育士の処遇改善を行うなど労働環境の改善に取り組んでいます。2022年2月からは月額9000円(収入の3%程度)程度の賃上げが実施されました。その給与の引き上げを継続できるように、2022年10月からは公定価格(子ども1人あたりの単価)に「処遇改善加算III」が加わりました。
 
また自治体によっては独自に保育士の配置基準を設け、園側の負担を少なくするなどの取り組みも行っています。
 

保育士と聞くと「大変なのに給料が安い」というイメージがある人も多いかもしれません。手取りは20万円未満で持ち帰りの仕事も多いなど、想像以上に過酷な労働環境であることがわかりますね。
 
保育士の待遇を良くするための施策は行われているものの、依然として業務量と給与が見合っていないと感じる保育士も多いことでしょう。今後、保育士の待遇がより良いものになるよう期待しましょう。
 

出典

厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査
大分県 保育現場の働き方改革に関するアンケート調査結果について(概要版)
 
執筆者:山田麻耶
FP2級

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