電車の遅延によって遅刻してしまった場合、遅刻分は「減給」扱いになるのでしょうか? また「有給休暇」を使うことはできますか?
配信日: 2024.12.06
通勤中の交通機関の遅延は、自分では避けられない問題ですが、遅刻扱いになってしまうと給料に影響が出るのかは気になるところです。遅刻による「減給」扱いや、遅刻分をカバーするために「有給休暇」を使うことができるのかについて、会社側はどのような対応をするのかを解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
電車が遅延した場合の手続きについて
東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は、営業列車が運行中、当社線内で概ね5分以上の遅延が発生した場合、遅延証明書を受け取ることができるとしています。
この証明書には、該当路線で発生した最大遅延時間が記載されています。事故などで列車が運転できない場合や遅延が発生した場合、旅客営業規則に基づき、定められた範囲内でのみ対応してもらえるということです。JR東日本における主な対応は表1の通りです。
表1
状況 | 対応内容 |
---|---|
きっぷ購入前(列車が運転できない場合) | 運行できない区間を含むきっぷの販売を中止 |
既にきっぷを持っている場合 (列車が運転できない場合) |
・旅行を中止した場合、運賃・料金を全額払い戻し ・途中で旅行を中止した場合、未乗区間の運賃を払い戻し ・運休した列車の特急・急行料金を全額返金 |
出発駅へ戻る場合 (列車が運転できない場合) |
無料で出発駅へ戻り、運賃・料金を全額払い戻し |
定期券 (列車が運転できない場合) |
5日以上の連続不通時に限り、有効期間の延長または払い戻し |
特急・急行列車が2時間以上遅れた場合 | 特急・急行料金の全額返金 |
乗り換え列車に間に合わず、到着時刻から2時間以上遅れる場合 | 途中で中止または出発駅へ戻る場合の対応は、列車が運行できない場合と同様 |
お得な特急・急行割引きっぷを利用している場合 | 商品によって払い戻し条件が異なるため、詳細は係員に確認 |
出典:JR東日本「事故などの場合の取り扱い」より筆者作成
電車の遅延で遅刻をしたら給与減給対応は会社によって異なる
電車通勤をしていると、人身事故や天候などで電車が遅れることも度々あることから、遅延証明書を提出すれば遅刻扱いにならないと思いがちです。しかし、この場合に重要になってくるのが、民法第624条に基づく「ノーワークノーペイの原則」です。
民法第624条:「労働者は、約束した労働を終えた後でなければ報酬を請求できない。」
「ノーワークノーペイの原則」とは、労働をしていない時間には賃金が支払われないという意味です。つまり、会社は遅刻して働かなかった時間に対して、賃金を支払う義務はなく、法的に問題はありません。
列車の遅延時に有給休暇を使うことについて
電車の遅延で出社が遅れる場合、有給休暇をどう使うかは次の点を考慮する必要があります。
電車の運行停止で午前7時に駅に到着したものの、復旧が午前11時までかかり、さらに入場規制で待機した場合、復旧後に午後2時に会社に到着した場合と、午後2時を過ぎると判断して12時に休む旨を連絡した場合を考えます。
午後2時に到着した場合、遅延証明書を提出すれば、会社が「やむを得ない」と認めて遅刻として扱うことも多いのですが、最終的には会社の承認が必要です。自己判断で欠勤を決めずに、会社に確認することが重要です。到着が午後2時を過ぎてしまうことから出社を断念した場合、その日は全休となり、欠勤扱いになる可能性があります。
遅延証明書があれば、遅刻分の給与カットは免除されることも多いですが、午前9時の出社扱いにはできません。
要するに、遅刻の場合も会社の承認を得て扱いが決まるため、自己判断せず、必ず会社に連絡して指示を仰ぐことが重要です。また、出社を断念した場合、会社が認めるのであれば、有給休暇に切り替えてその日の給与分に充てることも問題ないでしょう。
電車の遅延によって遅刻した場合、遅刻分は「減給」扱いになるかどうかは、会社の規定による
電車の遅延で遅刻した場合、遅刻分が「減給」になるかどうかは会社の規定によります。
基本的には遅刻した時間分の給与が支払われないこともありますが、遅延証明書を提出して会社が「やむを得ない」と判断した場合には、給与の減額を免れることもあるようです。しかし、「ノーワークノーペイの原則」によって、遅刻分をそのまま「減給」として扱われることも考えられます。
また、出社が遅れ、結果として出社を断念した場合には、有給休暇に切り替えることで欠勤時の給与分を補うことは可能です。いずれにせよ、遅刻の場合は、まず会社に確認して指示を仰ぐなどの適切な対応を取ることが大切です。
出典
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本) 事故などの場合の取り扱い
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本) 遅延証明書
デジタル庁 e-Gov法令検索 民法 第八節雇用(報酬の支払時期)第六百二十四条
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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