更新日: 2024.10.10 その他家計
野菜ジュースで「1日分の野菜」が摂れるなら、野菜は食べなくていいですか? 高くて買えないので、できれば節約したいです…
野菜ジュースの中には「1日分の野菜が摂(と)れる」とうたっている商品も販売されているため、「野菜ジュースを飲めば本物の野菜は食べなくてもよいのでは?」と思っている人もいるのではないでしょうか。栄養面で本当に野菜の代わりになるかどうか、本記事では、野菜と野菜ジュースの価格や栄養面について解説します。
執筆者:山田麻耶(やまだ まや)
FP2級
野菜の摂取目標量と現状
「野菜を1日350g食べましょう」という標語を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
野菜にはカリウムや食物繊維、抗酸化ビタミンなどが含まれており、摂取することで循環器疾患やがんの予防が期待できます。厚生労働省が健康づくりの指標として定める「健康日本21」では、成人は1日あたり野菜を350g以上摂取することが望ましいとされており、この量の野菜を摂取することで、健康の維持に役立つ栄養素を十分に摂取できるということです。
しかし、令和元年国民健康・栄養調査の結果の概要によると、成人の野菜摂取量の平均値は約280.5gとなっています。350gの目標量に対し約8割の摂取量です。
目標量である350gを摂取できているのは男性で30.1%、女性で26.5%となっており、多くの人が摂取すべき目標量に及んでいないことがわかります。
野菜の年間支出額
2022年総務省統計局 家計調査(家計収支編)によると、単身世帯の「生鮮野菜」の年間の支出金額は2万9297円となっています。生鮮野菜とは加熱処理などされていない野菜のことで、キャベツやほうれんそうなどの葉茎菜、じゃがいもやたまねぎ、にんじんなどの根菜などが該当します。
現状、約8割の野菜摂取量であることから試算すると、目標量350gを達成するための「生鮮野菜」年間支出額は3万6621円です(2万9297円×1.25=3万6621円)。
野菜ジュースの年間支出額
同調査によると、単身世帯の「果実・野菜ジュース」の年間支出額は4413円となっています。もし生鮮野菜を買わずに毎日野菜ジュースを飲んだ場合、年間でいくらかかるのでしょうか。
野菜ジュースは紙パックや缶、ペットボトルに入ったものまで、さまざまな種類があります。ここではコンビニやスーパーなどでよく売られており、手軽に摂取できる紙パック(200ml入り)の野菜ジュースで試算してみましょう。
野菜ジュースの平均価格は1パック(200ml)あたり102円です。1日に1本飲んだとすると、年間で3万7230円かかる計算になります(102円×365日=3万7230円)。生鮮野菜の年間の平均支出額より約600円高いですが、わずかな差です。
野菜ジュースの栄養素
金額もそれほど変わらず、調理にかかる手間がかからない、保存期間が長いなどのメリットを考えると、野菜ジュースを毎日1パック飲むほうが良いと考える人もいるかもしれません。
しかし、野菜ジュースはあくまでも「不足しがちな野菜を補うもの」であり、完全に野菜の代わりにはなりません。野菜ジュースは生の野菜と比較すると、一部の栄養素が不足しています。多くの野菜ジュースが濃縮還元という製法で作られており、加熱する過程で熱に弱いビタミンCが、搾る過程で食物繊維が失われています。
野菜ジュースを販売している各会社も、野菜摂取の「補助」や「サポート」として野菜ジュースを摂取することを勧めています。
野菜ジュースはあくまで不足した栄養を補うもの
野菜ジュースは、忙しいときでも手軽に栄養が摂取できる優れた食品です。しかし、完全に野菜の代わりになるというわけではありません。野菜ジュースだけを摂取していると、ビタミンCや食物繊維など不足しやすい栄養素もあり、「1日分の野菜が摂れる野菜ジュースを飲んでいるから、野菜を食べなくても大丈夫」とは言い切れません。
そのため、野菜ジュースは「今日の食事は野菜が少ないかも」と感じたときに、栄養素を補助する目的で飲むといったスタイルが望ましいでしょう。
出典
厚生労働省 健康日本21 栄養・食生活
厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要
総務省統計局 家計調査(家計収支編)2022年
執筆者:山田麻耶
FP2級