社用車を不注意でぶつけてしまった…!会社から「修理代は給与から引く」と言われましたが、これっておかしくないですか?

配信日: 2024.01.30 更新日: 2024.10.10

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社用車を不注意でぶつけてしまった…!会社から「修理代は給与から引く」と言われましたが、これっておかしくないですか?
営業などで社用車を運転する機会のある方には、仕事中の事故で車を傷つけてしまうリスクがあります。万が一、自身の不注意で車をぶつけてしまった場合は、修理代を給与から天引きされてしまうのでしょうか?
 
今回は、社用車による事故の修理代について、関係する法律や過去の事例も含めて調べてみましたので、参考にしてください。
FINANCIAL FIELD編集部

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社用車による事故は会社にも責任が発生する

社用車で仕事中に事故を起こしてしまった場合は、従業員だけではなく会社にも連帯責任が生じることが、民法第715条で定められています。

(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

※出典:デジタル庁 e-Gov法令検索 民法 第三編 債権 第五章 不法行為 (使用者等の責任) 第七百十五条
 
会社は事業活動によって利益を得ているため、従業員が事業活動として社用車を運転する際のリスクも負わなければなりません。これは「報償責任の法理」と呼ばれ、従業員のミスで会社に損害が生じたとしても、従業員の責任は限定的であり、すべての損害について賠償させることはできません。
 

不注意で事故を起こしてしまった場合に請求される損害賠償の割合は?

社用車による事故では、運転していた従業員と会社のどちらにも責任が生じます。損害賠償の割合については、ケース・バイ・ケースです。
 
最高裁判所の判例では、以下のように述べられています。

使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。

※出典:裁判所 裁判例検索 裁判例結果詳細 最高裁判所判例集 事件番号 昭和49(オ)1073 全文
 
上記の見解は、石油などの輸送・販売をしている会社で、従業員がタンクローリーの運転をしているときに事故を起こした際の裁判で述べられました。この裁判では、従業員に対して賠償および求償を請求できるのは、四分の一が限度であるとされました。
 

修理代の給与天引きや損害賠償予定は法律違反

修理代の一部を従業員に請求する場合、給与からの天引きは法律違反になるため、注意が必要です。労働基準法第24条では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められています。
 
また「事故を起こした場合は修理代の〇%を支払うこと」など、賠償金や修理費の負担金額についてはあらかじめ定めておくことも禁止されているため、注意が必要です。これは「賠償予定の禁止」といい、労働基準法第16条で「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定められています。
 

「修理代は給与から引く」は違法の可能性が高い!

社用車の事故では、運転していた従業員だけではなく、会社にも連帯責任が生じます。会社が修理代や賠償金の一部を従業員に請求することは可能ですが、給与から天引きすることは法律違反になります。
 
請求額の割合については、事業の性格や労働条件、従業員の勤務態度など、さまざまな点が考慮されるため、事故でトラブルにあった場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。
 

出典

デジタル庁 e-Gov法令検索
 明治二十九年法律第八十九号 民法 第三編 債権 第五章 不法行為 (使用者等の責任) 第 七百十五条

 昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法
  第三章 賃金 (賃金の支払) 第二十四条
  第二章 労働契約 (賠償予定の禁止) 第十六条

裁判所 裁判例検索 裁判例結果詳細 最高裁判所判例集 事件番号 昭和49(オ)1073 全文
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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