更新日: 2024.10.10 働き方
仕事で「5分」の残業をしたら、上司に「ウチでは切り捨てだよ」と言われました。5分くらいでも“残業時間”にカウントされますか? 実際どうなのでしょうか?
本記事では短時間の残業であることを理由に、労働時間を切り捨てて残業申請することの問題点について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
賃金の支払い方法は法律で決まっている
結論としては、短い時間であっても、原則として労働時間を切り捨てることは認められません。認められない理由には、賃金の支払い方が関わっています。賃金の支払い方法は、労働基準法第24条で決まっており、賃金支払いの5原則といわれています。以下の原則に基づいて、会社は従業員に賃金を支払わなければなりません。
通貨払いの原則
例えば日本円など、一般的に流通する通貨で賃金を支払わなければなりません。現時点の価値が非常に分かりにくい現物による給与支給を禁じています。
直接払いの原則
働いた本人以外に賃金を奪われないよう、原則として直接本人に支払わなければならないと定められています。
全額払いの原則
直接払いの原則と同じく、労働の対価として受け取るべき賃金が、滞りなく働いた本人の手元に届くよう、一度に全額を支払うことが決められています。ただし例外として、税金の源泉徴収など、一部控除が認められているケースもあります。
毎月払いの原則
賃金をいつ受け取れるのかが分からないと、収入のタイミングが読みづらく、不安を抱えながら生活することになってしまいます。そうならないために、支払い間隔が開きすぎることがないよう、毎月支払うことが定められています。
一定日払いの原則
毎月払いと同様、支払われる日も一定でないと計画的な生活ができなくなってしまいますので、毎月決まった日に支払わなければなりません。
労働時間の切り捨ては賃金の全額払いの原則に反する
賃金支払いの基になる労働時間を切り捨てて申請することは、働いた分の賃金が支給されないこととなり、賃金の全額払いの原則に反してしまいます。
また、会社によっては労働時間管理が、15分単位などで決められているケースもあるでしょう。しかし原則的には、労働時間の把握は1分単位で正確に計上するのが正しい労働時間管理です。この観点からも、労働時間の端数を常に切り捨てることは正しいとはいえません。
例外的に切り捨てが認められている2パターン
例外的に以下の場合は、労働時間を切り捨てても賃金の全額払いの原則に違反していると取り扱わないことになっています。
1ヶ月の合計労働時間に30分未満の端数がでた場合
時間外労働、休日労働、深夜労働のそれぞれの1ヶ月あたりの合計時間数に1時間未満の端数がある時は、30分未満は切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることが認められています。ただし、あくまでも1ヶ月が最小単位です。今回のケースのような1日単位での切り捨ては認められていません。
1円未満の単位の賃金が発生した場合
給与計算時に、1時間当たりの賃金や割増賃金に1円未満の端数が発生した場合、50銭未満の端数を切り捨てて賃金を支払うことは認められています。ただし、端数が50銭以上の場合は、1円に切り上げることで、全体のバランスをとっています。
また、1日ではなく、1ヶ月における時間外労働、休日労働および深夜労働それぞれの割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合も、同様に扱います。
労働時間の切り捨てはNG! 半端な時間の処理は適切に行おう
たとえ短い時間の残業であったとしても、賃金の全額払いの原則に反してしまうため、働いた時間の切り捨ては認められていません。上司の理解ももちろん大事ですが、まずは自分自身が正しい知識を身につけて、適正な残業申請を行いましょう。
出典
厚生労働省 賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい
大阪労働局 よくあるご質問(時間外労働・休日労働・深夜労働)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー