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更新日: 2024.10.10 働き方

パートでも「異動命令」に従うべきですか? 育児中なので近所で働いているのですが、「人が足りないから」と別店舗へ異動するよう言われました。ほかのパート先を探したほうがいいでしょうか…?

パートでも「異動命令」に従うべきですか? 育児中なので近所で働いているのですが、「人が足りないから」と別店舗へ異動するよう言われました。ほかのパート先を探したほうがいいでしょうか…?
「近くて通いやすいから」と選んだ近所のパート先。なのに通勤時間のかかる他店舗への異動を命じられたら、困惑することでしょう。「異動は嫌だから、もう退職してしまおうかな」と思う人もいるかもしれません。
 
本記事では、パートへの異動命令の可否や拒否できるケース、異動命令を受けた場合に確認することなどについて解説します。
橋本典子

執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)

特定社会保険労務士・FP1級技能士

異動命令は拒否できる?

パート選びのファクターの1つに「通勤のしやすさ」があると思います。家事や育児に忙しい主婦(夫)ならなおのこと、少しでも通勤時間がかからないようにと、自宅近所の職場を探す人が多いでしょう。
 
そうして選んだパート仕事なのに、異動命令が出ることはあるのでしょうか。そもそも、パートにも異動はあるのか、また拒否することはできるのかについても見ていきましょう。
 

パートにも異動はある

正社員と比べれば少ないものの、パートにも異動命令が出ることがあります。雇用契約書や就業規則に「異動を命じることがある」などの記載がある場合は、そもそも異動がある前提で雇われているため、原則として拒否できません。もし従わなければ、業務命令違反として懲戒処分の対象になる可能性もあります。
 

異動を拒否できるケースは

しかし異動命令を拒否できることもあります。それは次のようなケースです。

●異動により、従業員が大きな不利益を被る場合
●パワハラなど、不当な動機や目的による異動命令の場合
●業務上の必要性がない場合
●雇用契約により、勤務地が限定されている場合

勤務地を限定されて雇われているときは、会社からの一方的な命令で異動させることはできず、異動には本人の同意が必要となります。
 

異動を命じられたら

では実際に異動命令を受けてしまい、かつ異動を拒否したいときはどうすればよいのでしょうか?
 

雇用契約書などを確認

まず雇用契約書(または労働条件通知書)や就業規則を確認しましょう。雇用契約書などに異動の可能性を示唆する表現があるときは、原則として命令に従う必要があります。
 
なお雇用契約書の「就業の場所」の欄に、現在勤めている店舗名しか書かれていないからといって、必ずしも「就業場所が限定されている」とは言い切れません。なぜなら2024年1月現在、雇用契約書(または労働条件通知書)には、雇入れ直後の就業場所を記載すれば足りるからです。
 
ちなみに法改正により、2024年4月以降は、雇入れ直後の就業場所とともに「異動する可能性のある就業場所すべて」の記載義務が生じることになります。例えば雇入れの際にA店で働くことになっても、異動の可能性がある場合はA店とともに、異動可能性のある「B店、C店」または「D市内の店舗」など範囲が記載されます。
 

異動後の待遇も確認する

異動後の待遇についても確認しておきましょう。就業場所だけでなく、賃金、勤務日や勤務時間などに変更が出る可能性があるからです。
 
異動後の待遇が良く、特に賃金が上がる場合などは、異動命令を受け入れる選択肢も出てきます。たとえ通勤時間が長くなっても賃金がアップするなら、考慮の余地はあるでしょう。
 

異動命令を拒否したいときは

それでも、やはり異動を拒否したい人もいるかと思います。特に小さな子どもや介護が必要な家族がいる場合などは、ある程度、家庭を優先する必要があるかもしれません。そのような場合は「育児や介護をしているため、通勤時間のかかる店舗には異動できない」と会社に相談してみましょう。
 
育児・介護休業法では「就業場所の変更により、育児または家族の介護が困難となる労働者に対しては配慮をしなければならない」と定められているため、会社も事情を考慮してくれる可能性が高いでしょう。
 

まとめ

正社員より頻度は少ないものの、パートにも異動命令が出ることがあります。そして雇用契約書や就業規則に異動の可能性が明記されている場合は、原則として拒否できません。ただし、雇用契約書等に就業場所が限定されていれば、異動には本人の同意が必要になります。
 
異動を前向きにとらえる考え方もありますが、家庭の事情などでどうしても異動できない場合には、たとえ雇用契約書などで異動の可能性が示唆されている場合でも、会社と話し合ってみましょう。
 

出典

厚生労働省 裁判例 2-2 「配置転換」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性
厚生労働省 2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?
e-Gov法令検索 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
 
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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