更新日: 2022.01.03 年収

世帯年収1000万円の手取り額はなぜこんなに少なくなる?

世帯年収1000万円の手取り額はなぜこんなに少なくなる?
「世帯年収は1000万円あるはずなのに、なぜこんなに使えるお金が少ないの?」と、家計管理に頭を悩ませる人も多いでしょう。世帯年収からは税金や社会保険料が差し引かれるため、手取り額は額面よりぐっと少なくなります。
 
ここでは、年収1000万円世帯を例に、おおよその手取り額と、手取り額が少なく感じられる理由を解説します。ぜひ参考にして、家計を見直してみてください。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

手取り額は世帯年収から何が差し引かれた金額?

手取り額とは、年収(総支給額)から税金や社会保険料を差し引いた、実際に手元に入る金額のことです。可処分所得と呼ぶ場合もあります。
 
世帯のなかで収入がある人の手取り額を全て合計したものが、世帯の手取り額です。手取り額=実際に使えるお金なので、世帯の家計のベースとなるのは、世帯年収ではなく世帯の手取り額のほうです。
 
年収から差し引かれる税金、社会保険料は、主に次のものです。


・健康保険料
・厚生年金保険料
・雇用保険料
・所得税
・住民税

所得税・住民税の計算に関しては、個別の事情により適用できる「所得控除」「税額控除」に差があるため、個々で大きく税額が変わります。そのため、同じ年収でも手取り額が同じになるとは限りません。
 

世帯年収1000万円の手取り額はいくらくらいになる?

世帯年収1000万円に対するおおよその手取り額を、片働きで世帯主の年収が1000万円の世帯と、共働きで世帯年収1000万円の世帯に分けてみてみましょう。
 
夫婦のみの片働き世帯で世帯主の年収が1000万円の場合、引かれる税金と社会保険料は、おおよそ図表1の金額です。
 
※給与所得のみ、40歳以上の場合。控除は基礎控除、社会保険料控除、配偶者控除のみ考慮。
 
【図表1】

所得税 約75万円
住民税 約60万円
健康保険料・介護保険料 約58万円
厚生年金保険料 約71万円
雇用保険料 約3万円
合計 約267万円

 
手取り額はおよそ733万円となり、年収に対して7割強に減ってしまいます。配偶者のいない単身世帯であれば、配偶者控除が適用されなくなるぶん所得税と住民税がもう少し高くなり、さらに10万円以上手取りが減る計算です。
 
共働き世帯ではどうでしょうか。夫:年収600万円、妻:年収400万円の場合(その他の条件は上と同じ)について、図表2にまとめました。
 
【図表2】

所得税 約20万円 約8万円
住民税 約31万円 約18万円
健康保険・介護保険料 約35万円 約24万円
厚生年金保険料 約55万円 約37万円
雇用保険料 約2万円 約1万円
合計 約143万円 約88万円

 
共働きの場合、計算のベースとなる年収が夫と妻それぞれのものに変わるため、税金・社会保険料の合計額も個人で年収1000万円の場合とは異なります。このケースでは、手取り額およそ769万円となり、片働き世帯より多い計算です。
 
しかし、税金と社会保険料で2割以上引かれる点は変わりません。ただし、扶養親族がいれば手取り額はもう少し多くなります。
 
     

世帯年収1000万円の手取り額が少なく感じるのはなぜ?

世帯年収1000万円の手取り額は、おおよそ700万円台まで減ります。それでは、年収500万円の場合も手取りが年収の7割台になるかというと、そうではありません。年収500万円の手取りは、年収の8割台が一般的です。
 
年収と手取り額が比例しない大きな理由として、次の2つが挙げられます。


・所得税に超過累進税率を採用している
・年収850万円を超えると給与所得控除の額が一定になる

所得税の超過累進税率とは、所得が多くなり一定金額を超えた部分の税率が段階的に高くなるため、年収に占める所得税の割合が多くなります。片働き、共働きのいずれにしても、世帯年収が上がるほど適用される所得税率が高くなるため、税負担が大きく感じられるのです。
 
また、1人で1000万円を稼ぐ世帯では、給与所得控除も問題となります。給与所得控除とは、給与所得を計算する際に収入から差し引く金額です。 年収が高いほど、給与所得控除額も段階的に高くなります。
 
しかし、給与所得控除額が上がるのは年収850万円までで、それ以上の年収では一定です。
 
つまり、年収850万円を超えると年収に対して控除できる金額の割合が少なくなり、課税所得が増えます。税率が高く課税所得も大きいために、より税負担が大きく感じられる可能性があります。
 

年収から差し引かれるものを把握しよう

世帯年収が1000万円あっても、実際に使えるのは税金や社会保険料が引かれたあとの手取り額です。手取りになると、額面の印象よりも家計に余裕がないように感じられることはよくあります。
 
収入と支出のバランスを適切に保つには、手取りを正確に把握することが大切です。年収に対して手取り額がなぜ少ないのかを理解して、バランスの良い家計を目指しましょう。
 
出典
知るぽると 可処分所得(disposable income)とは
全国健康保険協会「令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
厚生労働省「令和3年度の雇用保険料率について」
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)
東京都主税局 個人住民税 税金の種類
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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