更新日: 2023.12.22 働き方

最近、扶養から外れて働く人が多い印象です。やはり家計を考えるともっと稼ぐべきなのでしょうか?

執筆者 : 飯田道子

最近、扶養から外れて働く人が多い印象です。やはり家計を考えるともっと稼ぐべきなのでしょうか?
物価高や子どもの教育費の負担増加などから、働き方を変える人は増えています。その結果、配偶者の扶養から外れて働いている人もいるでしょう。
 
周りの人が扶養から外れて働いているのを目にすると、ご自身が扶養内で働いている場合、損をしているかもしれないと不安になってしまう人もいるかもしれません。
 
扶養内で働いている場合、損なのでしょうか? いったいどれくらい損をしてしまうのか、考えてみましょう。
飯田道子

執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。

https://paradisewave.jimdo.com/

定番の103万円の壁とその他の壁について

配偶者の収入が年間103万円以下の場合、配偶者控除48万円+給与所得控除55万円となるため、103万円-(48万円+55万円)=0円で税金等はかかりません。これがいわゆる103万円の壁であり、税金も年金等も何も支払いたくない場合には、103万円を意識して働くことが多いようです。
 
<その他の壁>
1社で働いて得た収入が年間106万円を超える場合には、勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務が発生します。また、所得税も支払わなければなりません。
 
複数からの収入が年間130万円を超える場合には、扶養から外れることになります。もし、勤務先の社会保険の加入条件に該当していないときには、国民健康保険や国民年金に自ら加入しなければなりません。
 
配偶者には、配偶者控除のほか、配偶者特別控除があります。たとえば妻がパートで働いている場合、年収150万円までなら配偶者特別控除は満額適用されますが、年収が増えるごとに控除額は減額し、201万円で配偶者特別控除はなくなる仕組みになっています。
 
さまざまな壁があり、混乱してしまいそうですよね。103万円の壁を超えなければ、税金、社会保険料等は一切、生じることはありませんが、106万円、130万円、150万円、201万円と収入が増えるたびに、支払うべき(加入すべき)ものが増えていきます。
 
また、企業によっては、配偶者の収入にあわせて手当を支給しているところもあります。収入が増えるほど手当は減っていきますので、配偶者の会社の福利厚生にも注意する必要があります。
 

103万円と106万円を比較してみよう

103万円で働いている場合、残業等で106万円を超えてしまう可能性は高いです。収入は少しでも多いほうが良いと考えると思いますが、収入が103万円なら、所得税も社会保険料等の支払いは生じません。
 
一方、年収106万円の場合、所得税は年間1500円、社会保険料は15万7080円かかります。
 
106万円-(1500円+15万7080円)=90万1420円
 
計算の結果、年収106万円では手元に残るのは90万1420円となります。

~計算式~

106万円-給与所得控除55万円-配偶者控除48万円=3万円
3万円×5%=1500円

社会保険料は、月額8万8000円の収入があるとして計算をします。


・健康保険料:1万76円(折半額5038円)
・厚生年金保険料:1万6104円(折半額8052円)
・社会保険料合計:2万6180円(折半額1万3090円)

※介護保険ありのケース

 

~計算式~

1万3090×12ヶ月=15万7080円

社会保険料を無視した場合、103万円の壁を意識したほうが、106万円の壁を意識したときよりも15万8580円多く手元に残る計算です。ただし、金額的には手元に多く残りますが、将来の保障は薄くなる可能性がありますので、その点は留意しましょう。
 

自分にあった働き方を考えよう

周りの人が扶養から外れて働いていると聞くと、自分もそうしなければならないと考える人は少なくありません。ただ、子どもの年齢や家族構成、自分の健康状態、配偶者の福利厚生等は、家庭ごとに違いがあります。
 
無理に働く時間を増やしてしまうと、病気になってしまったり、子どもを保育園に預けなければならなかったりと、想定外の支出が増えてしまうことも考えられます。
 
反対に、身体的にも環境的にも余裕があり、もっと働きたいと考えているなら、103万円の壁を意識して仕事をセーブしてしまうのはもったいないことです。社会保険に加入できれば、将来、受け取れる年金も増えますので、悪いことばかりではありません。
 
自分にあった働き方はどのようなものなのかを考え、扶養から外れて働くのか、扶養内に留めるのかを考えることが大切です。
 

出典

国税庁 No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか
全国健康保険協会 令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
 
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

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