パート先で「社会保険」に入りたくないので、2ヶ所で「週15時間」ずつ働きます。手取りが減らず得だと思うのですが、なにか「デメリット」はあるでしょうか?

配信日: 2025.01.22

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パート先で「社会保険」に入りたくないので、2ヶ所で「週15時間」ずつ働きます。手取りが減らず得だと思うのですが、なにか「デメリット」はあるでしょうか?
パート勤務でも労働時間が一定以上の場合は、社会保険に加入して社会保険料を支払う義務があります。
 
一方、短時間ずつのダブルワークをすれば、収入はそのままで社会保険料は差し引かれません。しかしダブルワークにはデメリットもあるのです。本記事では、ダブルワークをしたときの社会保険料などについて紹介します。
橋本典子

執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)

特定社会保険労務士・FP1級技能士

「社会保険に入りたくない!」

雇用保険や健康保険、厚生年金保険に加入すると、給与から保険料を差し引かれます。
 
「失業したときや病気になったときに給付金が出る」「老齢年金の増額につながる」などのメリットを承知していても、「そんな未来のことより、今の現金のほうが大事だ」という人は多いでしょう。
 

確かに高い社会保険料

確かに、社会保険料は安くはありません。雇用保険の被保険者負担分は給与の0.6%、健康保険料(東京都)は4.99%、厚生年金保険料は9.15%と、合計15%近くが給与から差し引かれます。
 
給与が20万円の場合、3万円近くの社会保険料を納める必要があるため、社会保険料が高いという意見はもっともでしょう。
 

社会保険に入らないためには

雇用保険や健康保険、厚生年金保険といった社会保険は、労働時間が一定範囲を超えると加入義務が出てきます。そのため、どうしても社会保険に入りたくなかったら、短時間のみ働けばよいことになります。
 
それでは収入面が心許ない場合は、ダブルワークをするという方法があります。社会保険は1つの勤務先の労働時間が基準を超えるかどうかで加入が決まるため、社会保険の適用対象とならない程度の短時間勤務を複数すればよいのです。
 

ダブルワークのデメリット

しかし、ダブルワークにはデメリットもあります。
 

収入によっては国民健康保険に加入

まず、加入保険の問題です。ダブルワークで一定以上の収入を得てしまうと、年収が扶養の範囲を超え、これまで配偶者の扶養に入っていた人も自分で国民健康保険と国民年金に加入することになります。
 
今回のように、1社で15時間、もう1社で15時間働けば、扶養の範囲である130万円を大きく超過してしまうでしょう。
 
東京都の最低賃金1163円で週30時間×4週+数日働くと、1ヶ月の給与は15万円(通勤手当はないものとします)ほどです。
 
この人が仮に1ヶ所で働いて社会保険に加入した場合、差し引かれる厚生年金保険料は1万3725円で、ダブルワークで同程度の収入を得た場合に負担することになる国民年金保険料1万6980円よりも安いという結果になります(いずれも2025年1月時点の制度での試算)。
 

社会保険のほうが給付は手厚い

しかも、国民健康保険と国民年金より、社会保険のほうが給付面でも頼りになります。国民年金保険料を支払っても、将来受給できる老齢基礎年金は、第3号被保険者でいた頃と変わりません。
 
しかし厚生年金に加入すれば、老齢基礎年金に老齢厚生年金がプラスされます。また厚生年金なら、病気やけがで仕事を休んだとき、国民健康保険とは異なり傷病手当金を受け取れます。
 

スケジュール調整が大変

ダブルワークは、スケジュール調整が大変です。勤務先の所定労働日や所定労働時間が固定されていればよいのですが、実際はシフトが変動したり残業があったりします。
 
その結果、片方または両方の勤務がおろそかになることも十分考えられ、また体調面でも相当な自己管理が必要になるでしょう。
 

まとめ

2028年10月より雇用保険の加入要件が現在の「週20時間以上」から「週10時間以上」に変更されることが予定されており、社会保険料を一切負担しない働き方は状況が厳しくなっていくと考えられます。
 
こうした時代の変化に対応し、社会保険料の有無よりも、仕事の内容や得られるスキルを優先して働くのもよいのではないでしょうか。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料
全国健康保険協会 令和6年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
厚生労働省 雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要
 
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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