更新日: 2024.10.10 働き方

うちの会社は1日「30分未満」の残業代は出ません。これって適法ですか? たぶん1ヶ月で「1万円」くらいになるのですが、請求はできないのでしょうか…?

うちの会社は1日「30分未満」の残業代は出ません。これって適法ですか? たぶん1ヶ月で「1万円」くらいになるのですが、請求はできないのでしょうか…?
会社という組織で働くと分かりますが、それぞれ独自の「ルール」が設けられています。制服はこれ、始業・終業時間は何時、第2土曜は休みなどですね。転職経験がある人であれば、会社によってルールが異なることを知っているでしょう。
 
本記事では、残業代の出し方が「1日30分未満切り捨て」という会社について考えてみます。これは単に会社のルールとして認められる話なのでしょうか?
佐々木咲

執筆者:佐々木咲(ささき さき)

2級FP技能士

残業代は原則として1分単位

残業代を「1日30分未満切り捨て」とすることは違法です。労働基準法第24条には、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定められていることから、残業代は労働時間1分単位で計算するのが原則となっているからです。いくら会社にルールがあったとしても、国の法律はルールの根幹なので、当然ながら法律が優先されます。
 

1ヶ月の残業時間合計は30分未満切り捨てOK?

ただし、残業時間を1分単位で管理することは事務的負担を要すると考えられます。そこで、1ヶ月の残業時間の合計に1時間未満の端数がある場合には、「30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げることができる」という例外が認められています。
 
例えば、1ヶ月の残業時間が20時間28分だった場合、28分は切り捨てられて20時間に対する残業代が支給されます。反対に20時間32分だったら、21時間に対して残業代が計算することが認められています。
 
しかし、原則的には、毎日の時間外労働は1分単位で正確に計上するのが正しい労働時間管理です。労働時間の端数計算を、四捨五入ではなく常に切り捨てで計算することは、切り捨てられた時間分の賃金が未払となるため認められていません。
 

毎日10分残業していた場合の残業代

仕事をしていると、終業時間ギリギリに電話がかかってきたなどで少しだけ残業するケースがあるのではないでしょうか。そこで、平均して毎日10分残業した場合の残業代を計算してみましょう。月給32万円、月の所定労働日数と時間は20日と160時間として計算します。
 
残業時間
 
10分×20日=200分(3時間20分)
 
残業代
 
32万円÷160時間×1.25=2500円
 
3時間20分×2500円=8333円(50銭未満切り捨て)
 
毎月1万円弱の残業代がもらえていない計算になりました。年間にすると10万円にもなるので、大きな損失といえるでしょう。
 

1日30分未満の残業代がもらえないときの対処方法

まずは会社に相談しましょう。残業代は原則として1分単位であることを、会社が知らない可能性もあるからです。それでも会社が対応しないようであれば、次の流れで動くとよいでしょう。

・証拠集め
 
・再度会社に相談
 
・労働基準監督署に相談
 
・弁護士に相談

まずは証拠がないと話にならないので、タイムカードや雇用契約書、給与明細などの資料を集めます。次に、それを持って改めて会社に相談します。労働基準監督署に相談する旨を伝えると効果的でしょう。残念ながらそれでも対応してくれないのであれば、伝えた通り労働基準監督署に相談しましょう。
 
ただし、労働基準監督署が、必ず是正指導・勧告等の措置を取ってくれるかは分かりません。対応に時間がかかる可能性も高いです。それに不満がある場合には、お金はかかりますが依頼者の味方として柔軟な対応ができる弁護士に依頼するとよいでしょう。
 

同じ思いをしている仲間と進める

会社と残業代の交渉を進めていく場合、他の従業員と共同するとさらに強い力になるのでおすすめです。会社ともめるということは、その後に会社に居づらくなってしまう可能性もあるので、味方を作ってから始めたほうがよいでしょう。
 
残業代が出ないことに不満を持たない人の方が少ないと思うので、従業員全員で協力できればこれほど心強いことはありませんね。
 

まとめ

残業代は原則として1分単位で計算されなければならないので、1日30分未満の残業代が出ないのは「違法」です。まずは同じ思いをしている従業員と共同して会社に相談しましょう。誠実な対応がないのであれば、労働基準監督署や弁護士への相談を検討しましょう。
 

出典

e-Gov法令検索 労働基準法
大阪労働局 よくあるご質問(時間外労働・休日労働・深夜労働)
東京労働局 よくあるご質問 3.残業手当等の端数処理はどうしたらよいか
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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