更新日: 2024.10.10 働き方
パートで10年働きました。会社の契約社員の方は3年以上勤務で退職金をもらっていますが、私も受け取れますか?
本記事では、パートタイマーが退職金をもらえる可能性のある条件や、正社員との格差がある場合の考え方について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
【前提】会社の就業規則に定めがなければ会社は退職金を支払わなくてもよい
退職金をもらえるかどうかを考えるときに、まず確認すべきは、会社に退職金制度があるかどうかです。退職金の支給は、会社に法的な義務があるものではありません。そのため、会社が退職金制度を設けていない場合、会社は従業員に退職金を支払わなくても問題ないのです。
表題のように有期雇用の契約社員に退職金が支払われる会社では、非正規雇用の従業員の退職金に関する規定が設けられている可能性があります。退職金制度がある場合は、パートタイマーに関する規定があるかどうかを確認しましょう。
規定があれば、会社には規定に従う義務があります。要件を満たした場合にはパートタイマーにも退職金が支払われるでしょう。支払われなければ、その会社は労働基準法に抵触していることになります。
パートが退職金をもらえるかどうかは同一労働同一賃金の観点がポイント
パートが正社員や契約社員のようなフルタイムの従業員と同じように退職金をもらえるかどうかを考えるときにポイントとなるのが「同一労働同一賃金」の考え方です。ここでは、同一労働同一賃金とはどのような考え方なのか、退職金の支給の有無と同一労働同一賃金にどのような関係があるのかを、裁判所の判例などを交えて解説します。
同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者と、パートタイマーや派遣社員などの非正規雇用労働者との不合理な待遇差の解消を目的に、パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法に盛り込まれた考え方です。厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」には、主に次のようなことが示されています。
・労働や貢献の実態が同じであれば、雇用形態にかかわらず同じ給与・賞与を支払わなければならない
・各種手当は条件が同一であれば、雇用形態にかかわらず同一に支給しなければならない
・正社員とパートタイマー、有期雇用労働者に異なる基準・ルールを設けるときは客観的・具体的な実態に照らした合理的な内容でなければならない
・要件が同一であれば同一の福利厚生を付与しなければならない
つまり、職務内容や責任などが同じ場合は、パートタイマーであっても、合理的な理由なしに正社員などの正規雇用労働者と待遇に差をつけてはならないというのが、同一労働同一賃金の考え方です。
パートであることだけを理由に退職金が出ないと違法の可能性がある
ガイドラインに退職金に関する明示はありませんが、退職金も同一労働同一賃金の対象になると考えられています。
正社員と契約社員の退職金格差について争われた「メトロコマース事件(事件番号令和1(受)1190)」では、業務内容や責任の程度の差、人事異動の有無、退職金の支給目的が継続的な就労を期待される正社員の確保であることなどを理由に、退職金格差が違法ではないとの判決が下りました。
この判決を裏返すと、職務内容のほか、責任の程度、人事異動の有無などの条件が正規雇用労働者と変わらない場合、パートタイマーであることだけを理由に退職金の有無や金額の算定に格差をつけることは、不合理であり同一労働同一賃金の原則に反すると判断される可能性が否定できないでしょう。
パートでも社内の規定を満たせば退職金がもらえる可能性がある
パートタイマーでも、勤務先に退職金の規定があり、支給要件を満たしている場合には退職金をもらえる可能性があります。退職金は勤続年数などをもとに算定される場合が多いため、社内の規定を確認してみるとよいでしょう。
また、パートであることだけを理由に退職金が支払われない場合、同一労働同一賃金の原則に違反している可能性があります。待遇の違いに疑問があるときは、なぜ違うのかを事業主(店長、社長など)に聞いてみましょう。
出典
厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン
裁判所 裁判例結果詳細
厚生労働省 同一労働同一賃金特集ページ
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー