更新日: 2024.10.10 働き方
パート先から契約社員になってほしいといわれました。契約社員になるメリットってなんですか? パート社員との違いは?
人手不足の中で、パート社員から契約社員、短時間正社員、正社員などいろいろな働き方を利用しながら、いかにこの人手不足を補うかというのは企業にとって大問題です。
ただ、正社員の都合によって正社員以外にしわ寄せがくるのはよくあること。しわ寄せされる契約社員やパート社員はいずれも「非正規職員」といわれる分類ですが、違いが分からないという方もいらっしゃるでしょう。それぞれどのような雇用形態なのかを知り、自分のキャリアを考えてみるのはいかがでしょうか。
執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
パート社員と契約社員……何が違うの?
パート社員や契約社員とは、いずれも非正規社員の呼び方の1つです。勤め先によっては、「時給で働いている方をパート社員とする」などという独自の定義はあるかもしれませんが、いずれにせよ非正規社員の分類内で、それぞれがはっきり分かれる定義はほとんどないといえるでしょう。
契約社員は「契約期間がある社員」のことをいいますが、「パート社員はまとめて“雇用契約を4月1日から3月31日まで”とする」というような契約を毎年自動更新で行う会社もあります。
ただ、パート社員よりも契約社員のほうが正規の社員に準じる働き方、たとえば、パート社員なら労働時間が自由に決められ、契約社員は労働日や労働時間が正社員に準じるという違いのあるケースが多いかもしれません。つまり、これらの違いというのは、説明が難しいといわざるを得ません。
就業規則、契約書…ちゃんと書面で労働条件を確認できていますか?
前段では、パート社員と契約社員にはほとんど違いはないと説明しました。ただ詳細については、企業独自の取り決めとなりますので、就業規則や雇用契約書などの「書面」を見ないことにはわかりません。
書面における定義によって、採用後のキャリアアップのステップや研修制度が違ったり、福利厚生や賃金構成などが異なったりすることもありますので、自分の会社ではどの社員が何と定義されているかを確認するのは大切なことです。
契約期間の定めはもちろんのこと、
・契約期間終了後はどうなるのか
・同条件で自動更新をするのか、それとも5年後に無期雇用社員への転換してもらえるのか
・転換後の条件は固定給か
・手当や賞与はつくのか
など、確認するべき項目はたくさんあります。
近年、給与明細はウェブ上で確認できる、就業規則はクラウド上でダウンロードできる形式、もしくは雇用契約書を電子交付するなど、デジタル化が進んでいる関係で、わざわざ印刷する手間を省いている人は多いでしょう。社会保険料や税金がどれくらい控除されているのか、自分で把握していないこともあるはずです。このような不確定な部分を確認するのが書面なのです。
あなたのこだわりポイントを見つめ直そう
今回は、「パート社員から契約社員にならないか」という勤務先(パート先)からの提案という形でしたが、自分の働き方が認められたということですので、今後はさらなるキャリアアップを求めるきっかけにするのはいかがでしょうか。
今回はパート社員か契約社員という選択肢を提案されましたが、子どもの成長に合わせていずれ正社員で働きたいという希望があるのであれば、契約社員から正社員へのステップアップを望めるかどうか、キャリアプランを勤務先に確認しておくのもいいでしょう。
非正規社員が正社員へのステップとするのであれば、働くモチベーションとなるでしょうが、契約社員として「3年」や「5年」などの契約期間が決められ、その後は契約できない、もしくはいったん退職することが前提なのか確認をしておきたいものです。
雇用契約書で期間が定められていても、どうせ自動的に更新されるのでそういうものだと思っていたという方もいらっしゃるでしょう。しかし、契約書にはとりあえず期間を入れて、なんとなくうやむやのままで、更新する際でも内容の確認ができていないこともよくあるケースです。
ただ、書面にて期間が書いてあれば、そこは契約事項として決定事項となります。契約期間の終了後の取り扱いについては確認しておくべき優先事項です。
では、パート社員のままでいるのか、それとも契約社員になるのか、結局はどちらがいいのかという冒頭の質問に戻りますが、まずは双方の労働条件をしっかりと書面で比較することが必要でしょう。
雇用期間、期間終了後の更新の条件、勤務時間や勤務日、定年や退職金の有無、時給か月給かなど、会社によって労働条件はさまざまです。会社の提示する条件と自分の望む働き方が合致しているのか、書面でわからなければ上司に、上司で回答できないなら会社の総務など、不明点をクリアにしてから判断するといいでしょう。
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。