50代の中間管理職。働き方改革で「休日出勤」や「各種手当」がなくなり収入が減りました。いまから転職すると家計や老後資金に影響はありますか?
配信日: 2025.01.22
そこで、転職や副業を考えているのですが、家計や老後の資金にどのような影響があるかを相談したいとのことです。
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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確認事項と現状分析
現状の家計を把握しましょう。それには、月々の収支と家計の資産のデータが必要になります。そのうえで、住宅ローンや教育資金の計画と老後資金の目標を明確にすることが前提となります。冒頭のご相談ではそれぞれのデータが提示されていないので、平均的な数字とそれを上回る可能性について触れていきましょう。
総務省の家計調査の平均値を引用すると、月額平均支出は2人以上世帯で30万円強です。住宅ローンがあることと、外食費・通信費などによる出費増、子どもの教育費(習い事や塾代)などにより平均支出額を上回るケースは頻繁に起こりえます。
夫の月収が40万円、妻の月収(パート)を8万円、可処分所得は38万円と仮定すると家計収支としての余裕はなさそうです。
一方、妻もフルタイムで働いていると仮定し、総務省の2人以上勤労者世帯の平均収入58万円を採用し、可処分所得を計算上46万円とした場合は、月々の収支には余裕があります。ただしこの場合も、先に述べた上振れ要因によっては赤字を招く可能性はあります。
老後の生活費についてみれば、夫婦ともに65歳以上の無職世帯の家計は、可処分所得約21.3万円に対して、消費支出は約25.1万円で約3.8万円の不足といわれています(生命保険文化センター資料より)。
加齢とともに発生していくことが想定される護費用の負担を考えると、公的年金だけで賄うことは難しく自己資金を準備することは必須です。
これらから、現状での家計の耐久力を確認したうえで、妻の意見の確認が必要です。職場環境の変化を伴いますから、家族の協力は必須です。後から「こんなはずではなかった」ということにならないようにお互いが納得するまで話し合っておきましょう。
転職や副業の影響シミュレーション
転職や副業を行った場合の家計への影響をシミュレーションしてみましょう。
●新しい職場の年収、福利厚生、転職費用を考慮すること
●転職によるリスク(一時的な収入減、試用期間など)とリターン
転職の場合は、試用期間があれば一時的には収入減は避けられない場合が起こりえますが、その期間を乗り越えれば収入増が見込まれることを見据えて、家族の協力を求めることが必要となるでしょう。
●副業で得られる収入の見込み
●副業に必要な時間と家族への影響
●副業に伴う税金や手続きの確認
副業の場合は、収入から見ればプラスアルファということですが、副業に伴って発生する家族への負担増、税金対応など、金銭面では測れないマイナス面が発生する可能性が高くなることを認識しておきましょう。
家計改善プランの検討
転職や副業には、一時的な負担増や収入減を覚悟しなければならないことを家族全員で共有し、現状の家計で改善できる余地がないか探っておくことが望ましいです。転職や副業による収入アップが、想定よりもスムーズにいかなかった場合に慌てずにすみます。
<支出の見直し>
保険の見直しや生活費の最適化を目指しましょう。先に述べた現状の家計把握で目立った支出項目、ストレスをかけずに工夫することで抑えられるサブスクや通信費から検討してみましょう。
<貯蓄の強化>
先取り貯蓄や投資信託の積み立て資産運用で、最初から貯蓄枠を設定しているでしょうか。未実施の場合はこの機会に開始、すでに取り組んでいる場合は積立金額アップができないかを検討しましょう。
まとめ
転職や副業を開始して収入増に直結するには時間がかかること、場合によっては当初想定していた以上に時間がかかる可能性があることを念頭において、家計の見直し、家族との話し合いと協力のお願いという準備をしておきましょう。
キャリアと家計の2つは、両方をうまく協働して運営していくことが大切です。
出典
総務省 家計調査 - 2024年(令和6年)10月分-
公益財団法人生命保険文化センター 老後の生活費はどれくらい?
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者